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悪役令嬢は魔法少女の上位互換ではない【5】


 依頼していた軍馬が到着した。受けた連絡に、魔道士隊の厩舎へと向かう。

 長距離の移動を終え、一晩の休養をとらせた白い毛並みの牝馬ひんばがそこには居た。一際目を惹く馬格をしている。雌ではあるが、マルクスの愛馬である雄のメテオールとほとんど変わらない体躯をしている。魔馬との混血だ。牝馬ひんば特有の柔軟性を保ちながら、牡馬ぼばと見まごうほどの筋肉量がある。若く、尻の形もまださほどの丸みを帯びてはいない。

「間違いなく最良馬の一頭です」

 ミュラーにて軍馬の斡旋事業を営むフォーゲルが請け負った。

「そうだな。感謝する」

 はじめての場所にあって、知らない人間たちに囲まれて、ずいぶんと落ち着いている。度胸は及第点。一般的に牝馬ひんば牡馬ぼばよりも繊細で、気性のおとなしいものが多いが、人間と同様に個々の性格は千差万別。マルクスの目を見返してくる白馬の目付きには興味津々の色も見える。豪胆なことだ。誰かに似ている。これから彼女の主人となる女性に似ている。

 引き馬をされて従いながら、俺から目を逸らさない。偶然ではないだろう。凪いだ知性が窺える。自身の運命を決めるのが誰なのかを感じ取っている。

「名前は?」

白馬シンメルといいます」

 外見そのままの名にちょっと笑ってしまったが、…たしかに。納得だ。額に流星の印を持つメテオールのように。

 見事な毛並みを見て、その名を一度聞いてしまえば他の名などつけようもない。


 アーデルハイト令嬢に相応しい馬だ。


 シンメルは引き手(リードロープ)を握った騎士の前にでることはなかった。歩く速度や動線はひとの動きに沿っている。魔馬は我儘な気質のものが多く、主従関係を教えるのに時間がかかるのだが…。初対面の騎士相手にも素直に従っている。よく訓練されている。

 むしろ厩舎につながれたメテオールの方がそわそわしていた。突如現れた同類、美しい雌の姿に注意を奪われている。

(…おまえもか)

 俺は俺で、二人と二頭で遠駆けに出かけるデートを想像して今から頬が緩みそうだ。主従そろって仕様のないことだ。

 苦笑まじり、満足の息を吐いたマルクスに周囲の商会メンバーも嬉しそうだ。次期領主のお眼鏡にかなう納品に、ほっと胸を撫で下ろしている。

 手綱を受け取ったところで軍服をまとったアーデルハイト隊長が現れた。情報部から投げつけられた資料の解読を続けるつもりだろう。日曜日だと言うのに、ワーカーホリックにもほどがある。自分自身を棚にあげてそう思うけれども。

「おはようございます。アーデルハイト嬢。朝早くに呼びだしてしまい、申し訳ありません」

「おはようございます。いいえ。出勤時間には余裕があります。なにか御用でしょうか?」

「プレゼントです。受け取っていただけますか?」

 空いた片手を胸にやり、誇らしく肩を張った俺を見て、それから俺が手綱を握った白馬を見て。

 アーデルハイトが紅茶色の瞳を瞬かせる。

「贈り物、ですか」

「はい。俺のメテオールと同じ、魔馬との混血です」

「ミュラー騎士団からの貸与ということでしょうか」

 なるべく優しく、笑顔に伝える。

「あなたが所有する、あなただけの馬となります」

 躊躇、逡巡、…蝸牛の歩み。

 一歩を踏みだしたアーデルハイトは及び腰だった。表情こそ変わってはいないが、珍しくも尻込みしていた。

 飛び上がって喜んでくれる、とまで期待していたわけではない。

 だがアーデルハイト隊長はメテオールのことを褒めてくださっていた。馬は嫌いじゃないはずだ。陸軍より貸与されている軍馬に対してはホースマンシップに基づいて接していた。

 俺たち人間は、人間以外の動物に対して傲慢になりがちだ。独りよがりな愛情は対象にとって時に虐待になりかねない。アーデルハイトは軍事教育によって馬に関する正しい知識を持ち、正しく愛情を傾けていた。『おまえならやれる』。そういう信頼を預け、ブレンの迎えに共に炎のなかへ飛びこませた軍馬には、厩舎、手のひらにのせた角砂糖を与えて労わっていた。アーデルハイトの黒髪は燃えた部分を切っていた。俺がこっそり見守った後ろ姿は少年のようだった…。

 前時代のような鉄の馬が存在しない以上、軍人にとって精強な軍馬は喉から手が出るほど欲しいもののはずだ。騎兵とは、畢竟馬の出来で生死が決まる。

 さらに言うならミュラーの軍馬はカネを積めば必ず手に入るというシロモノでもない。供給は未だ不安定なところがある。マーロウの赤兎馬にあぶみを並べられる軍馬が未だ現れていないように。

 怯みを表に出さないように気をつけながら、もう一押しを加える。

「俺が、あなたのために用意した贈り物です」

 距離を取ったフォーゲルら商会員や騎士たちからは無遠慮な視線が飛んでいる。手土産を喜ばれなかったという失態に動揺が見える。

「世話についての心配は不要です。メテオールと同様、軍部にて管理してもらえるように登録済みです」

「……ありがとうございます」

 おずおずと伸ばされたアーデルハイトの手が白馬の首にふれた。遠慮がちな撫でる手付きに応え、馬もまたアーデルハイトに顔を寄せた。鼻を鳴らす。低い声だ。これは穏やかな気持ちを示している。親愛を示している。

 ─── こいつ、本当に賢いな。

 感心した。

(この場で一番空気を読んでいるんじゃないか?)

 未だ戦場を知らぬ若い白馬に頼もしさを感じてしまうのは、はやり気が過ぎるか?

 アーデルハイトが口を開く。

「名を聞いても?」

 先ほど聞いたばかりの名前を答えた。アーデルハイトもまた、唇をほころばせた。

「どうぞ。呼んでやってください」

「…これからどうぞよろしく。シンメル」

 彼女からこぼれた言葉に俺も笑った。深い安堵、ガッツポーズは腰の後ろに隠れて握った。


  

 厩舎管理者とのやり取りは騎士とフォーゲルらに任せ、警ら任務に向かう。

 日曜日だ。全国労働者の休日のはずだ。しかし隊長のみならず俺も、魔道士部隊タリスマンの誰も彼もがそれぞれの任務中だ。すべてのカタがついた暁には、先だって予定されていた昇進と休暇以上のものを必ずぶんどってやる。

 とはいえ後半戦は文字通り『24時間戦えますか?』状態であった北方遠征中と比較すれば、最前線と第二線が明確に線引きされていて、勤務時間に終わりがあることが救いだ。

 清潔で安全なベッドが官舎には待っていて、軍食堂には温かい食事が三食とれる。度を越えなければ酒も飲めるのだから。


「─── 九時方向!」

「複数! 向かって来ます!」

「こっちだ!」

 キッ、ィン!

 凝固、氷結。

 氷の槍に貫かれた随獣が地に伏す。

 連携、連打、連撃による追撃。

 皇都に出現するキメラの数は減っていない。排除はおぼつかず、機動打撃要員として魔塔の魔道士を借り出し、現状はようやく撃退に至ったところ。

 もう少し余裕があればヒューミントとしての初任務に苦戦しているミヒャエルの応援に人員をまわしてやりたいところだが、隊長職まで合わせて12名の部隊。それが広大な皇都を右に左に走り回っている現状ではなかなか難しい。軍隊は走るのが仕事と言う。そして外部の人間には想像もつかないほど閉鎖的な組織だ。

 さすがにここへミュラーの騎士を投入するのは目立ちすぎる。誰だって自分の懐に手をさしこんでくる見知らぬ他人、しかも武装済みの屈強な男には警戒する。緊迫した情勢下であれば誤射のひとつが起こっても不思議ではない。

 マルクスはなにも全方向に対して戦争を売りたいわけではないのだ。

 自己分析として好戦的ではない。と、考えているが。

 無抵抗主義? 初対面だ。

 どこかで勝負にでる必要はある。早期決着と終結を目的とした場合、二方面、多方面作戦は有効だ。戦線を広げる以上、相応の問題解決能力が求められるにしろ。


 接触を命じたミヒャエルからは、フィッシャー伍長が軍を辞することになったとの報告は受けている。故郷は遠方の小さな村だと言う。たしかに聞いたことのない地名だった。疑わしいが、司法においてグレーはシロだ。

 昨晩のシュタインは手っ取り早く拘引こういんを進めてきた。

「締めあげますか?」

「どんな名目でだ?」

 きっぱりと制止しておいた。疑惑だけでひとを拘束することはできない。ミュラーの看板は乱用してよいものではないし、憲兵隊と争うのは愚策。司法との兼ね合いもある。フィッシャー伍長の優先順位はさほど高くない。ミヒャエルの訓練を兼ねている。教会出身者の可能性という具体的な根拠が飛びだして来たのはむしろ意外だった。

 従来のシュタインはもう少し慎重な男だ。だが処理すべき案件が多すぎる。暴力による即時解決が甘い果実に見えてしまう程度には。一つずつ、確実に。片付けてしまいたいのだろう。

 俺自身、私事もあり手がいっぱいだ。婚約者の体調も心配だ。アーデルハイトの執務机の上には今までなかった水差しが登場していた。舌が乾くのだと言っていた。今の俺が彼女にできることと言ったら、水差しの水の補給ぐらいだ。

 来年春の結婚式に向けての段取りもある。アルニム伯爵令嬢の身柄を確保するためには、一刻も早く法的な根拠が必要だ。なかにはほとんど無意味に思うような形式もある。時間は有限だと言うのに。

 舌打ちはこらえた。

 だが、挨拶に訪れた行政官の肩は握った。

「春とは? 3月か。まさか4月ではあるまいな?」

「ヒエッ…」

 これは断じて圧力ではない。当然の確認だ。それに、家門会議の文官末席に座っていた男だ。震えあがってはいるが、ヘアマンじーさんの発言を面と向かってパワハラ呼ばわりできる猛者だ。大丈夫だろう。

「び、微力ながら全力を尽くします」

「ああ。頼む」

 二人で教会に行く。そして全文3分とかからない誓いの言葉をべればいいだけだろう。何故そんなに時間がかかる?

 さすがに口にはしない。マルクスの理性は理解している。

 アーデルハイト・アルニム伯爵令嬢との婚姻は、俺がミュラー伯となる披露目でもあった。

 ミュラー領地においてこれほど大掛かりな慶事はマクシミリアンが生まれて以降はじめてだ。領主たちがどんなに勇敢に戦い抜いたとしても。伯爵家という家庭単位で見れば悲しいことが続いていた。そこへ飛びこんだ喜ばしい公式ニュースを、内政官たちが政治的に最大限利用しようと動くのは当然だ。

 予算を組む。景観と利便性と兼ねた会場を選定する。料理の品目を考慮し、最適な時期を選ぶ。テーブルに飾られる花、クロスの素材ひとつでさえ入札が行われるだろう。祝いのスピーチを誰に頼むかも重要だ。さらに言うなら、その順番も。

 ドレスとタキシードという新品の衣装一つ、招待客のリストを作るのだって期日から逆算してのスタートをきったばかりだ。これが平民同士であれば、少なくとも男は正装軍服で十分なのだが。招待された同僚たちもそうだ。帝国陸軍では式のあと、部隊の仲間たちが教会の出口アーチ状に剣を構え、左右に並ぶ。花びらのシャワーではなく剣戟のカン、カンッという軽い音によって夫婦となった二人を包んで祝福する。

 もちろんアーデルハイトの意見だって大事に決まっている。

 女性は結婚式に憧れや拘りを持つ者が多いときく。俺は二人で軍服を着て並んだって幸せ者だが、アーデルハイトが望むならばお色直しのドレス変更なんか百回やってくれてもかわまない。そう思えば指揮所としての体裁を整えろと命じられて改修を丸投げされたあばら家の補強軍備を立案するよりもよほどやる気がでてくる。飾るのは俺の花嫁なのだから。


(…花嫁)

 いい響きだ。

 アーデルハイト隊長が俺のものになって、俺がアーデルハイト隊長のものになる。素晴らしい。世界は福音に満ちている。

 ガラにもなくあまずっぱい気持ちが胸にこみあげた。

 

 ただし。

 

 実情はそれ以前の問題だ。

 結婚証明書への署名は行われるだろう。両者の合意に基づき。けれども。

 

『福利厚生にも聞き及びました。望外の厚遇に心からの感謝を』


 違う。そうじゃない。


 凄まじい温度差がそこにはある。

 俺と彼女を行き来したグッピーは腹を見せて浮かぶに違いない。


 幸いに、と言うべきか。不幸にして、と言うべきなのか?

 アーデルハイト隊長がこうなった原因の一つは判明した。


 行政官を退室させたあとのシュタインの口からだ。夜食としての糖分を摂取しながらだ。

「悪いニュースが二つあります」

 聞き覚えしかないフレーズから始まった報告からだ。

「最低と最悪か」

「どちらからがいいですか?」

「最低から頼む」

 先日とは逆の答えを返す。

「『パツキン巨乳の清楚系シスターが嫌いな男なんかいないだろ?』」

「アァ?」

「あなたの発言ですよ。覚えていますか。隊長にバレました」

「……は?」

「酒保で最後の板チョコレートを賭け、部隊でやった総当たり、勝ち抜き戦のカードゲームです。負けた者は恥ずかしい失敗談を告白することになっていたあれです」

「待て。覚えている、が…いや、待て?」

 手のひらを向けて制する。一時停止を申しでる。

 覚えているとも。終えたばかりの遠征の最中にやった会話だ。マルクスの海馬は萎縮とは無縁、たいそうデキがよいのだ。

 当初は『最近やった一番恥ずかしい失敗』の告白が罰ゲームだった。仕事の失敗談が多かった。

 寝ぼけまなこ、非常呼集ラッパに尻を蹴飛ばされ、所定の場所へと駆けだそうとした手に握っていたものが剣ではなく箒だったとか、軍服シャツを裏返しで着ていたことを隊長に指摘されるまで気づかなかったとか。

 そんな可愛いものだ。

 なにしろ雪に覆われた北の大地に閉じこめられて数ヶ月。魔獣討伐の毎日。戦争しかやっていない。

 戦闘中の失敗は羞恥を覚えるよりも冷や汗をかいて、汗をかける命があったことに感謝するようなシロモノだ。

 当然ながらネタは直ぐに尽きた。ここ最近ではなく、過去の話しも出てくる。そして紅一点であるアーデルハイト隊長が休むために天幕をでてしまえば野郎どもの無法地帯と化した。つまりは下世話な、下半身のネタが含まれる。

 ミヒャエルの告白は初恋についてだった。教会が運営する孤児院に居た頃の話しだそうだ。そこに勤めていたシスターは孤児となったミヒャエル、というかミヒャエルたちにとても優しかったそうだ。親切にしてくれたそうだ。

 ちなみに、一回りは年上。相手の正確な年齢は知らないが、ミヒャエルはそのとき12歳。お手伝いと称し、一生懸命好意のアピールを繰り返していたらしい。

(…たしかに恥ずかしいな)

 確実に男としては見られていない。

 子どもと思われていたのだろうが、子どもだろうが男は男。清楚なシスター服からでもわかる、大きな胸にドキドキしていたとの告解は三連敗の末に吐きだされた。どこかで勝負に出なければならないのに、ミヒャエルはより大きな確信を得ようとしてさらなる情報を求め、躊躇してしまう悪癖があった。

 とはいえ。そんな女がただでさえ不安定な足元の思春期時代、傍にいて励ましてくれれば惚れてもおかしくない。正常な反応だと思う。オスカーだって「そうかい、そうかい」と微笑ましく見守っていた。

 驚いていたのはモーリッツくらいだ。ペーターは、あれは、気づいていたな。

 シュタインが告げたのは、ブレンにからかわれ、落ちこんでいるミヒャエルに俺がかけた慰めの言葉である。


「パツキン巨乳の清楚系シスターが嫌いな男なんかいないだろ?」


 意外だという顔をしたのはエメットだった。

「マルクス副官の好みは巨乳でしたっけ?」

 カチンときたのは、こいつが隊長に気があるからだ。他の誰に指摘されても腹はたたなかった。ニヤリと笑って「一般論だ」と返しただろう。

 アーデルハイト隊長の胸は慎ましく、身軽で、被弾面積が少ないのだ。俺は答えた。酒は入っていなかったが、戦局に、眺めるだけの隊長の後ろ姿に、煮詰まっていたのは事実だ。

「ハッ。好きな女の胸についてりゃなんだって尊いだろ。重要なのは、俺がそれにさわれるかどうかだ」


 走馬灯のように流れる記憶。

 ドッと汗が噴きだした。

 

「誰が、…いや、どいつだ。どこまでだ?」

「ブレン准尉がもらしました。ジェラートをベンチに並んで食べたときだそうです。全部です。ぺらぺらと最後まで吐いたそうです」

「締める」

 暗黙の紳士協定ってものがあるだろ。あいつも男ならそれぐらいはわかるだろ。わからないのがブレン君だ。つまりは口を滑らせた俺の失態だ。

「営庭30周を命じてきました。気持ちはわかりますが、首は締めないでください。息の根はとめないでください。貴重な戦力です。PTSDの診断が下りた状態でそれをやれば、深刻なパワハラと受け止められてあなたの軍歴に傷がつく恐れもあります」

 幼馴染はあくまでも俺を心配していた。

「有益な情報も寄越しました。そこは評価してもよいと思いますね」

「なんだ?」

「それを聞いたアーデルハイト隊長が尋ねたそうです。『マルクスは私のどこが好きなんだろう?』と大変素直に」

「……なんと答えた?」

「『強いからじゃないですか』」

「……っっ!」

 青筋が立った。情景が目に浮かぶようだ。

 ブレン。あの野郎。あとで覚えていろよ。こきつかってやる。PTSDがどうした。火炎術式にすべての魔力を絞りつくさせてやる。そのうえで苦手な白兵戦訓練を課してやる!

「僕らは過去の経験に答えを探す傾向があります。前はこうだったから今回も一緒だろうと考えます。多くのサンプルを記憶に持つ経験豊富な恋愛強者であれば、正解へと辿り着くのも容易でしょう。自身の心と向き合うこともできるでしょう。そこで聞くんですが。マルクス、あなた、アーデルハイト隊長が恋愛経験豊富だと思いますか」

「いいや。まったく」

 こればかりは自信を持って言える。

「僕もそう思います。おそらく隊長はたったひとつの経験から答えを導きだしました。婚約者のスカートに隠れた王子サマと言う最低のサンプルからです」

「道順はわかる。だがどうしてそうなった」

 三段論法の結論だけが飛躍しすぎじゃないか?

「あなたのことは信じているんでしょう。あなたが自分を好きだということは理解していますよ」

「…そうだな…」

 遠い目になってしまう。

 救いには程遠い。

 飼い犬の愛情を疑う飼い主はあまりいないからだ。

「俺のことも大好きだと言ってくれるからな」

 照れも臆面もなく。自信を持って断言してくださるわけだ。



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こんなにたくさんの小説がアップされる中で読んでくださり、本当にありがとうございます。

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