表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小野塚市警察署心霊捜査班  作者: 勇人
第参の噂「顔無しカシマ」
39/60

第参の噂「顔無しカシマ」⑥

注意

・本作品はフィクションです。実在の団体、人物とは何ら関係ありません。

・この作品には一部性的な描写、暴力シーンやグロテスクな表現が含まれております。苦手な方はまた、作中に登場する心霊スポットは、すべて架空の場所です。廃墟に無断で立ち入る行為や犯罪行為を本作品は一切推奨いたしません。

 霧江が「顔無しカシマ」のうわさ話を静かに話し始めた。


「・・・これはあたしが高校生の時に聞いた話なんだけどね。昔、どこかの学校に美人で優しくて頭も良くて非の打ちどころがない女性の先生がいたんだって。生徒たちや同僚の教師たちからも信頼があったんだけど、その人気に嫉妬した教え子がいて、その先生を学校から追い出してしまおうって言い出したの。最初は子供っぽいというか、悪口を言ったりものを隠したり、嫌がらせをしていたんだけど、その先生は嫌がらせをまったく気にしていなかったんだって。それで苛立ちを募らせた教え子たちはその先生を学校から追い出すためにとんでもないことを思いついてしまったの」


「とんでもないこと?」


「その先生の自慢の綺麗な顔をメチャクチャに傷つけて、ショックで学校に来られなくしてしまおうって言い出したのよ。その先生を呼び出すために、先生が普段気にかけていた保健室に登校していた生徒の名前を利用して、いつも先生とその生徒がお互いを呼び出すために使っていた桃塚駅の掲示板にメッセージを書き込んだの」


「どうしてわざわざ駅の掲示板なんて使うんだよ。直接呼び出せばいいだろうが」


「あたしだってわからないよ。そういう風な噂なんだし。まあそれで、駅の掲示板にその生徒の名前で先生を呼び出すメッセージを書いて、先生を例の鬼塚山上遊園地のミラーハウスに呼び出したんだって。そこにやってきた先生を生徒たちが一番奥の人目がつかない場所に誘い込んで、そこで彼女に襲い掛かったの。それが原因で、先生は二目と見られない顔になってしまって、綺麗だった顔には刃物で無数の傷跡が一生残ってしまうほどの大怪我を負ったの。その後、先生は搬送された病院から逃げ出して、自宅の部屋で首を吊って・・・死んでしまったの」


「・・・酷い話だな」


「その時、彼女の部屋にある鏡やガラスと言ったものが全て叩き割られていたんだって。そして自分の腕や身体から流れ出る血で部屋中に「かおをみないで」「かおをかえして」「かえして」「どうして」ってたくさん書かれていたんだって。・・・その後、新しい先生が代わりに入ったんだけど、その後、そのクラスではおかしなことが起こるようになったの。桃塚駅を使っていたクラスメートの一人が自分の名前が掲示板に書かれていることに気づいたんだって」




『〇〇さん、かおをかえして カシマ』




「そのメッセージが書かれた1週間以内に、その子は顔を刃物でメチャクチャに切り刻まれた姿で発見されたの。その死にざまはその先生が死んだ時とほぼ同じだったって。それ以来、先生を襲ったり、先生に嫌がらせをしていたクラスメートの子が次々と自分の名前が掲示板に書かれて、1週間以内に顔を切り刻まれた状態で死んでいるのが発見されるようになったの。自分の顔を切り刻んだ相手にメッセージを送りつけて、顔を切り刻んで復讐を果たそうとする先生の悪霊のことを誰かが「顔無しカシマ」と名付けたの。その先生の名前が実はね・・・カシマ先生って言うんだって」


 自分の顔を教え子たちから傷つけられて、発狂し、絶望の末に自らの命を絶った女性の教師。

 その教師が自分の顔を傷つけた教え子たちへの復讐を果たすために、人を襲う怪異「顔無しカシマ」へと変わり果てた経緯を聞いて、明良たちは背筋が震えあがった。


「他にも調べてみたけど、顔無しカシマっていうのは自分が生徒たちから暴行を受けたあの鬼塚山上遊園地のミラーハウス、現在のスタジオ管理事務所に現れるっていう噂があるみたいね。そこで誰かの顔を傷つけたり、暴力をふるったりすると、顔無しカシマが自分を傷つけた相手が現れたと思い込んで、桃塚駅の掲示板にその人物の名前を書き込んで1週間以内に顔を切り刻みに来るっていうらしいわ」


 英美里がパソコンを調べながら淡々と告げた。


「えみ・・・いえ、中条さん、本当なの!?」


「・・・あー、うん、そういう噂があるっていうだけのことよ」


 獅子島が思わず声を上げると、英美里が気だるそうに答えた。


「・・・そんな噂があるなんて、それじゃ今度の事件とほとんど同じじゃない。いえ、でも、まさか、こんな偶然が続くなんてことあり得ないわよね・・・」


「おいオッサン、何1人でブツブツとつぶやいているんだ。何か知っているのか?」


 桜花が尋ねると、獅子島が頭をバリバリとかきながら深くため息をついた。


「・・・いやね、今度の事件で顔無しカシマに殺されたと思われる被害者は3人いるんだけど、その被害者たちのことについて色々と調べていたら、その顔無しカシマに襲われる被害者の話にそっくりなのよ」


 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


 獅子島がホワイトボードに貼った3人の被害者の写真を事件が起きた順番に説明をする。


「まず、最初の被害者が鬼塚山上遊園地スタジオを使って写真集の撮影をしていたカメラマンの『錦山(にしきやま)友晴(ともはる)』でね、彼はあのスタジオの奥にある使われていない空き部屋でスタッフが失敗をしたり粗相をしたりすると、呼び出して酷い暴力を振るっていたらしいのよ。錦山はプライドが高くて自分の思い通りにならないとすぐに癇癪を起こして、スタッフにパワハラを働いていたの。あまりにもひどくて、スタッフの中には仕事を辞めた人やうつ病を発症して入院した人もいるみたい。彼のパワハラを訴えようとしても、どんな報復をされるか恐ろしくてスタッフたちはなかなか言い出せずにいたみたい」


「2人目の被害者の釘宮沙耶も同じようなことをしていたみたいッス。彼女は都内で地下アイドルグループのセンターでリーダー的存在だったんスけど、気に入らないメンバーや自分よりもちやほやされている後輩にはかなり悪質ないじめをやっていたそうッス。あの遊園地では、メンバーの髪の毛を無理矢理鋏で切りつけたり、顔を鋏で切りつけてけがを負わせたこともあったそうッス。しかし、彼女のことを芸能プロダクションのマネージャーや社長に訴えても話は聞き入れてもらえなかったそうッス。それに釘宮の背後には反社の組織がケツ持ちをやっているという噂もあって、釘宮は我が物顔でアイドルグループを支配していたそうッス」


「3人目の鎌田聡もパワハラなんて言葉じゃ済まないレベルの暴力を部下たちに振るっていたそうだ。金を脅し取ったり、因縁をつけてけがを負わせて、暴力でスタッフたちを支配しているような男だったそうだ。ヤツが原因で職場を追い出されたり、暴力を苦にして自ら命を絶った人もいたそうだ。だが、奴の親戚が職場の警備会社の経営者の一族らしくてね、訴訟を起こされても優秀な弁護士を雇ってこれまでに何件も訴えを取り下げさせてきたそうだ。そして鎌田も大金を払って反社のチンピラを用心棒として雇っていたそうだ。ヤツの部屋にそいつらと金を払うから訴えを取り下げさせるようにやり取りをしているメッセージが残っていた」


「被害者たち、みんなろくでもない連中ばかりじゃん」


「だからと言って殺されてもいいなんて言わないけど、みんな、彼らを手にかけてくれた顔無しカシマには感謝の言葉を口にしていたわ。このまま彼らが生きていたら、自分たちが死んでいたってね」


「・・・つまり、今度の被害者たちは顔無しカシマにとっては自分の顔を傷つけた教え子たちと同じような行動を起こしていた被害者たちを自分を襲った教え子たちと重ね合わせて、彼らに襲い掛かっていくっていうわけですか?」


「霊が生前に自分の命を奪った輩、もしくはその奪った方法と同じようなことをした人物が現れたとき、激しい憎しみや怒り、殺意が湧き上がってその対象を呪うという話はこれまでにも聞いたことがある。顔無しカシマが襲う人間の条件は、あのスタジオにある生前にカシマが死んだ場所で他人を傷つける行為をしたものということ間違いないな」


 そうなるとここで問題が起きる。

 どうやって顔無しカシマを呼び出してその怨みを浄化させて、成仏すればいいのだろうか。スタジオで他人を傷つけることで呼び出すとしても、それを行うことは簡単ではない。


 その時だった。


「・・・あ?」


 桜花が何かに気づいたように顔を上げると、その表情がわなわなと震えだして強張っていく。


「桜花さん?」


「ヤバいぞ!!」


 そして、デスクの上に足を乗せて飛び上がり、ものすごい勢いでドアに向かうと扉を閉めて鍵をかけた。桜花が肩で荒く息をしながらドアノブを力強く握りしめている姿を見て、何が起きたのか分からない明良たちは首をかしげる。


「おい!!どういうことだ!!どうして()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!?」


 桜花が絶叫すると、明良たちが扉の向こう側から感じるすさまじい気配に、目を見開き、顔が真っ青になった。目には見えない、しかし呼吸をすることさえも恐怖のあまりに上手くできなくなるほどの圧倒的な殺意、憎悪、怒り、それらの感情がごちゃ混ぜになったどす黒い気配が感じられた。


「・・・桜花さん、いるんですか?この扉の向こうに、顔無しカシマが?」


「・・・ああ、そうだ。この中にいる誰かを確実に狙っている。4人目の標的となる人物がな!!」


 桜花が吐き捨てるようにつぶやくと、獅子島たちも異常事態に気づいて顔を見合わせた。そして突然。


 ードンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン!!!-


 怒りに任せているような、ドアを乱暴に殴りつける音が鳴り響いた。


この度は本作を読んでいただき、本当にありがとうございます!!

もし気に入っていただけたら、ブックマーク登録、是非ともよろしくお願いいたします!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ