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小野塚市警察署心霊捜査班  作者: 勇人
第参の噂「顔無しカシマ」
40/58

第参の噂「顔無しカシマ」⑦

注意

・本作品はフィクションです。実在の団体、人物とは何ら関係ありません。

・この作品には一部性的な描写、暴力シーンやグロテスクな表現が含まれております。苦手な方はまた、作中に登場する心霊スポットは、すべて架空の場所です。廃墟に無断で立ち入る行為や犯罪行為を本作品は一切推奨いたしません。

 ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンッ!!!

 バンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンッ!!!


 ゼロ係の部屋のドアが外側からブチ破らんばかりにものすごい勢いで誰かが叩き続けている。


「おい!?一体何なんだよ、これは!?」


 思わず青鮫が霧江に怒鳴りつけると、霧江は真剣な表情で青鮫につとめて冷静な声で返事をする。


「・・・間違いなく心霊現象だよ。青鮫、絶対に今部屋から出ようとしたらダメ。ドアの向こう側にものすごくヤバいヤツがいる。この匂いは間違いなく怪異のものだ」


「怪異だ!?お前一体何を言ってやがるんだ!?」


「青鮫、これがあたしたちが取り扱っている事件なの。だから、これはかなりヤバい状況だっていうことは間違いない。今だけはどうかあたしの言う事を聞いてほしい」


 霧江の真剣な説得に、青鮫もさすがにこれは冗談を言っている状況ではないことを悟り、思わず黙り込んだ。こういった心霊現象や怪奇現象は初めての経験なのか、獅子島や鷲尾も顔が真っ青になってその場に立ち尽くしていた。


 ーかおを、かえしてかえしてカエセかえしてカエシテかえして、わたしのかおを、かえしてかえしてカエセかえしてカエシテかえして、どうして、裏切ったの、かおをかえしてかえしてカエセかえしてカエシテかえして・・・!!!-


 ドアの向こう側から地獄の底から響いてくるような低くて冷たい、無機質な声が聞こえてきた。

 頭の中に直接響いてくるようなゾッとするような冷たくて震えあがるような声・・・。

 その声からは怒りや悲しみ、憎しみといった感情がごちゃ混ぜになってまるで底なし沼のように引きずり込まんとするような恐ろしい執念を感じた。


 その直後だった。


 ーギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!?-


 突然部屋の向こうからから悲鳴が聞こえた。

 そして、さっきまでドアの向こうから感じていた気配が薄らいでいくのが感じた。まるで何かに恐れて逃げ出したような感じだった。


「おーい?誰かいないの?」


 ドアがノックされて、外から聞こえてきたのは聞き覚えのある声だった。明良が恐る恐るドアに近づいてゆっくりとあけると、そこには目を丸くして立っている生活安全課課長の巽課長が立っていた。


「巽課長・・・?」


「何だいるんじゃん。警視殿はいる?ちょっぱやで調べてきてほしいことがあるって頼まれたんだけど」


 ゼロ係の部屋に入り、呆然と立ち尽くしている獅子島たちを見ると「へえ、珍しい顔が揃っているねえ」とのんきなことを言いながら、巽課長は桜花の下に向かっていく。その時、霧江が何かを嗅ぎ取ったのか、鼻を抑えて表情をゆがめた。その視線の先にいるのは他でもない巽課長だった。


「課長、どうかしたんですか、そのラベンダーの匂い!?メッチャクチャ匂うんですけど!?」


「・・・ああ、そういえば何だか匂いますね。香水ですか?」


 巽課長から超嗅覚を持つ霧江が思わず鼻をつまむほどのラベンダーの匂いがした。巽課長は頭をぼりぼりと掻きながら「あちゃー、匂うかぁ」とぼやいた。


「しょうがないでしょうが。こっちは殺された銅吾郎の事務所を調べようとしたら銅の子分たちが抵抗してきて、その時芳香剤まで投げつけてきやがってさ。まともに食らってこの有様というわけよ。でも、警視殿に頼まれていたことを先に報告しなけりゃいけないと思って、シャワーを浴びる前に来たんだから」


「おいちょっと待て、銅吾郎が殺されたとはどういうことだ!?」


 桜花が椅子から立ち上がって思わず声を上げた。獅子島たちも寝耳に水だったらしく、巽課長に詰め寄る。


 巽課長の話によると、以前から銅吾郎については生活安全課は目をつけていたそうだ。表向きは信用調査を経営していたそうだが、裏では大金を払えばどんな汚れ仕事でも引き受ける裏稼業をしていたという情報が情報屋からタレコミがあった。桜花から鬼塚山上遊園地スタジオで牡丹が襲撃されて、監禁された事件の話を聞き、防犯カメラの映像に銅が映っていたことから何らかの情報を知っていると思った巽課長は彼が経営している信用調査会社の事務所を訪れた。


 しかしその時、信用調査会社の社員、元玄武会の構成員たちが何やら慌ただしそうにしている現場に遭遇し、その時、彼らはバッグに白い粉が詰まった袋をカバンの中に詰め込んでいたり、奥にある部屋から拳銃や日本刀などを取り出して殴り込みの準備をしている場面に偶然出くわしてしまったそうだ。


 ラベンダーの芳香剤を投げつけられたのは、彼らを逮捕しようとした時だったらしい。


「話を聞いてみたら銅が遺体で発見されたらしくてね、銅は裏稼業でかなりの恨みを買っていたそうだから、彼ともめていた他の組に殴り込みをかける準備をしていたそうなのよ。それで警察の捜査が入る前に薬物を隠そうとしていたらしいんだけど、私たちが予想よりも早く事務所に来てしまったというわけ。まあ、おかげで銅の子分たちは全員逮捕できたんだけどね」


「銅の遺体が発見されたって、どういうことですか?」


「銅吾郎が昨日のお昼ごろに駅前の裏路地で何者かに殺害されたのよ。刑事部の連中が話しをしているのを聞いたんだけど、銅、顔をメチャクチャに切り刻まれた状態で発見されたそうよ。銅はおそらく同じ裏稼業を営んでいる相手、もしくは反社の関係者に殺されたんじゃないかっていう線で刑事部は犯人を追うらしいわよ」


 銅吾郎が顔を切り刻まれた状態で発見された。

 その死に方は、まぎれもなく顔無しカシマの手口と同じものだった。


「・・・そうだったのか」


「それにしても、刑事部は今てんてこまいの大騒ぎだけど、ここで油を売っていていいの?」


 顔無しカシマによる連続殺人事件の4人目の犠牲者が出てしまった。刑事部がハチの巣をつついたような大騒ぎになっているにもかかわらず、獅子島たちがゼロ係の部屋にいることに巽課長は疑問を抱いた。それに対して、獅子島はバツが悪そうに顔を背ける。


「まあ、アタシたち、実は今度の事件の捜査から外されちゃいまして」


「ええっ?何かやらかしたの?」


「ゼロ係とこの間亀の杜学園で起きた事件を捜査していることがウチの課長にバレちゃいましてね。ゼロ係と仲良くしているような不届き者は今度の事件の捜査にはいらんと言われて、戦力外通告されたッス。別に仲良くしていたつもりなんてないんスけどね」


「あー、刑事課の課長って刑部ぎょうぶでしょう?全く渚校長を検挙できたのは他でもないゼロ係がしゃしゃり出てきたからでしょうに。それが面白くないからって部下に八つ当たりするなんて、本当にちっちゃい男よねえ」


「ゼロ係を解散させるように署長に何度も掛け合っているようですからね。もう目の仇にしていますよ」


 以前起きた事件でゼロ係に協力をしたことで、捜査から外されたことを知り、明良たちは思わず顔を見合わせる。しかし、そこで青鮫が不機嫌そうな顔で明良を睨みつける。


「南雲警部補殿、貴方たちと仲良くしていたから捜査を外されたからって自分たちのせいでこうなったなんて思わないでくださいね?こっちはそんな風に思われたっていい迷惑ですから」


「ちょっとそんな言い方はないじゃん!!」


「南雲警部補たちは間違ったことをやったんですか?後ろめたいことをやったんですか?南雲警部補たちがやったのは警察官として、一人の人間として事件の真実を追って、それを解決した。そして、事件で傷つき、苦しんでいた被害者たちに寄り添って事件を解決することで、彼らの苦しみから少しでも救おうとしていた。それは警察官として間違っていることなんですか?周りが何て言おうといち警察官として信念を貫き通したわけでしょうが?私たちも自分で選んで動いただけのことです。それを自分たちのせいでああなったこうなったって、正直うざいんでやめてくれませんか?」


 そう言うと、青鮫は明良の胸倉を掴んで乱暴に引き寄せた。傍から見たら問題行動でしかないが、青鮫は明良の顔を真剣に見つめて毅然と言った。


「お前がやるべきこと、お前に出来ること、それを見失うんじゃねえ。お前がやるべきことは今なんだ!?仲間がやられて怒ることか?私たちが捜査を外されたことに責任を感じている場合か?違うだろうが!!」


 青鮫の一喝を受けて、目を丸くする明良。しかし、彼の瞳に再び炎が灯った。そして青鮫を見つめ直して明良は引き締まった表情で答えを返した。


「そうだね。僕たちのやるべきことはただ一つ、この事件の真実を見つけ出して顔無しカシマの無念を払い、行くべきところに送り届けること。そのために、もう二度と迷わずに真実を見つけ出してみせるよ」


 明良の決意を聞いて、桜花がやれやれとつぶやきつつも苦笑する。英美里や霧江も口元に笑みを浮かべて、ようやくいつものゼロ係の雰囲気が戻っていく。


心霊捜査班(ゼロ係)の名にかけて!!」


 明良の力強い言葉が部屋に響き渡った。



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