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致死回生

作者: 佐川アリス

 夢を見た。鉄骨が落ちてくる、そして下敷きになり、意識が飛ぶ夢。思わず「うわぁぁ!」と、野太い声で叫ぶ。


『ん?野太い声?』疑問に思い鏡を探して顔を見ると、そこには知らない50才くらい白髪のおじさんが映っていた。僕は流隆也15才蒼い髪に黄色い目が特徴的だ。散々混乱したが、ふと、酒屋に行ってみたいという欲求が沸いた。


 外に出るとすぐ近くに居酒屋はなやが目に入った。どうやら店主の反応を見るに行きつけらしい。席に着くと金髪で赤い目の17才くらいの女の子がこっちをじっと見ていたが、何かをメモするとこちらに渡してきた。メモを開くとそこには(私はリンカ、店が終わったら公園に来て。)と書いてあった。知ってる、子供のころにテレビで見た天才少女霊能力者だ。すっかり成長していたなと酒を飲みながら思った。


 約束通り、公園に向かうとリンカがいた。リンカは「あなた魂が混ざってるわよ。本当は誰?」と聴いたので、僕は「流隆也15才。」と答えた。そして、朝からの事を全て話した。すると、「それ夢じゃないかも。最後に自分の体があった場所、覚えてる?」と聴かれたので、「中央区の工事現場」と答えた。幸いにも電車で行ける場所だ。


向かうとすぐに自分の死体を回収して、乗り移る事が出来た。それは友人の原田友季14才のおかげだった。目撃者が彼だったのが幸いで、第六感が鋭い彼は死体を守り続けてくれたのだ。友季は美少女のような顔をクシャッとさせて「生き返ってよかった。」と言った。

 元に戻った僕は、友季とリンカの3人でおじさんを家まで帰した。

 

 翌朝、リンカは目覚めると昨日のことを思い出した。「厄介な体質の子に出会っちゃったな」とつぶやくと、サングラスをかけた6才くらいの女の子に挨拶をした。

まさか、その女の子も能力者とは、リンカは夢にも思っていなかった。その時が来るまで。


僕は試してみたくなった。手っ取り早くおじさんの時のような体験をするには、どうしたら良いのだろうか。 そうだ、友季に相談してみよう。

「もしもし友季?おじさんの時みたいに乗り移るには、どうしたら良いと思う?」

「うーん?…死ねば?」

「死んだら責任取ってよ。」

「分かった。」と友季は答えた。さて死ぬとしよう。幸いにも家は3階建て、階段から身を乗り出すと勇気を出して頭から落ちた。ぐしゃっと音がした。意識が遠のいてゆく。


目が覚めると周りの景色が少し大きめに見えた。急いで鏡を探す。やった成功だ!今度はピンクのツインテールで、茶色い目がクリクリした幼い女の子だ。ベッドから降りると慣れない手つきで着替え始めた。すると父親らしき人が

「えらいなー、自分で着替えて。」と言ってニッコリと笑った。母親も「ごはん出来たわよ

~。ゆっくり食べてね。」と優しく言った。どうやら両親に愛されているようだ。出かけようとすると、慌ててサングラスを持ってきてかけるように促した。かけると「いってきまーす。」と言って団地を出た。

実は彼女の肉体こそ、愛川ネネ6才、リンカと挨拶した女の子だと後で気づくことになる。それは置いといてサングラスを取りたくなった。取ってみると異変が起きた。周りの人たちが次々に頭をなでようとしたり、熱い視線で見てくる。しかも自分の体を取り巻く空気が冷たい。その時不審な男が連れ去ろうと手を伸ばしてきた。すると風が吹き荒れ、見えない何かが男をなぎ倒した。男は視線をネネのうしろにやると、謝りながら逃げて行った。


「隆也!」と知ってる声がした。振り返るとリンカが走ってやってきた。かなり怒っているが、リンカまでネネをなでようとする。「早くサングラスをして!」とリンカが言ったのですると思い切りビンタされた。そして「事情は後で話すわ。」と言った。


 とりあえず、僕はネネの姿のままリンカを招くことにした。といってもネネの部屋だが。

「実はネネちゃんは能力者みたいなの。サングラスをかけていた時は気づかなかったけど、外すと人に好かれるみたい。生きている人に。そして死んでいる人からは慕われて守られているわ。多分、いつも優しくしてくれている両親が、昼は共働きで寂しいのが能力としてかまって欲しいって強く具現化したのね。だからこそ、この子に憑いているうちは、絶対に外しちゃダメ!」とリンカは言った。

「分かった。」と返事をした。


 さて、僕の家に向かおう。スマホの地図を見ると、歩いて20分で自分の家に着きそうだ。そしてリンカとともに家に入ると、自分の死体めがけて飛び込んだ。起き上がると、ネネもすぐ目を開けた。ビックリしていたが、全てを話すと子供とは思えないスピードで理解してくれた。

 そして「リンカおねえちゃん、リュウヤおにいちゃん友達になろう。」といったので友達になった。

リンカは、「紹介したい人がいるわ。」と隆也に言った。


 僕とリンカは、(koyori)というお店に入った。このお店はホテルのような作りだった。どうやら持ち主の趣味らしい。

「こっちへおいで。あなたが流隆也ね。噂は一人の対象に絞って聞く能力で知っているから。」と背の高い黒髪ロングに灰色の目をしたクールな女の人が言った。

「あなたは誰です?」と聴くとリンカが「この人こそ、紹介したかった降霊術師のこよりさんよ。」と言った。

こよりさんは、「困ったらいつでも頼ってね。」といいその場を後にした。

リンカと別れ家に着くとスマホに電話がかかってきた。友季からだ。

「新しく仲良くなった子がいるだろ。みんなで海行こうぜ。」

「良いよ。ネネちゃんとこよりさんも、リンカと一緒に誘うから。」

「ネネちゃんとこよりさんが加わったの了解!」と言って電話は切れた。

さっそく3人それぞれに連絡した。3人ともOKだった。僕はベッドに入って、明日を楽しみにしながら眠った。

 翌朝、みんなで待ち合わせして電車に乗ると30分近くで目的地に着いた。

「海だ~!」みんなで叫ぶと水着に着替えた。こよりさんは豊満な体に黒と白のビキニ、リンカはスレンダーな体に水色に白の水玉のビキニ、ネネちゃんはピンクに白のヒラヒラが付いている水着を着ていた。僕は黄色、友季は赤だ。


 僕は平泳ぎで魚が泳ぐのを眺めていた。ネネちゃんは浮き輪でリンカと浮いていた。友季は海で思いっきり泳いだ。こよりさんは、ビーチパラソルの下で本を読んでいる。

 すると魚を深追いしすぎたのがいけなかったのか、足に海藻が絡みついた。しまった。誰も気づいてない。バタバタともがけばもがくほど、息ができなくなってゆく。海藻が取れたと同時に僕はまた死んだ。


 ネネは「リュウヤおにいちゃんの体がないよ。」としくしく泣きながら言った。友季は「僕以外能力者だろ。それ使えばいいじゃん。」と言った。なるほどとみんなが思うと作戦会議を始めた。


 そのころ僕は会社の中で目覚めた。どうやらホワイトな会社らしい。

「風邪をひいたので退社します。」というとすんなり帰らしてくれた。ニュースを見ると僕が海で行方不明の話が流れていた。


同じニュースを見たリンカたちは、作戦を決行するために集まった。

「作戦はこうだ。まずリンカは、隆也の取り憑いている人を見つける。こよりさんは海の霊を下ろして噂話を集める。ネネちゃんはサングラスを外してポルターガイストと魅了で周りの人を足止めする。僕は泳いで探す。見つかったら笛を3回鳴らすってことで良いね。」と、友季が言うと

「賛成!作戦開始!」とみんなが言った。

ネネちゃんがサングラスを外すと沢山の人だかりが出来た。こよりさんは口寄せを始めた。すぐに倒れ友季が支えると目が開いた。そして「あたし隆也君の場所知ってるよ。」と言うと「友季もついてきて。」と常人ではない力で引っ張ってきた。話を聞くと生前、彼女はインストラクターで痴情のもつれでお腹を刺されたうえ、海に投げ込まれたらしい。可哀想な話だと友季は思った。こよりさんの中の霊が「あそこです。」と言って、隆也の体を見つけたので、二人がかりで持ち上げて泳ぎだした。陸に上がると笛を3回鳴らした。そしてネネちゃんはサングラスをかけた。すると、霊も人だかりも去っていった。こよりさんの中の霊は、「私は沙織。もう未練がないから行くね。」と言って成仏した。

 こよりさんはすぐ立ち上がり「リンカが隆也を見つけられると良いんだけど。」と言った。


そのころリンカは途方に暮れていた。なぜなら隆也を見つけようがないからだ。その時スマホが鳴った。知らない番号だが出ると若い男の声で

「もしもし隆也だよ。今、京都なんだ。どうしよう。」と言った。リンカは、

「そこから動かないでこよりさんに相談してみるから。」と言って電話を切った。

そして急いで海に戻ると海に戻るとこよりさんに相談した。すると、

「いい人を紹介するね。」と言って電話をかけた。「もしもし速人くん。」と言って電話を切ると見知らぬムキムキの、赤髪に緑色の目をした男性が立っていた。

「俺が速人だ。よろしくな。」というとこよりさん以外ビックリした。どうやら電波に乗って移動してきたらしい。「妹の里実もよろしくな。」と言うとひょっこり童顔の紫色の髪と目をした女の子が出てきた。

 すると何も言わずに隆也の死体のにおいを嗅ぐと、5円玉をひもに結び地図を置いた。5円玉は京都の上で止まり、何かを吸い上げ始めた。

その時僕はサラリーマンの体を離れ、地図から出てくると、自分の体に入り込んだ。

起き上がるとみんなと男性と女の子がいた。すぐに打ち解け速人20才と里実14才ということが分かった。速人は、こよりさんと、リンカと、ネネちゃんと、友季と、僕の前でどうやってその能力を手にしたか長々と話し出した。

「昔と今の自分は全く違った。高校生の時は根暗で足が誰よりも遅かった。周りからは、ノロマとからかわれうんざりしていた。

そんなある日だった。雷が落ちる帰り道、女の子が雷の下に逃げずに立っていた。そして雷が女の子に落ちる寸前、身を挺して守って代わりに打たれたはずだった。

 気が付くと女の子はいなくて、病院の中で母さんに看病されてた。その夜夢を見たんだ。あの女の子が夢に出てきて『悪いことをした。代わりに能力をあげる。』

朝目覚めると、母さんから電話があった。そしたらスッとスマホの中に入れた。そのまま暗い空間をさまようと白い光が見えた。気が付くと母さんのところにいた。母さんは腰を抜かしてた。でも、俺の体験談を話すとすぐ信用してくれた。そして『その能力学校で使っちゃいなよ。』と言った。だから学校で、電話をかけてくれ、そしたらそこに移動できると説明した。本気で信じたやつが電話をかけて、そいつのスマホに移動したら、たちまち人気者になったよ。」と語った。里実の場合は家で一人でコックリさんをやっているうちに、人の魂を呼び寄せられるようになったらしい。ネネちゃんを含めて3人も急に能力に目覚めたとなると、僕もそっち側なのだろうか。調べてみたくなった。


何より気になったのは速人の話に出てきた(女の子)だ。それを聞いたとき、自分も女の子を救おうとして、鉄骨の下敷きになったことを思い出した。その女の子もいなくなっている。

友季にその話をすると「願望がある人の前にその女の子は現れるじゃないか。」と言った。

それだと思った。だって僕の願望は1つだから。


僕には実は妹がいた。流ゆずは(10才)背がすらっとした碧眼の彼女は天才でテストはいつも100点、スポーツも得意で、歌も上手い人気者だった。ところが妹は何者かに誘拐され惨殺されたのだ。発見現場はボートの上だった。


両親も病死して、完全に1人となった僕は、真犯人に復讐することを考えた。手掛かりはゆずはがつけていたけど無くなってしまったサクランボのヘアゴム。そしてゆずはの爪に残った犯人の皮膚、血痕だ。つまり、犯人の体のどこかに引っかき傷があることになる。しかもサクランボのヘアゴムを戦利品として持っているはず。それを確実に見つけたい。それが僕の願いのすべてだ。周りにばれないように復讐することは僕だけの秘密だ。


夜寝ていると夢の中にあの助けていなくなった女の子が出てきた。女の子は

『そろそろ能力を使いこなせてきたかな?私、命を懸けて助けてくれる人にしか能力を授けない神様だから。特別に能力の使いこなし方を教えてあげる。』

『そんなのあるんですか』と僕が言うと、

『あるよ。事故死だとランダムにとりつくことができる。自殺だと自分と縁がある人。他殺だと何か悪いことをした人だよ。』

『なるほど、他殺を狙えば良いんですね。』

『その通り。ちなみに、死体は壊れても自然に元の形状に戻るから。』と女の子は言った。


 翌朝、目が覚めると困ってしまった。僕の殺害をお願いできる人がいるかなと。すると友季から電話がかかってきた。

「悩んでるなら僕に任せて。何でもやるよ。」

「じゃあ、僕のこと殺してくれる。」

「もちろん殺してやってもいいけど。じゃあ家に向かうね。」

「ありがとう。また後でね。」と言うと電話が切れた。やっぱり持つべきものは親友だ。

友季が家にやってきた。「どう殺すの?」と聴くと、

「紐を持ってきた。これで首を絞めよう。」と言い紐を僕の首にかけた。思い切り首を締め上げると僕は息絶えた。


目を開けると立派なベッドから降りた。今度は図体が大きくて、刺青がしてある。顔の傷と極悪そうな顔からしてヤクザだと分かった。一応くまなく探すが、古傷だけでサクランボのヘアゴムはどこにもなかった。里実に電話をかけて、僕の魂を吸い上げて、僕の家まで帰してもらうと友季にまた殺してもらった。この作業を1時間続けたがなかなか見つからない。

次にかけよう。友季もさすがにヘトヘトだ。刺殺に変えることにした。ぶすっと刺されて刃物を抜かれると苦しみながら死んだ。


目が覚めるとベッドから降りた。今度は誰だろう。欠伸をしながら伸びをすると腕に3本の傷があった。まさかと思い、いろいろな場所を探して、机の引き出しを開けるとサクランボのヘアゴムがあった。間違いない。犯人はこいつだ。鏡を見ると見覚えのある顔を見て驚愕してしまった。


みんなを集めると、実は妹がいたことを話した。そしてその妹が誰かに殺されたこと、犯人探しをしていたことを。

友季は「もしかしてこの中に犯人がいるって言うつもりだよな。」と言ったので

「そうだよ」というとみんなざわついた。「ひどい。」という人もいれば「うそだろ。」という人もいた。リンカは、「犯人は誰なの」と聴いた。落ち着かせて深呼吸すると、

「犯人はこよりさん、あなただ!」と僕は言った。

「すると証拠はどこにあるんですか?」と言った。

「証拠はその腕の傷とヘアゴムです。こよりさんに乗り移って見ました。」

「そう。見ちゃったのね、サクランボのヘアゴムを。」こよりさんは観念したように言った。

「なんで誘拐して殺す必要があった?」と速人がきくとこよりさんはアハハハと笑い出した。いつもと様子が違う。まるで別人だ。

「私はもう一つの人格サヨコです。」

「サヨコだと嘘つくな、ふざけるな!」と僕が言うと、リンカが僕をなだめてから言った。

「サヨコさん、動機を話してください。」

「私はお金を持ってそうな女の子を探してました。恵まれている人が大嫌いだったから。それで人気のある女の子を1人さらいました。それがゆずはちゃんでした。大人しい良い子でした。」

「良い子ならどうして殺したの?」と里実がぼそっと言うと、サヨコは

「良い子過ぎてしかも恵まれてるから、その人生を滅茶苦茶に壊そうと思ったんです。恐怖に歪む顔は最高でしたよ。」と笑いをこらえながら言った。

「てめえ、ふざけんな!」とつかみかかろうとすると、リンカが止めてサヨコの顔をグーパンした。そして「サイコ野郎、罪を償えばーか!」と言った。すると、サヨコはむっとしてしばらくするとこよりさんに戻った。こよりさんは、

「サヨコが迷惑かけてごめんね。警察に出頭するから!」と言った。


 約束通りこよりさんは警察に出頭した。これから裁判が始まるらしい。サヨリには重い罪にしてほしいがそうなると、こよりさんが気の毒だ。モヤモヤしているとリンカが

「今日は7月23日、隆也の誕生日だからみんなで祝ってあげるわ!」と言った。

そういう訳でリンカがみんなを自分の家に招待した。実はアニメ好きらしく、フィギュアが12体部屋に置いてあった。話は盛り上がり、バースデーケーキをみんなで分け合った。

 楽しい時間はあっという間に過ぎ、家に帰るとあの夢に出てきた女の子が立っていた。

「その能力を使う必要が無くなったんじゃない?そうしたらもう生き返れないけど。どうする?」と聴いてきた。

僕は、「これからも使うかもしれないしこのままでいいよ。」と言った。

すると女の子は、「その答えが聞けて良かった。またいつか会いましょう」というとフッと消えた。


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