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小野塚市警察署心霊捜査班  作者: 勇人
第参の噂「顔無しカシマ」
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第参の噂「顔無しカシマ」⑬

注意

・本作品はフィクションです。実在の団体、人物とは何ら関係ありません。

・この作品には一部性的な描写、暴力シーンやグロテスクな表現が含まれております。苦手な方はまた、作中に登場する心霊スポットは、すべて架空の場所です。廃墟に無断で立ち入る行為や犯罪行為を本作品は一切推奨いたしません。

「・・・マジかよ」


 翌朝。

 牡丹のボディーガードとしてゼロ係の部屋に泊まり込んでいたゼロ係のメンバーたちの前に、錫木恵奈の現場検証に続いて書類整理などの激務を終えて、昨日から自宅にも帰れずそのまま刑事課の部屋で徹夜をしていた青鮫がやってきた。


 そこで、明良たちは牡丹が同窓会で録音していた、8年前に起きた『白秋高校学生集団自殺事件』の真相を聞かされて愕然とした。スマホから流れてくる音声を聞いて、本当にこんなことを平然とした様子でまるで『昔やんちゃをやっていた』というようなノリで楽しそうに話をしている錫木恵奈を含むいじめグループの会話に青鮫は吐き気を催しそうになる。


 元々、病気で一年遅れて入学をした牡丹をイジメていたが、それを注意されたという理由で彼女たちは鐘島くるみに逆恨みして、自分の教え子たちに襲わせて顔を切り刻み、絶望を与えて自殺にまで追い込んだというのか。そして口封じで自分たちの命令を実行したクラスメートたちに毒物を飲ませて、自殺に見せかけて殺害するという凶悪犯罪にまで手を染めていたというのか。しかもそれらが彼らにとってはゲーム感覚でやっているという話も、完全に常軌を逸脱している。


 これまでに青鮫が知っている『悪魔』と言える存在がまさに彼女たちそのものであった。いや、悪魔よりも狡猾で残忍かつ冷酷な存在だった。湧き上がる怒りを堪えて、青鮫は慎重に答えを出した。


「・・・これだけじゃまだ連中が8年前に糸を引いていたっていう証拠にするには弱いな。もし連中が酔っ払っていて作り話をしていたなんて言えばそれで片づけられちまうな」


「まあな。だが、錫木がなぜ牡丹を無理矢理同窓会に呼び出したのか、なぜ銅に連絡を取って牡丹を襲わせるように仕向けたのか、銅に彼女を襲うように仕向けたいじめグループの金久保愛花はなぜそんなことをやらせたのか、その理由がまさにこれではないだろうか?」


「国東巡査部長が警察官になっていることを知って、錫木恵奈は彼女が自分たちの過去に犯した犯罪を調べているのではないかと不安になって、彼女が今調べている事件のことや、彼女がどこの課に所属しているのか聞き出そうとしていた。しかし、国東巡査部長が自分たちのことを調べている様子はないということに安心して、ついうっかり口を滑らせてしまった。その時の会話を彼女に聞かれたと思い込んで、今度の事件を起こした・・・ということですか?」


「おそらくな」と桜花が応えると、青鮫は憤懣やるかたないといった表情で「身勝手過ぎンだろう」と吐き捨てた。口は悪いが、犯罪や卑劣な行為を許さない熱血刑事として、錫木たちに対する怒りで顔が真っ赤になっていく。


「・・・8年前に国東巡査部長が桃塚駅の掲示板で書き込んだメッセージだと思い込んで、鐘島くるみは遊園地におびき出されて事件に巻き込まれたとなると、それを証明するためには、彼女が書いたメッセージではないということを証明しなけりゃいけないってわけか?」


「当時のメッセージが残っているとはさすがに思えないですけど、何か、そういった映像とか残っていないですか?」


「8年前だろう?そもそも掲示板のメッセージなんて翌日を迎える時には消されちまうモンだし、ましてやそんな昔のものが残っているとはとても考えられねえが、それでも調べてみるか?」


「え、もしかして調べてくれるの?」


「勘違いするんじゃねえよ、単純バカサイ!アタシはこういう悪事を悪事とも思っていない人でなしが大嫌いなだけだ。それに、テメェらより先に今度の事件の犯人をこの手で突き止めたいだけだ」


 そう言って、青鮫はゼロ係の部屋から出て行った。


「徹夜明けなのにもう捜査に向かうつもりか、アイツは」


「気合が入っているのはいいけど、当てが外れて空回りにならなきゃいいけど」


 憎まれ口を叩いているが、霧江は青鮫のことを心配しているような顔ぶりだった。


 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


 朝の桃塚駅は学生や出勤する会社員たちでにぎわっていた。駅員室で聞き込みをしていた青鮫は、駅員の中でも一番長く働いている老年の駅員に案内されて、駅の倉庫にやってきた。


「ここには8年前にこの桃塚駅舎の改装工事で使われなくなったものを一部保管しております」


 8年前の12月24日に桃塚駅は施設の老朽化に伴い、改装工事が行われていた。その際に不要となった備品はほとんど処分されたが、8年前にこの駅で使われていたものはないかと尋ねたところ、8年前に使われていた掲示板がそのまま倉庫に保管されていることを知り、掲示板を確認しに来たのだ。


「今使っている掲示板は、8年前の12月25日から使っているものでしてね。24日の午前零時に桃塚駅の最終便が出た後に取り外して、新しいものに変わったんです」


「ありがとうございます」


 掲示板を見ると、8年前の12月24日に書かれたメッセージがそのまま残されていた。その中に、気になっているメッセージが奇跡的に残っていた。青鮫は心の中で拳をグッと握りしめた。


『K 今日午後6時 鬼塚山上遊園地で待っています B』


(・・・このメッセージを見て、鐘島くるみは遊園地に行った。そしてそこで襲われたと言う事は、このメッセージを書いたのは鐘島を呼び出した襲撃犯たちの一人ってことになるな。まずは写真を撮って、今度の事件の関係者の筆跡と照らし合わせてみよう)


 スマホを取り出して写真を撮った後、突然、眩暈を感じた。

 目頭を押さえてこらえようとするが、眩暈がどんどんひどくなり、その場に立っていられなり、近くにあった椅子に腰を下ろした。


(・・・ヤバい、徹夜明けで疲れが出たか?)


 掲示板を見ると、書かれているメッセージの上に赤く光る文字が浮かび上がっていた。ぼんやりとした目でじっと見ると、そこには違うメッセージが浮かび上がっていた。




『K 今日午後6時 時計の館で待っています。 B』




 メッセージをじっと見ようとすると、足がもつれて思わず転びそうになった。掲示板に手を置いて堪えようとした時、掲示板に書かれてあったメッセージがまるでガラスが砕け散るような音が聞こえた。その瞬間、彼女の周りの風景が急に色を失いまるで映像が巻き戻しをしているように流れ出す。


 異様な感覚。

 視界がぼやけて、意識さえ保つのが難しくなっていく。青鮫が膝をついて身体が言う事を聞かなくなり、その場に崩れ落ちた。


(・・・今まで、徹夜明けでもここまで眠くなったことはねえのに・・・ヤベエな・・・これ・・・)


 そして、青鮫は倒れて気を失った。


 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


 どのぐらい眠っていたのだろうか。

 青鮫の耳に、外から駅の中を歩く雑踏と心地よいメロディーが聞こえてくる。重い体を何とかして起こすと、妙に肌寒い。さっきまでは汗ばむほど暑かったはずなのに。


「・・・この音楽、ジングル・ベルじゃねえか?今は夏だっていうのに、どうして?」


 扉を開くと、季節外れなほどの冷気が流れ込んできた。そして外の状況がおかしいことに青鮫は気づいた。さっきまで夏服を着込んでいた会社員や学生たちがコートやジャンパーを着込んで歩いていたのだ。スーツのみの姿では身体中の鳥肌が立つほどの寒さだ。


「えー、桃塚中学校の皆さん、メリー・クリスマス!放送部部員の鍵沢かぎさわ里美さとみです。さて、本日は待ちに待ったクリスマス・イブ!放送部から小野塚市内で本日行われる特別イベントのご案内をいたします!!」


 近所の中学校の学生たちがビデオカメラで撮影をしていた。どういうわけか、彼らもコートを着込んでビデオカメラを使って撮影をしている。彼らの会話を聞いて、青鮫はますます困惑する。


「オイオイ、一体どうなってやがるんだ?」


 ふと、時計を見たとき、青鮫の目が大きく開かれた。信じられないものを見たように口をぽかんと開き、何が起こっているのか分からず頭が真っ白になった。


 時計のカレンダーには『2016年12月24日』と表示されていた。


 それはまさに8年前のクリスマスイブだった。時計の針は『午前7時』を指していた。


(・・・おいおい、これって、例のメッセージが書かれた時間じゃねえか!?)


 青鮫がとっさに掲示板の方に向かうと、掲示板の前で学生服を着込んだ長身の少女が何かを書き込んでいた。そして足早に目の前で走り去っていった。青鮫が駆けつけると、掲示板には彼女が書き込んだメッセージが残っていた。


『K 今日午後6時 時計の館で待っています。 B』


「・・・あたし、マジかよ。嘘だろオイ、あたし、8年前に・・・タイムスリープしちまってるぅぅぅっ!!?」


 青鮫が頭を抱えて駅全体に響き渡るほどの大声で絶叫した。


最後まで読んで頂き、本当にありがとうございます!

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