希望をかなえてくれるもの
トリックアート・ミュージアムにやって来た。
ずっと来たかった。前に、ここに遊びに来た学校の友だちから写真を見せられて、行って見たいって、ずっと思っていた。
パパに頼んだら、「そうだな~俺も興味があるから、じゃあ、今度の連休はトリックアート・ミュージアムに行ってみるか」と連れて来てくれた。
思った通りだった。
入り口から面白かった。随分、遠くに入り口があるなあ~と思ったら、目の前だった。錯覚というらしい。
ミュージアムの中では、虎に襲われたり、崖の上の一本橋を渡ったり、自分が大きくなったり、小さくなったりした。その様子を写真に撮ることができた。パパにいっぱい写真を撮ってもらった。後で友だちに見せて自慢できそうだ。
楽しかった。僕よりもパパの方がはしゃいでいたし、行く前は興味が無さそうだったママも笑顔がいっぱいだった。
出口が見えた。
もう終わりか~残念だなあ~もっと遊びたかったのに~と思っていたら、最後にひとつトリックアートが残っていた。
行列ができていた。
何があるのだろう? 気になって、行列の先頭まで行って確かめた。
行列の先には人が一人、入ることができる大きさのボックスがあって、入り口には、
――中に、あなたの希望をかなえてくれるものがあります。
と書かれてあった。結構、長い行列が出来ていた。みんな、色々、お願い事をしているのだろう。
なんだか面白そうだ。僕だって、かなえてもらいたいお願いがある。
僕は行列に並んだ。パパとママも一緒に並んだ。
「あの箱の中に、何があるんだろうね~」
ママがわくわくしていた。
やっと僕の番が来た。
「先に行くね」
「うん。しっかりお願いしておいで」
ボックスの中に入る。
中は真っ暗だ。
――扉を閉めてください。
とアナウンスがある。
(真っ暗なのは嫌だな~)と扉を閉めると、優しい灯りがついた。そして、目の前のカーテンがゆっくりと開いた。
――目の前にあったのは鏡だった。
(鏡? 何? ただの鏡じゃん!)
アナウンスが教えてくれる。
――あなたの望みをかなえてくれるのは、あなた自身ですよ。
了
拙作をご一読いただき、ありがとうございました。
少々、説教臭いがオチが気に入っている作品。これ、実際にトリックアート美術館で、できそうな気がする。




