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小野塚市警察署心霊捜査班  作者: 勇人
第弐の噂「ロッカーのイズミさん」
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第弐の噂「ロッカーのイズミさん」⑪

注意

・本作品はフィクションです。実在の団体、人物とは何ら関係ありません。

・この作品には一部性的な描写、暴力シーンやグロテスクな表現が含まれております。苦手な方はまた、作中に登場する心霊スポットは、すべて架空の場所です。廃墟に無断で立ち入る行為や犯罪行為を本作品は一切推奨いたしません。

 突然、白い光が視界を覆い尽くした。


「え!?」


 そしてこの体育館ほどの大きさがある多目的ホールにドスドスと床を踏み込んでくる音が近づいてくる。積もった埃が舞い上がっていく。淀んだ空気で満ちた空間に、乗り込んできた青鮫の怒号が響き渡った。


「そこまでだ!!大人しくしろ!!」


 青鮫に続いて獅子島、鷲尾、そして刑事課の刑事たちが鬼のような形相でホールに踏み込んできた。彼らの視界には、薬で眠らされているのか、首にロープを巻き付けられたままで横たわっている渚校長と、彼女の首にかけられたロープを巻き取るクレーンの操作ボタンを手に持っている人物が呆然と立ち尽くしている姿が飛び込んできた。


「なるほどね。渚校長を自殺に見せかけて殺害して、全ての責任を彼女に押し付けようとしていたというわけかしら?そうすれば、警察の捜査が緩んで、そのスキをついて貴方はまんまとトンズラするつもりだったんだろうけど、当てが外れたわね?」


「貴方がこの近くのコンビニで買い物をしている姿が防犯カメラに写り込んでいたんですよ。そして、貴方がこの使われなくなった亀の杜学園の宿泊施設を隠れ家にしていることが分かったんです!!」


「学校関係者の貴方なら、ここの施設の鍵を盗み出すことぐらい簡単よね。でも、貴方はミスを犯した。貴方は玄武会やホワイトクロウに命を狙われていることを知っていて、とっさにこの施設の鍵を盗み出してここに逃げ込んだ。学園には警察官がアンタたちがやらかした個人情報を横流ししていた事件で捜査しているから、彼らも警察に目をつけられないように学校関連の施設には極力近づかない様に警戒していたでしょうからね」


「だが、鍵を盗み出したまではいいが合い鍵を作ってもう一度職員室に戻すことが出来なくなった。当然だよな。私たちはアンタが玄武会と渚校長が結託して、アンタに命じて生徒の個人情報を横流ししていた一件で捜査してたんだ。だから、職員室にあるはずの今使われなくなったこの施設の鍵が一つだけなくなっていたままの状態になっていたんだ」


「そこで、ここらへんで食料や身の回りのものを揃えることが出来るコンビニを見つけて、ここ最近の防犯カメラを調べてみたら、音信不通になっていたはずの貴方が買い物をしているところをバッチリ捕らえていたってわけですよ」


 青鮫たちの言及に、彼女は唇をかみしめて身体を震わせている。


「もう言い逃れは出来ねえぞ。渚校長の拉致監禁及び殺人未遂、そして、沢田や瀬戸と組んで学園関係者の名簿を不正に盗み出して玄武会に売り飛ばしていた一件、学園の生徒たちに違法薬物を売りさばくように命じていたこと、全ての証拠がもう挙がってンだよ!!観念しろ・・・”潮愛優美”!!」


 青鮫に名指しで呼ばれた、潮愛優美は真っ青な顔でブルブルと全身を震わせていた。


「そして、貴方たちは6年前にも許されざることをやった。それは、池田圭祐に違法薬物を大量に摂取させて副作用で死に至らしめたこと、そして貴方はその一件を調べていた清瀬泉美を手にかけた」


 部屋の中に入ってきた人物、南雲明良と葛西霧江の姿を見て潮の目が大きく見開かれた。


「・・・か、葛西・・!?」


「・・・6年ぶりだね、潮さん。まさか、アンタとこんな形で再会するなんて夢にも思わなかったわ」


 霧江がかつて自分を虐めてきた因縁の人物を冷たいまなざしで睨みつけると、潮は顔中から汗を噴き出してガクガクと膝が震えだした。


「オイコラ、どういうことだ?6年前の事件の犯人って!?」


「・・・清瀬泉美さんの遺体の司法解剖の写真を科捜研に問い合わせて調べてもらったんですよ。清瀬さんの死因は首筋を鋭い刃物で切り付けられて、出血多量で死亡していたんです。その傷口が、清瀬さんの背後から腕を回して、刃物の刃を押し当てて一気に引いたことが分かったんです。その切り傷をよく見てみると、右から左に向かってひかれていた。つまり犯人は左利きの人物だったということになります」


「そして今度の事件関係者の中で、左利きなのは潮さん、アンタだけだった」


「でも、あの事件は通り魔による犯行と言うことで本庁からその事件の捜査は捜査一課で行うことになり、アタシたち小野塚署の刑事たちは捜査から外された。まあ、それもそこにいる渚校長が親戚の警察庁の幹部様にお願いして、事件の真実をうやむやにしてそのままお宮入りさせたんだけどね」


「でも、潮先生。貴方はその一件のせいで、渚校長に弱みを握られてしまった。渚校長は自分が計画している名簿屋の仲間を作るために、貴方をわざわざ大学の教育学部に通わせて教師になり、亀の杜学園に教師として潜り込んで、名簿を手に入れるように持ち掛けた。その間に、渚校長は湖城理事長の弱みを握って、彼を裏で脅して、表向きは様々な学院の改革を率先して執り行う有能な美人教師としての信頼と実績を築き上げていった。それはもし妙な噂が立っても、彼女が疑われるようなことにならないための信頼と、警察がおいそれと手出しが出来ないようにするための権力を手に入れるための計画だったんですね」


「潮の他にも、池田を違法薬物の多量摂取で死に至らしめたことで、瀬戸と沢田も脅して渚校長は利用していた。瀬戸は実家が金持ちだから学園に便宜を図ってイメージアップにつなげるためにとか言う理由で寄付金として大金を手に入れさせて、それを渚校長は玄武会の活動資金として横流ししていた。沢田は半グレとしてホワイトクロウに入っていたから、大金を払って都合の悪い人物を裏で処理するように命じていた。そして教師として貴様を招き入れて名簿屋として情報を横流しさせた。まあ、どうせバレた時の身代わりとして利用したのだろうな。貴様には6年前に清瀬を殺害したことを渚に知られていて、バレたら社会的に破滅することが間違いなかったからな」


「ところが、途中で利用され続けることに不満を募らせていた瀬戸と沢田が裏切ったことで、渚校長の計画はご破算になったんですね。沢田がやった裏切り行為は、河内組の組員たちの大量殺戮という予想以上の結果をもたらしてしまった。まさかそこまでのことになるとは、瀬戸たちも考えていなかった。敵対する組ともめて事件を起こして、警察に逮捕されてしまえばそこから渚校長の悪事がバレるかもしれない。渚校長への仕返し程度にしか考えていなかったのでしょうが、それが自身の首を絞める行為になるとは思わなかったのでしょうかね」


「渚校長をギャフンと言わせるだけで済むわけないでしょうに。考えが浅すぎるんだよ。だから瀬戸たちは焦って逃げようとしていた。その時に、潮さん、アンタ瀬戸からどうにかするように命令されていたんじゃない?例えば、渚校長が捕まって自分たちのことを言う前に、全ての事件の主犯は自分だということにして、渚校長と心中しろとかさ」


 部屋に桜花、英美里、牡丹も入ってきて潮の悪事を暴きたてていくと、潮の顔色がもう青色を通り越して真っ白になっている。視線も慌ただしく動き回っており、顔中から汗が噴き出していた。そんな彼女に明良が近づいて、震える彼女の手からコントローラーを抜き取り、それを隣にいた桜花に手渡した。


「・・・それと、貴方があのロッカーを使って瀬戸さんたちと同じように、ロッカーのイズミさんを利用して昔の仲間の口封じと真相が漏れないように施していた仕掛けですけど、もうそれも僕たちが解決しましたよ。貴方の悪事はここまでです」


「なっ・・・!?」


 明良の言葉に潮の目がかっと見開かれて、表情が驚愕から絶望へと強張っていく。


「う、嘘だ!!そんなの嘘よ!!アンタたちに、アイツをどうにか出来るわけがないじゃない!!」


「そりゃまあ、普通なら無理だよねえ?でもさ、あたしたちはそういうことを専門に取り扱っている部署なんだよね。まあ、アンタには分かりっこないし考える必要もないよ。アンタがこれからやらなくちゃいけないのは、6年前にやったこと、今回の自分の行いを全て白状して、自身の罪と向き合って一生をかけて償ってもらうわ。-人の命を奪い、生徒たちの信頼を裏切り続けてきたアンタの罪はアンタが考えているほど軽いものじゃないわ。教師として、人間として、恥を知りなさい!!」


 霧江が激昂すると、潮はとうとうその場に膝をついてがっくりとうなだれた。肩で息をする霧江を明良が両手で支えると、座り込んだ哀れな加害者を無機質な瞳で見下ろす。そして、彼女は刑事部の刑事たちに引きずられるようにして部屋を退場していった。彼女の瞳はもはや光を失っていた。


「どうやら無事解決できたようだな」


 刑事たちが潮を連行する間、桜花は明良と霧江を見上げて安心したようにつぶやいた。


「何とかね」


「正直、貴様たちが無傷でここにこられたことを私は素直に驚いているわけだがな」


 桜花はいつもの傲岸な口調に、若干安堵の感情を含めて言った。その言葉の意味はゼロ係のメンバーたちだからこそ、どういうことなのか分かっていた。


 明良と霧江が、ここにたどり着く数時間前まで”ロッカーのイズミさん”という悲しき怪異と激しい戦いを繰り広げていたことを。

この度は本作を読んでいただき、本当にありがとうございます!!

もし気に入っていただけたら、ブックマーク登録、是非ともよろしくお願いいたします!!

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