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世にも不思議なショートショート  作者: 西季幽司
お天気使いの詩
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雨使いの詩

 雨が降っていた。

 窓から外を見ていると、電線に変な恰好をしたお兄ちゃんが留まっていた。“留まっていた”は変だと思うかもしれないが、鳥のように電線に立っていたのだから仕方ない。

 上下ひとつになったツナギのような服を着ている。手袋に靴まで一体になっている。しかも全身、水色だ。靴先が異様に長くて、尖っていた。首の周りは、ひらひらと花びらのような襟がついていた。

 お兄さんと目が合った。

 ふわふわと空を飛んで来ると、窓辺に浮かんで、こんこんと窓を叩いた。窓を開けると、お兄さんが「君、僕が見えるのかい?」と聞いた。

「うん」と頷くと、「へえ~珍しいね。何か僕に願いごとでもあるのかな?」

「願いごと?」

「うん。僕は雨使い。自由に雨を降らせることができるんだ」

「本当⁉ 明日、学校で運動会があるんだ」

 明日は日曜日だけど、運動会が開催されることになっていた。

「なるほど。雨が降っては困る訳だね」

「ううん。僕、かけっこが苦手なんだ。だから、明日、雨を降らせて運動会を中止にしてもらいたいんだ」

「運動会を中止に⁉ 明日の運動会を楽しみにしている子だって、きっと大勢いるよ」

「そうだね~でも、僕、かけっこに出たくない」

「分かったよ。じゃあ、明日は朝からじゃんじゃん雨を降らせて、運動会を中止にしてあげるよ」

「ありがとう」

「じゃあね~」と言うと、雨使いのお兄さんはふわふわと飛んで行った。


 翌日、朝から大雨だった。

 雨使いのお兄さんの言ったことは本当だった。朝早く、ママのところに運動会中止の連絡が来た。やった! これで、かけっこに出なく済む。ママの前では、運動会が中止になって残念そうな顔をしていたが、心の中で飛び跳ねて喜んでいた。

 雨だったけど気分は爽快、快適な日曜日を過ごすことが出来た。

 翌日は朝から晴れ渡った。

 学校に行くと、先生から「昨日は生憎の雨で残念でしたね~でも、大丈夫。運動会は今週の日曜日に延期になりましたから」と言われた。

 えっ! 中止じゃないのとがっかりした。せっかく、雨使いのお兄さんに雨を降らせてもらったのに。

 しかも、先生が言った。「皆さん、運動会が中止になって体力が有り余っているでしょう。今日はグランドでかけっこをしましょう」

 最悪だ。運動会がある上に、かけっこが増えてしまった。

 こんなことなら、昨日、運動会をやっておけば良かった。


                                            了

 拙作をご一読いただき、ありがとうございました。


 大学まで運動系のクラブに所属していたが、子供の頃は運動が苦手だった。そんなことを思い出しながら書いた作品。

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