表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世にも不思議なショートショート  作者: 西季幽司
不思議な話・その二
54/136

貸しボート18号

 公園の池に貸しボート屋があった。

 春から夏にかけて、貸しボートを求めて客がやって来る。週末になると、順番待ちが出るほどだった。若いカップルから親子連れまで、貸しボートに乗って池の遊覧を楽しむのだ。

 貸しボート屋には18号ボートがなかった。

 昔、あるカップルが18号ボートに乗って池に出たが、池の中央で突如、浸水し、ボートが沈み、女性客が水死するという事故があった。

 以来、18号ボートが欠番となっていた。

 外国人留学生のアンガス君が、この貸しボート屋でアルバイトをすることになった。

「ひとつ、注意事項があるんだ。昔、池で事故があってね。うちには18号のボートがない。でもね、ふと気がつくと、18号ボートが船着き場にあったりするんだ。18号ボートを見つけた時は、若いカップルに貸してはダメだよ。池の真ん中で沈んで、男の方が亡くなるっていう伝説があるんだ。家族や親子なら大丈夫だけど、カップルはダメだ。池で死んだ女の子の呪いだね。生き残った彼氏を探しているんだろう。まあ、18号ボートがあった時は、誰にも貸さないでおいてくれ」

 貸しボート屋のオーナーにそう言われたのだが、アンガス君にはよく理解できなかった。でも、アルバイト代が欲しかったから、「はい、はい」と答えておいた。

 その日は週末で忙しかった。

 お代を徴収し、ボートに乗せる。時間通りに戻ってくれば良いが、時間をオーバーした場合はマイクで呼びかける。どのお客さんに何番ボートを貸したかなんて、分からなくなった。

 若いカップルがボートを借りて、船着き場から出て行くのを見送った時、アンガス君は「あれっ⁉」と思った。18号ボートだったからだ。18号ボートについて、オーナーから何か言われたような気がしたが、思い出せなかった。


 18号ボートは池の中央で沈没した。

 女の子は近くにいたボートに救助されたが、男の方は池に沈んでしまった。

「彼、まるでボートに足を引っ張られるようにして、池に沈んで行きました」と女の子は言った。

 不思議なことに、池から男性の水死体は見つかったが、二人が乗ったはずのボートが見つからなかった。

 貸しボート18号の噂が、あっという間に広まった。

 貸しボート屋は営業停止となってしまったが、池の周りには、船着き場に18号ボートが現れないかと観察する者たちで溢れた。

 だが、事故以来、18号ボートは現れなかった。

 貸しボート屋が営業をしていないからだと思われたが、その後、営業が再開されてからも18号ボートは現れなかった。

 暫くして事故から生還した女性のSNSへの投稿が拡散した。

 それには、こう書かれてあった。


――あれから、18号ボートが現れないって聞いた。死んだ彼。やっとデートにこぎつけたナンバーワン・ホストだったから、よろしくやっているに決まっている。女の子の幽霊、きっと彼に夢中なのよ。


 了

 拙作をご一読いただき、ありがとうございました。


 横溝正史先生の「貸しボート13号」からヒントを得て書いた作品。と言っても内容は関係ない。題名から連想したもの。貸しボート13号が無かったら~という発想から生まれた作品。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ