第肆の噂「いばら鬼」④
注意
・本作品はフィクションです。実在の団体、人物とは何ら関係ありません。
・この作品には一部性的な描写、暴力シーンやグロテスクな表現が含まれております。苦手な方はまた、作中に登場する心霊スポットは、すべて架空の場所です。廃墟に無断で立ち入る行為や犯罪行為を本作品は一切推奨いたしません。
いばら鬼に関する噂は、ネット上で騒がれていた。
「なるほどな。青龍町にあるおばけマンションにある花壇を壊したり、乱暴に扱うとこのマンションに棲んでいるいばら鬼と言う怪異に殺されると。しかし、どうして赤い薔薇や白い薔薇、黄色い薔薇が絡んでくるのだ?」
「噂によると、いばら鬼は、あのマンションで変質者に殺されてしまった小学生の女の子の霊であるらしく、自宅のあるあのマンションの花壇で育てるために学校から分けてもらった薔薇の花を持って帰っていた時に事件に巻き込まれて、花をなくしたそうです。つまり、花壇を荒らした人間を自分を殺した犯人だと思い込んでいて、襲い掛かるようになったと言うのがネットで話題になっているいばら鬼の噂です」
そして、いばら鬼は花壇を荒らした人間に、3本の薔薇を探すように言って、マンションの中に閉じ込めるのだと言う。赤色、白色、黄色の薔薇を全て見つけ出して花壇に差し出して謝らないと、見つけられなかった薔薇の色に擬えて殺されるらしい。
「赤い薔薇を見つけられなかったら、身体中から薔薇の蔦が飛び出して、身体を切り刻まれて血まみれになって死ぬ。白い薔薇を見つけられなかったら、首を絞められて顔が真っ白になって死ぬ。黄色い薔薇を見つけられなかったら、身体中の骨を砕かれて気が狂ったように笑いながら死んでいくと言うものでした」
「なるほどな。梅田と檜山、二人の死に方と同じだな。奴らはおばけマンションになんらかの理由で立ち寄り、花壇を荒らした。だからいばら鬼に呪われて殺されたと言うわけか。だが、明良。檜山は英美里のマンションで死んでいたそうだが、檜山は一時はおばけマンションから逃げ出すことが成功したと言うことになるが、逃げ出す方法などあるのか?」
「はい。ネットではもし薔薇が見つけられなかったら、造花を作って花壇に差し出せば逃げられると書かれてありました。調べてみないと分かりませんが、もしかしたらこの二人も同じ方法をやったのかもしれません」
造花を作っていばら鬼を騙して逃げると言うのは、子供騙しのような話だった。しかし、梅田たちがその噂を知っていて、逃げ出そうとして造花を作り、いばら鬼から逃げ延びたが、騙されたことに気づいたいばら鬼が梅田たちを追い詰めて手にかけた、そう考えればおばけマンションから離れた場所で死んでいた事実にも説明がつく。かなり現実味がない話だが。
「だが、半グレたちがおばけマンションに一体何の用で行ったのだろうな」
「肝試しとも思えませんね」
「もしかしてさ、おばけマンションにさっき署長が言ってた玄武会のお宝が眠っていたりして。それを探していた時にいばら鬼の花壇を荒らして、いばら鬼に呪い殺されたとか言う可能性もあるんじゃない?」
霧江の話に、桜花たちももしかしたらと考え込む。
「なるほど、今度の事件と玄武会の隠し財産、もしかしたら繋がっているのかもしれんな。いばら鬼と、おばけマンションに現れる場違いな半グレグループについて調べてみたほうがいいかもな。それと、いばら鬼の原点となった事件についても調べてみるか」
桜花たちが話していると、英美里がいつものように気怠げに手を上げた。
「それってこれじゃないの。いばら鬼っておばけマンションに住んでいた小学生の女の子の霊って言う話なんでしょ。2年前に該当しそうな未解決事件があったよ」
英美里がパソコンのモニターを全員に見せると、そこには2年前の春、当時小学5年生にあがったばかりの女子児童が下校中に行方不明になったと言う事件の記事が載っていた。その女子児童は青春小学校5年生の神木彩花という少女だった。
「神木彩花さんが行方不明になったのは4年前の4月23日、学校から彩花さんが出席していないと連絡が入り、彩花さんが家にも帰っていないことが発覚したらしいわ。母親は仕事で職場に一週間泊まり込んでいたから、彩花さんを最後に見たのは一週間前、職場に行く前に彼女が学校に向かって出ていったのを見送った時だったから、16日に彩花さんがいつものように下校して以降、誰も彼女の姿は見ていないそうよ」
「一週間も職場に泊まり込むなんてかなりブラックな職場じゃない?一体どこで働いていたのよ?」
「黄龍館大学の研究室だって。彼女、生物学部の教授をしていて、かなり有名な人だったみたい」
「黄龍館大学の神木だと?ああ、聞いたことがあるな。昔、植物学の博士号を取得した美人の天才科学者とか専門誌で話題にあがっていたな」
桜花が思い出したように声を上げる。
「はい、神木さくら教授は遺伝子組み換えによる青色の薔薇を生み出す研究を行っていたんです。不可能とまで言われていた青色の薔薇を作り出そうとしていました」
「すごい、青色の薔薇なんて見たことがないよ」
「それで、実験は成功したのですか?」
「いえ、そう言った話は聞いたことがないですね」
「その神木教授が、娘を一週間もほったらかしにして実験三昧をやった結果、娘が行方不明になったと言う訳か」
「そのようですね。学校から職場や自宅に何度も連絡をしたそうなのですが、調書によると彼女は実験にかかりっきりで警察からの事情聴取にも応じようとしなかったそうです」
「ちょっと待ってよ。娘がいなくなったって言うのに、その母親は実験の方が大事だったって言うの!?おかしくない!?」
「確かにそれは変だな。親なら子供がいなくなって一週間も行方不明になったりしたら、さすがに慌てるか心配するか、捜索願でも出すだろうが」
「世の中そんな親ばかりじゃないんじゃないんですか?仕事、仕事にかまけて家庭を顧みないで、例え家族が危篤になったとしても、帰ってこない親だっているんですから。親にあまり幻想とか求めない方がいいですよ」
英美里が冷たく突き放すように言うと、飴玉を口に頬張り、再びパソコンのモニターを見つめながらキーボードの上を世話しなく指を動かす。
「家族だってしょせんは他人なんだからさ。この世に絶対に壊れない無条件の絆や信頼なんてある訳ない」
英美里がぽつりと、寂しげにつぶやいた。
その時の彼女の顔はいつになくどこか悲しげと言うか、感情的になっているようにも見えた。明良たちは息を飲む。
その時だった。
明良のスマホから着信音が鳴り出した。スマホを開くとそれは青鮫海雪からだった。
「はい、明良です。海雪さん、今日は非番でしたよね?何かあったんですか?」
『何があったじゃねえよ!!ヤバいぞ!!』
電話の向こうの海雪の声はかなり動揺していた。明良は嫌な予感を感じながら、通話を続ける。
「落ち着いてください、何があったんですか?」
『結論から言うと、おばけマンションの近くで若い男性の遺体が見つかったんだ!!しかもその遺体は黄色い薔薇がたくさんついたいばらの蔦が全身に巻き付いて、捻れた状態になっていたらしい。明良、これってお前が言っていた例のいばら鬼とか言う怪異の噂話そっくりじゃねえか!?』
「・・・分かりました。とにかく僕たちもこれから現場に向かいます!」
スマホの通話を切り、明良が深くため息をついて重く口を開いた。
「・・・三人目の被害者が出てしまいました」
最後まで読んで頂き、本当にありがとうございます!
ご感想、ご意見、心からお待ちしております。
もし気に入っていただけましたら、ブックマーク登録、よろしくおねがいいたします!




