アロイカ・インベージョン・パートV
アロイカ首相のもと、ついにアロイカは地球を和平を結ぶが・・・
アロイカの総数は往時の十分の一以下になってしまった。
グランドン計画の失敗により、アロイカ元帥は更迭され、新たにアロイカ首相が誕生した。今度のアロイカ首相は平和主義者で、「地球への恨みを忘れ、抗争を終わらせよう!」とアロイカ市民に呼び掛けた。
総数が減ってしまったことにより、資源の枯渇までの時計が大幅に遅れることになった。巨大隕石の落下により、舞い上がった砂塵が大気を覆っていたが、アロイカが開発した大気浄化装置が効力を発揮し、ようよう落ち着きを取り戻した。気温が上昇し、アロイカ市民を養うのに十分な食料を得ることができるようになった。
危険を冒して地球を侵略する必要がなくなったのだ。
アロイカ首相は地球のリーダーたちに講和を呼びかけた。
もともとアロイカの侵略により始まった戦争だ。地球のリーダーたちはアロイカの講和の呼びかけに応じた。
こうして、アロイカと地球との間で交流が始まった。
アロイカは地球の二百分の一に過ぎない。総数が減ってしまっているので、アロイカが必要としている資源の量は地球にとって微々たるものだった。枯渇しかけていた資源は地球から毎年、補填してもらえることになった。それに食料だが、アロイカの主食は草であり、キャベツや白菜は勿論だが、エノコログサやセイタカアワダチソウといった雑草を好んで食した。
こうした雑草を刈り取って、送ることになった。毎週、雑草の回収日が設けられ、雑草回収袋が各家庭に配られた。直ぐに大量の雑草が集まるようになった。
アロイカは動物性たんぱく質も必要としていたが、これはアメリカザリガニが好物だと分かり、大量のすり身にして提供することになった。アメリカザリガニは繁殖力が強く、外来生物として生態系を破壊してしまう。こちらも専門業者に駆除してもらうと、一年分どころか数年分を簡単に確保することができた。全てすり身にして保管した。数年毎に駆除を続ければ良い。
アロイカからは宇宙を旅する技術と宇宙を旅することで得た豊富な経験が地球に伝授された。地球人は宇宙開発時代に突入することになった。
アロイカは豊になった。
個体数も増えて行ったが、毎年、地球から溢れるばかりの物資が届く。アロイカは未曾有の繁栄を謳歌することになった。
そんなある日、アロイカの上空に無数の艦隊が出現した。
「アロイカよ。我がクマベリの支配に従え。従順なるものは生かし、反抗するものは殺す。この豊かな星は、お前たちにはもったいない。アロイカは我がクマベリのものとなるのだ」
クマベリ艦隊司令はそうアロイカ市民に呼び掛けた。
アロイカ議会が緊急招集された。不安に駆られた議員から質問が飛ぶ。
「首相、いかがいたしますか⁉」
「戦うのですか?」
「やつらに服従するのでしょうか?」
アロイカ首相は決断を迫られた。
会議の間、アロイカ首相は顔を伏せ、沈黙していたが、決然と顔を上げると言った。「アロイカは誰にも屈しない。戦うのだ。我々には地球との交戦で得た豊富な経験と武器がある。クマベリと戦っても負けないはずだ。それに――」
アロイカ首相は議員の顔を見回すと、「いざとなれば地球人に助けを求めれば良い。宇宙一好戦的な種族だ。彼等にかなうものなど、この宇宙にいるはずない」と声を張り上げて言った。
議会は拍手で包まれた。