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小野塚市警察署心霊捜査班  作者: 勇人
第肆の噂「いばら鬼」
59/63

第肆の噂「いばら鬼」①

注意

・本作品はフィクションです。実在の団体、人物とは何ら関係ありません。

・この作品には一部性的な描写、暴力シーンやグロテスクな表現が含まれております。苦手な方はまた、作中に登場する心霊スポットは、すべて架空の場所です。廃墟に無断で立ち入る行為や犯罪行為を本作品は一切推奨いたしません。

 青龍町の高台の上に建てられた鉄筋コンクリート製5階建てのマンション『メゾン花畑』。塗装が所々剥げ落ちた壁、錆び付いた鉄骨が剥き出しになった手すり、角がかけた階段など、ろくに手入れもされていない、一見すると廃墟とも思われても仕方がないそのマンションには人が住み着いている気配がまるで感じられない異様なものだった。


 夜になっても明かりがついている部屋が全くない。近隣の住民たちもマンションを出入りする人物を見たことなどないらしく、実はもう誰も住んでいない廃墟なのではないかと囁かれており、不気味な雰囲気を漂わせるマンションがどうして取り壊しがされず、放置されているのか不審に思っていた。


 しかし、ネットではこのマンションには奇怪な噂が流れていた。人が住んでいる気配がないのに、夜にこのマンションに入ると誰かが自分のことを見ていると言う奇妙な錯覚を感じたり、マンションの中を歩いている人影を見つけて、近づこうとすると突然消えてしまったり、誰かの苦しそうなうめき声が聞こえてくるというものだった。


 どこにでもあるような他愛のない噂話。そんな噂話が流れていることと不気味な雰囲気から、そのマンションは近隣の住民たちからこう呼ばれて、恐れられるようになっていた。


 死霊が住み着いたマンション。

『お化けマンション』と。


 ★★★★★★★★★★★★★★★


 深夜。

 小野塚市、朱夏町の外れにあるマンションは騒然としていた。何台ものパトカーが駐車場に集まり、回転灯の灯りが辺りを赤く染め上げ、何度もフラッシュが焚かれた。捜査員たちが現場となったマンションの屋上に続く階段を行き交い、その様子をマンションの住民たちが不安げな様子で、遠巻きに見ていた。


「遺体はこのマンションの屋上にある給水塔から吊るされていたそうです」


「しかし、どうしてあんなところからぶら下がっていたのかしらね」


 小野塚市警察署刑事部の獅子島班の班長、獅子島陸巡査部長は部下の鷲尾天満巡査からの報告を受けて、現場となった給水塔を見上げた。ここから被害者は首を吊った状態で発見されたのだ。


「第一発見者は?」


「このマンションに住んでいる住民です。会社から帰ってきた時、給水塔から何かがぶら下がっているのが見えて、気になって近づいてみたら、遺体がぶら下がっていたそうです」


「そう、とりあえず遺体を発見した時の状況を聞かないとね」


 鷲尾と共に第一発見者のもとに向かおうとすると、所轄の警察官に案内されたのはなぜか遺体が安置されている駐車場の一画、ブルーシートで覆われている場所だった。中に入ると、捜査員たちに混じって見知った顔が遺体の検死を慎重に行なっていた。


「死因は頸部圧迫による窒息死、死後硬直が出始めているから、死後1時間から2時間、つまり死亡推定時刻は21時から23時の間と思われます」


「分かりました」


「ちょ、どうしてゼロ係の人がここにいるんですか!?」


「英美里!?」


 その人物とは、ゼロ係こと生活安全課特別捜査班0係のメンバーであり、元東京都科学捜査研究所の鑑識捜査員と言う経歴を持つ中条英美里であった。


「遺体を発見した第一発見者って、0係なんスか!?」


「そう言うことになるわね。とりあえず事情聴取をやるんでしょう?さっさと済ませて欲しいんだけど」  


 驚く鷲尾に対して、いつもの無表情で気だるげに英美里が答えた。


「え、英美里」


「英美里なんて呼ばないで。馴れ馴れしいんだけど。今更父親面する資格なんてアンタにはないでしょう?」


 英美里が背を向けたまま、獅子島に冷たく言い放ち、そのまま立ち去った。残された獅子島は英美里の後ろ姿を見たまま、いつもの強面の眉間の皺がさらに深く刻まれて、悲しげな表情が浮かんでいた。


「しかし、どうして被害者の首にこんなものが巻かれていたんでしょうか?」


 捜査員の疑問を聞いて、鷲尾が反応する。


「どうかしたんスか?」


「・・・いえ、それが、被害者の首にはね、バラのツタが巻き付けられていたんですよ。真っ白なバラがたくさん咲いている不気味なバラなんですけど」


 捜査員が差し出したのは、ビニール袋に入れられていたバラのツタだった。真っ白なバラがたくさん咲いており、薄気味悪い感じだった。このバラのツタでなぜ被害者は吊るされていたのか、自殺にせよ、他殺にせよ、まともではない。


「気味が悪いっスね」


「しかも、白いバラで首を絞められて死んでいたなんて、まるでいばら鬼の噂話そっくりなんですよ」


「いばら鬼、ですって?」


 獅子島がサングラス越しでも鬼気を感じる強面で捜査員に迫ってきた。その凶悪な人相に捜査員も顔から血の気が引いて真っ青になり、震え上がる。


「それ、どんな話なのかしらん?」


「あ、その、これは捜査員の仲間から聞いた話なんですが・・・」

 ★★★★★★★★★★★★★★★


『ねえねえ、お化けマンションにまた出たらしいよ。噂のいばら鬼って言う幽霊』


『えー、何それ?』


『知らないの?結構この町では有名な怖い話なんだけど』


『あのね、青龍町にお化けマンションって呼ばれている、高台にあるマンションがあるんだけどね。そこに小さな子供の霊が出るんだって。その姿はね、顔を隠すように足まで伸びた長い黒髪をひきずって、身体の至るところにいばらが巻きついているんだって。歩くたびにむせ返るようなバラの香りを辺り一面にまき散らすのが特徴的なんだって』


『それでね、その幽霊はただ見ただけなら何もしてこないんだけど、マンションにある小さな花壇があるんだけどね?その花壇に土足で踏み込んだり、荒らしたり、壊そうとすると、その人の前に現れてこんな質問をするんだって』





 -おかあさんのばら、いじわるしたのは、あなた?-




 -あかいの、しろいの、きいろいの、かえして?-




『それでね、彼女から逃げても、私じゃないって言っても、彼女はずっと一度狙った人間を追いかけ続けるんだって。それで、もし彼女に3回見つかってしまったら、その時には・・・』


『・・・どうなっちゃうの?』


『死んじゃうんだって。しかもその死に方がね、赤いバラが身体の内側から飛び出して全身が穴だらけになったり、白いバラのツタで顔が真っ白になるまで首を絞められたり、黄色のバラのツタが全身に巻きついて全身の骨を折られて、身体がまるでねじれた人形のような姿にされて死んじゃうらしいよ』


『助かるには、赤色、白色、黄色の折り紙でバラを折って、彼女に差し出して『花壇を荒らしてしまいごめんなさい』と謝るの。そうすれば彼女は折り紙のバラを本物のバラだと勘違いして、見逃してくれるそうよ』


『ええー、何かそんな子供だましで大丈夫なの?何だか嘘くさいって言うか、小学生だってそんな話、信じないよ』


『嘘じゃないよ。私の知り合いが面白半分であのお化けマンションに行ったら、すごく怖いことがあったとか、もう二度とあそこには近寄らないって泣いちゃったんだから』


『ふーん、それならあたしが今度見に行ってみようかな。どうせお化けなんて見間違いか何かだよ。もし本物だったら動画を上げてもしかしたらバズっちゃうかもしれないし!』


『え、ちょっと!?・・・ああ、もうあの子は一度言い出したら本当に聞かないんだから。もし本当にでたら、どうするつもりなんだろう』


 ★★★★★★★★★★★★★★★


『・・・ねえ、あの子、死んだってマジ?』


『・・・マジ。しかも自分の部屋で、身体中に黄色いバラのツタを巻き付けて、身体がグチャグチャに折れ曲がって死んでいたらしいよ』


『・・・だからあそこには近づいたらダメだって言ったのに。やっぱりあそこには本当にいるんだよ』


『花壇を守り続けている鬼、いばら鬼が・・・』


最後まで読んで頂き、本当にありがとうございます!

ご感想、ご意見、心からお待ちしております。

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