アロイカ・インベージョン・パートVI
地球軍は宇宙からSOSのメッセージを受信した。
――我々はウーラ。アロイカより侵略を受けている。助けて欲しい。
メッセージは地球の言語で、はっきりそう言っていた。
アロイカがウーラという惑星を侵略していると言うのだ。このところ、アロイカとの交信が途絶えていたが、また懲りずに侵略を始めたと言うのか。
半信半疑ではあったが、地球軍は宇宙戦艦ノストラダムスをウーラの救援に向かわせた。
ウーラに到着した。
地球より、やや小ぶりな惑星だ。ウーラたちの出迎えを受けた地球軍の女性隊員はウーラを見て歓声を上げた。
――可愛い~!
ウーラは二足歩行だが、まるで子犬にしか見えなかった。大きさも大型犬の子犬程度の大きさしかない。ふさふさの毛で全身が覆われ、よちよちと大勢の子犬たちが地球軍の兵士を出迎えに現れたようだった。
「このままではウーラはアロイカに占領されてしまう。助けて欲しい」
ウーラ皇帝が頭を下げた。
「安心してください。我々が直ぐにでもアロイカを全滅させてみせます」と地球軍のペルリ総司令が胸を張った。
ウーラ皇帝は、それを聞いて毛が逆立った。
「ちょっと待ってください。滅ぼすなんて・・・我々はアロイカのレジスタンスより地球の存在を聞いたのです」
「アロイカのレジスタンス?」
「そうです。アロイカの中にもウーラの侵略に反対するものがいて、我々に力を貸してくれているのです。先ずは彼らの話を聞いてください」
直ぐにでも戦闘を開始するつもりだったペルリ総司令は拍子抜けした様子だったが、「分かりました」と頷いた。
アロイカ・レジスタンスのリーダーと会った。
アロイカは赤茶けた土色をしていて、ひょろ長い二本の脚に枝のように細い二本の腕を持っている。とにかく細い。ナナフシという昆虫が二本足で立っている感じだ。全長、七、八センチで、掌にすっぽりと収まるサイズだ。
「ウーラの侵略はアロイカの本意ではありませんでした」とリーダーは言う。
地球との交流を経て豊になったアロイカに油断が生じたのかもしれない。かつて地球侵略を企んだアロイカ大統領の息子がアロイカ総督に就任した。
強大となったアロイカは地球との交信を断ち、ウーラの侵略を開始した。ウーラの民は、およそ争うことを知らない大人しい民族だ。地球のテクノロジーを吸収し、武器を学んだアロイカの敵ではなかった。
アロイカにも侵略を良しとしない、真っ当なものがいる。そういった者たちは、レジスタンスを結成し、ウーラの反抗に手を貸していた。
そして、地球に援軍を求めることを提案した。
アロイカのレジスタンスが協力していたので、地球の言葉でメッセージを送ることができたのだ。
「なるほど。では、我々はアロイカ総督を抹殺し、侵略を終わらせば良いのだな」
ペルリ総司令が言うと、「いえ。それだけではダメです」とリーダーが首を振る。
「ダメ? 他にも何かあるのか?」
「エルツェです」とリーダーが言うと、同席していたウーラ皇帝が、その名を聞いただけで「ひいっ~!」と悲鳴を上げた。
「エルツェ?」
「この宇宙で最強にして最悪、極悪非道な民族、それがエルツェなのです」とリーダーが言う。
エルツェの民は地球人の二倍の大きさがあり、怪力の持ち主だ。全身、岩のような皮膚で覆われ、地球軍の主力武器である銃弾は、その固い皮膚に弾かれてしまうだろうとリーダーは言った。性格は残忍で非情、気に入らないことがあると、仲間同士で殺し合いを始めてしまうというのだ。
「そのエルツェと今回のアロイカの侵略にどういう関係があるのだ?」
ペルリ総司令の疑問ももっともだ。
「総督はアロイカを支配する為に、エルツェの力を借りたのです。お陰でアロイカはエルツェの植民地のようになってしまいました。そして、今回のウーラへの侵略です。エルツェはアロイカの科学技術力を得て、無敵の存在となりました。そして、アロイカの力を使って、この宇宙を支配しようとしている」
「すると、アロイカ総督だけでなく、そのエルツェというやつを滅ぼさなければならないのだな」
「滅ぼすなんて、そんなこと・・・」
出来る訳がないとリーダーは言いたいのだろう。
「そのエルツェとやらに会ってみたい。戦うに当たっては、先ずは相手を知ることだ」
「でしたら、丁度良い人物がいます」
リーダーが言うにはアロイカの侵略軍にエツルェの督戦将校がいて、陰ながらアロイカの軍隊の指揮を執っているらしい。
「その督戦将校を捕まえる必要があるな。それも生きたまま・・・そうだ。その将校、好きな食べ物はないのか?」
ペルリ総司令の質問に、ウーラ皇帝が答えた。「好きな食べ物? 確か・・・地球の食べ物で・・・バナナ・・・とかいうものが大好物だと聞きました」
「バナナか。それは好都合だ」
「どうするのです?」とリーダーが尋ねる。
「我々がバナナを用意するので、それを将校に届けてくれ。そして、やつがバナナを食べたら、教えてもらいたい」
「それで?」
「バナナに強力な睡眠薬を仕込んでおく。やつは深い眠りにつくはずだ。それを我々が捕獲する」とペルリ総司令が答えると、「ひええっ~!」とウーラ皇帝が、また悲鳴を上げた。
「そ、そんな・・・ひどいことを・・・食べ物に薬を仕込むなんて・・・そんなこと・・・考えたこともなかった」
「そうか? とにかく、頼む」
こうして、ペルリ総司令とアロイカ・レジスタンスのリーダーとの会合は終わった。




