第肆の噂「いばら鬼」⑤
注意
・本作品はフィクションです。実在の団体、人物とは何ら関係ありません。
・この作品には一部性的な描写、暴力シーンやグロテスクな表現が含まれております。苦手な方はまた、作中に登場する心霊スポットは、すべて架空の場所です。廃墟に無断で立ち入る行為や犯罪行為を本作品は一切推奨いたしません。
事情聴取から解放された後、青鮫は獅子島と鷲尾に小野塚市警察署の地下一階にあるゼロ係の部屋に連れてこられた。
「一体何を調べているのか、説明してもらえないかしらン、北崎警視殿」
獅子島はいつにも増して眉間に深い皺を刻んで、ゲーミングチェアに座る桜花を見下ろし、睨みつけながら尋ねた。獅子島の鬼のような形相と全身から放たれる怒気や焦り、困惑に満ちたオーラを向けられた桜花が鬱陶しそうにため息をつく。
「まあ仕方ないな。英美里に続いて青鮫まで遺体の発見者になってしまった以上、貴様たちにも私たちが何をやっているのか話さなくてはならんか」
桜花がホワイトボードをひっくり返すと、そこには『いばら鬼連続殺人事件』と大きく書かれており、数枚の顔写真が貼られ、交友関係や事件の詳細が書かれてあった。
「いばら鬼連続殺人事件、ですって?」
「ああ、国家公安委員会から正式な特命が下った。いばら鬼と言うのは、4年前からネットで騒がれている、怪談話の一つだ。国家公安委員会は、最近噂の出所になっている青春町のメゾン花畑で騒がれているその噂話に見立てて、奇妙な死に方を遂げる事件が連続して起きているから調査しろと言ってきた。そして、その噂話には4年前からスコーピオンや玄武会の構成員が出入りするようになった話や、玄武会が隠したとされている末端価格5億円は下らない麻薬がどこかに隠されていると言う話が絡んでいるらしい」
「ちょ、ちょっと待ちなさい。何、いきなり訳の分からないことを言い出すのよ!?」
突拍子のない桜花の言葉に獅子島が思わず声を上げるが、桜花は無視して話を続ける。
「まーずーだ、全ての始まりは4年前に遡る。4年前にあのマンションに住んでいた、当時小学5年生の女子児童が下校中に突然行方不明になった事件があっただろう?現在もまだ発見はおろか手がかりさえ見つからずお宮入りした事件だ」
「・・・え、ええ、その事件なら覚えているわ」
「それとほぼ同じ頃にな、被害者の檜山と梅田がいたスコーピオンを子飼いにしていた玄武会の三次団体の柊組の構成員があのマンションに出入りしているところが目撃されるようになった。この柊組と言うのは、玄武会の隠し財産である末端価格5億円は下らない大麻を着服して、スコーピオンを利用して麻薬を売り捌いて利益を独占しているらしい。柊が隠し財産である大麻の管理を若頭から極秘裏で命じられたそうだが、奴は組を裏切って麻薬を売り捌き、大金を稼いでいたそうだ」
「巽署長や生活安全課が、元スコーピオンの半グレが都内のクラブで薬物を売り捌いているって言う情報を掴んで、速攻で逮捕したんだって。それで半グレたちから聞き出した情報だから間違いないと思うよ」
「ですが、半グレたちも檜山たちが運んでくる麻薬の隠し場所がどこなのかまでは知らされていなかったそうです。檜山たちは大麻が隠されている場所から、柊を介して大麻を受け取り、それをフードデリバリーのバイクの中に忍ばせて届けていたそうです」
獅子島はそこで、檜山の遺体が発見された時に彼がフードデリバリー会社の制服を着ていたことや、フードデリバリーのバイクが駐車場に置かれていたことを思い出した。
「オッさん、南雲警部補たちの話は本当らしい。この間しょっぴいたスコーピオンのメンバーに確認したら全部吐いた。柊って言うヤツは組を裏切って麻薬を全部どこかに持ち出して隠しちまいやがった。会長が亡くなって、会が壊滅状態になった騒ぎにまぎれて逃亡したらしくてな。おそらくもう都内にはいねえだろうな」
「ですが柊は金融屋をやっていた時に違法ギリギリの利子で金を貸し付けた顧客に麻薬を隠しておくように命じて、今はその顧客に管理させてそこから麻薬を少しずつ売り捌いて金を儲けていたそうです。玄武会の幹部たちも、まさか格下の三次団体に裏切られるなんて夢にも思っていなかったみたいですが、まあ、幹部は全員逮捕しちまったし、柊だけが隠し財産を丸ごと盗んで逃亡してしまった訳です」
「まさか青鮫、あのマンションに貴方がいたのは!?」
「ああ、警視庁の四課に南雲警部補を慕っている人がいてな、南雲警部補が頼み込んで、押収していた柊の金融屋の顧客リストを確認したら、リストにいたんだよ。あのマンションの管理人、そして現在あのマンションに住んでいる住人の名前がな。柊から何かを預かっていないか聞き出そうとしたら、松島の遺体を発見したと言うわけ」
「人が近寄りがたい、入居者がほとんど来ないマンションなんて、何かを隠すには上等な隠し場所だからね。駅近で立地条件はいいはずなのに不動産屋にも空き部屋を売りに出さないし、マンションの関係者や住人が柊の支配下に置かれているとなると、かなり怪しいでしょう?」
「ところがだ、最近空き部屋の一つ、403号室が売りに出された。これはチャンスだと思い、国家公安委員会が巽を通して部屋を貸す手続きを済ませてきた。ヤツはあのマンションの中に麻薬が隠されていると踏んでいる。まあ、私たちはあのマンションに現れるいばら鬼の真偽を確かめるためにも、あそこにこれから入居者として潜り込もうとしていたと言うわけさ」
「しかし、何か根拠はあるのかしら?麻薬があのマンションに隠されていると言う確かな根拠は?」
「殺された梅田に檜山だがな、最近やけに金回りが良くなったそうだ。仲間が聞いたら一攫千金の宝の山を見つけたと自慢をしていたそうだ。そして奴らはフードデリバリーの会社員としてよくあのマンションを訪れていたそうだ。あのマンションの誰かが麻薬を少しずつ売り捌いて、それを梅田と檜山がフードデリバリーのバイクに隠して麻薬を買い付けた客に届けて仲介料をせしめる。そんなカラクリがあったとしたらどうだ?」
桜花の説明を受けて獅子島たちは黙り込んだ。
「分かったわ。アタシたちもそっちの方も詳しく調べてみるわ」
「そう言えば獅子島、松島の遺体を発見したもう一人の発見者の事情聴取はどうなっているのだ?」
「ああ、彼女のこと?彼女は、あの場所に花を供えに来ただけだとずっと言っているわ。松島のことも知らないみたいだし、松島の死亡推定時刻にはパート先の仕事場で仕事をしていたみたいだし、聴取が終わったらすぐ帰ってもらうことになると思うわ」
「ねえ青鮫、遺体を他にも発見した人がいたの?」
「ああ、と言うかその女性が第一発見者だがな。近所に住んでいる主婦で、現場になった通りには毎月必ず花を供えに来ているらしい」
「花を供えに?」
「あのマンションに以前住んでいた知り合いに供えるための花だそうです。赤色、白色、黄色のバラや季節の花を何種類か包んだ花束を供えているとか」
青鮫の説明を聞いて、全員の目が見開かれる。赤色
、白色、黄色のバラとくれば、いばら鬼の噂に出てくるものと同じではないか。
「獅子島、その女性はまだ聴取をしているのか?」
「え、ええ。そのはずだけど」
「明良、霧江、今から彼女から話を聞き出してこい。もしかしたら、何かいばら鬼について手がかりが見つかるかもしれん」
「わかりました」
明良と霧江がすぐさまゼロ係の部屋から出て行った。
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