悪役令嬢と円卓会議【5】
誤字のご指摘ありがとうございました!
『わたしはヘマをしました。』
顔にそう書いてある金髪の准尉が部隊待機所ドアを、そっとのぞきこむように開けたとき、ちょうどそちらを見ていたオスカーはばっちりと眼があった。
昼飯用に屋台で買ってきたサンドイッチを片手にだ。
「おう。ご苦労さん」
「はい…。ただいま戻りました。…あの、マルクス大尉たちは…?」
「まだだ。昼に出たのが遅かったからな。戻ってくんのはもう少しかかるだろ」
マルクス一人ならともかく、隊長といっしょだ。立ったままかきこんだり、職務がたてこんでいるからと三秒飯ゼリーを吸って終わりの昼食で済ませたりはしないだろう。嬢ちゃんの前でそれをやると、彼女が真似する危険がある。それを、ヤツはもう知っているのだ。
締め切り前の副官がペンを止めず角砂糖の瓶を傾け、上向いた口に受けとめる雑な糖分補給の姿に、自分もやってみようとして上手く受けとめられず机に零したのがアーデルハイトだ。ペンを動かしながらだ。意外と難易度は高い。机に転がった角砂糖を慌てて拾って、辺りをうかがっていた。マルクスの悪癖を知るオスカーはもちろん見なかったフリをしてやった。書類に集中するフリだ。ほっとした少女は拾った角砂糖を指につまんで口に運んでいた。甘い味に頬を緩めていた。
当時はきっと、部隊の誰に言っても信じやしなかっただろう。キリッとした真顔で周りを観察する12歳の部隊長は、強い意志という名の頑固さと素直な柔軟さ双方を持ち合わせていた。明敏な頭脳の持ち主でありながら、幼い子どもとしての一面を持っていた。
……そういえば当時のマルクスもまた、19歳か。青臭い十代であったわけだ。
既婚者が幸せ太りしやすい理由を、独身貴族を謳っていたグッドルッキングガイな副官もまた実感しているに違いない。
まぁ、それよりも幸せを噛みしめるのが先か。
(ダチや恋人、家族と笑って食う飯ってのはなんでああも美味いのかね?)
軍食堂とはいえ、食後のコーヒーまでたっぷりと。今頃は休憩時間いっぱいに恋人との語らいを楽しもうとしているだろう。人生を謳歌するのは生き残った者の特権であり、義務でもある。
しかしおそらくは良くない報告を抱え、顔色を悪くしている十六歳の准尉が縮こまったまま彼らを待つのはさすがに哀れである。
「コーヒーでも飲んで待つか? ついでに煎れてやる。ミルクと砂糖に映像もあるぞ?」
「あ、ありがとうございます。……映像?」
「鑑賞中だ」
顎をしゃくり、談話室を指し示す。留守番役のデニス准尉に片手を上げて奥へ。ソファとテーブル、映像再生装置が設置された室内には二人の男がいて、素通りしたオスカーは魔石コンロに湯を沸かす。
コートを脱いだミヒャエルが入室してきたタイミングは、ちょうどリピート再生の冒頭部分だった。
「お、信号機トリオのパツキン坊ちゃんか。邪魔してんぜ」
皇都衛兵隊の制服に驚きつつも顎を引いたミヒャエルが敬礼する。街中と同じように、礼儀正しく。笑った男からは慇懃無礼と紙一重の丁寧な返礼。
ピーナッツの殻を剥く手をとめないブレン少尉は雑な挨拶を寄越す。
「ミヒャエルじゃん。お帰り。久しぶり。一週間ぶりだっけ?」
「そうだね。君が営倉に入って以来かな。元気そうでなによりだよ。……こちらは?」
「ベックマンさん。皇都衛兵隊のひと。副長のトモダチだってさ」
ブレンの説明に不足はあっても悪気はない。だから何度注意しても繰り返すのだが。
そういうことが聞きたいんじゃないとでも言いたげな微妙なミヒャエルの視線に対し、せっせと殻を剥いて積み上げたピーナッツの皿を差しだす。
「食べる?」
澄んだ目の善意である。ブレンにとって食べ物を、自分のものを分け与える行動は彼にとって最大の厚意の表れだった。
(ブルクハルトの兄ちゃんがここに居れば涙ぐんだかもなぁ…)
感動のあまりだ。立派になって、と喜んだに違いない。ひとの心を慮れる子に育って、の意味合いだ。背後の会話を耳に拾いつつ、オスカーは部隊の共有冷蔵庫からミルクを取りだした。若い連中のやり取りにいちいち突っ込んだりはしない。それに高位貴族の連中はどこかなにかがズレている。知性やら教養やらは高いことが多いのだが、生まれ育った環境による常識の差が折々「やあ」とさも当然のように姿を現し、許可も取らずに隣へと腰をおろすのだ。
「ぃ、いいよ。僕、昼を食べてきたばかりだから。おなかはすいてないよ。ありがとう。君が食べなよ」
「そっか」
「んじゃ、おじさんが貰おうかな」
「ダメ、自分でやって」
さっと手を伸ばし、ぱっと皿を隠す連中は何をじゃれあっているのやら。初対面のはずだが、物怖じしないブレンは通常運転だ。
「ブレン。ベックマン。コーヒーのおかわりは?」
「飲みます」
「貰う」
遠慮のない即答に肩をすくめ、四人分のコーヒー豆を用意する。
「カップぐらいは持って来い」
「はーい」
「ほいよ」
四人掛けのソファが三方に配置された長方形テーブル上の再生装置に映し出されているのは、王立学園で行われた天覧試合の様子だった。
「ほらよ。熱いから気をつけろよ」
最初は気まずさから画像を注視していたミヒャエルは、今は興味深そうに学生たちの試合を観察している。声をかけて、注意をかけておく。
「ありがとうございます。…参考になります」
「無駄な詠唱が多いよ。動きも遅いしさ」
「そりゃ実際の戦場じゃあ無詠唱が基本だからな」
すでに視聴済みのブレンとベックマンの返答はつれない。
「でも、基本と基礎に忠実です。様々な連立術式に挑戦しようとする意気込みも感じます」
同年代の学生たちの戦いぶりに目を輝かせているミヒャエルにブレンは唇をとがらせ不満そうだ。
「そんなのごく一部じゃん。俺のほうが強いよ?」
「……そりゃあなぁ」
オスカーとベックマンは顔を見合わせるしかない。
体操服の代わりなのか、天覧試合に合わせたのだろうが、軍服のような衣服をまとった少年が二人、映像のなかで剣をぶつけあっていた。鍔迫り合い、劣勢だった小柄なほうが手首をまわして力を流す。一瞬だけ手のひらから力を抜き、柄を回して持ち替え、相手の剣を跳ね上げる。すかさず喉元へと突きつけ─── 「まいった」の宣言。逆転劇に場が沸いた。
歓声を背景音楽に、オスカーはようやくハムとレタスとチーズのサンドイッチにかぶりつく。今日はとにかく忙しかった。キメラ発見の情報に右へ左へと皇都を走り回る羽目になっていたからだ。
次の試合は剣士スタイルと魔道士スタイルの対戦だった。
爆裂術式の連発に距離をとりたい魔道士と、近づきたい剣士の攻防だ。両手を前方に突きだし詠唱を続ける魔道士に対し、フットワークを活かした剣士が闘技場をフルに使い、駈けめぐる。近づいては牽制されて離れ、……つまり。
「だるい」
つまらない、と大仰なため息をついたブレンを、ブラックコーヒー片手のベックマンは笑いもたしなめもしなかった。
「魔道士部隊と比べりゃあたいていの奴らの動きはハエが止まってるようなもんだろ」
ただの事実だからだ。
とはいえ“学生さん”のレベルではこんなもの。学園では騎士道精神すら教えているそうだ。道理で綺麗な戦いぶりだ。法も知らずに戦争ができないのと同じように、人道主義の大切さを知っておくのは大事なことだ。領地に帰って魔獣討伐の陣頭指揮に立てば小便をもらして腰を抜かすかもしれない。すでにその覚悟がある者もいるにはいるのだろうが…。
「ちまちま小技ばっか。集中、発現までの時間がかかりすぎ。隙だらけじゃん」
魔道士塔にて50年に一度の天才と称えられた少尉の言葉は同じ年の少年たちに辛辣だった。
たしかにブレンであれば闘技場と観客席の間に張られた防御膜をブチ抜いて炎の柱を打ち立てるだろう。ある種の狂人がそうであるように、一瞬で自分の世界へとダイブし、体内の魔力機構を全力稼動させることも可能だ。能力と人格の質量は比例しないのだから。
「副官ならここでもう「足を止めるな、アホウ!」って俺のこと蹴って…あ、見る? 面白いのはこの先でさ、」
飽きたのだろう。そして自分の台詞に思いついたのだろう。面白いものを友人と共有したい一心に再生機の制御コントローラーを手にしたブレンが早送り。良かれと思ってやっているからタチが悪いのだが、残念ながら公務員の休憩時間も限られていた。
「戻った」
隊長と副官がそろって帰還だ。
「ぁ、マルクス大尉、」
声をあげたミヒャエルを遮り。立ち上がった挨拶はベックマンが先だった。部外者がここにいる理由を述べる。
「皇都衛兵隊のベックマンです。タリスマンとの警ら任務の打ち合わせに、オーマン曹長を伺っております」
「ご苦労様です」
「隊長もいっしょに見ましょうよ。これ、天覧試合の記録です」
空気が読めないのか、読むつもりがないのか。アーデルハイトの登場にミヒャエルがはしゃいだ声をあげる。
「天覧試合?」
「王立学園で去年やったやつです。隊長がでてます」
ああ、あれか。という納得顔を見せたアーデルハイトの返事を待たず。画像のなか、彼女の名が呼ばれた。
「仕事はどうした」
「まだ休憩時間です」
眉間にシワを寄せたマルクスが大股、ブレンに近づいたのはコントローラーを取り上げ、映像を停止するためだろう。しかし。
「懐かしいな」
「な、懐かしい、ですか」
「もう一年が経ったんだな」
穏やかな表情を見せる嬢ちゃんを制止できる男はこの場にいない。
どうぞどうぞと一番いい席をブレンに譲られ、素直に座る。差しだされたピーナッツに礼を言って、躊躇なく一粒を口にする。もぐもぐごくん、と行儀良く飲みこんでから。テーブル上の水差しに極自然と手を伸ばしている。
「マルクス?」
言外、一緒に見ようと誘われた副官の行動など決まりきっている。
大人気ないことにアーデルハイトとブレンの間にグイグイと割って入り、罪のない少尉を無言に追いだしやがった。ブレンのヤツに様々な罪状があるのはたしかだが、少なくとも今ここでは無罪だった。三人が座っても余裕がある大きなソファだ。身長が高く、長い手足を持て余し気味のマルクスはともかく、ブレンは細身だし、嬢ちゃんはもっと小柄だ。余裕をもって座れるだろうに。
後方彼氏面野郎に追いだされたブレンは「えー…」と暫しの不満顔を見せたものの。さほど気にしたふうもなく、ピーナッツの皿とマグカップを持ってミヒャエルの隣へと移動した。
一人掛けソファを占拠する俺は悠々と食事の続きだ。
おーおー、若いねぇという表情のベックマンに、そうか俺もこんなツラぁしてんだな、という自覚をする。
六角形の記録媒体が記憶する過去。ちょうど一年前の天覧試合。
サプライズで登場した現役軍人、アーデルハイト・アルニム伯爵令嬢の紹介アナウンスが一通り流れ。
闘技場に対峙する対戦者たちの全身像がまずは映る。
片や魔道士仕様の野戦服。片や天覧試合のために新調された騎士服。規律と統制を絵に描いたようなデザインに、それぞれの所属を表す肩章、徽章が彩りを添える。
足元から頭部のアップへ。艶やかな黒髪と華やかな金髪が風に揺れる。役者たる二人の容貌はそろって秀麗だった。顎を引いて表情の動かないアーデルハイトに対し、顎を上げて大上段に構えたフランツ王子は自信に満ちて笑っていた。
対比のカメラワークはなかなか秀逸だった。最小化された撮影用魔術式を飛ばす手際はおそらくプロの手によるもの。なんなら皇帝陛下への献上も想定されていたのかもしれない。
開始の合図からわずか五秒後にフランツ王子が吹っ飛んでいなければ。
今までの引きはなんだったのか。伯仲する実力者二人がぶつかりあう前フリだっただろうに。
「……うわ」
六人の中で声をあげたのは、初見のミヒャエルだけだった。
記録媒体としては初見だが、実体験済みのアーデルハイトは本人が言うところの懐かしさを感じている、ようにも見える。
「あの、隊長、失礼ですが…、手加減しようとは思われなかったんですか」
映像とアーデルハイトへ交互、視線を動かすミヒャエルからの問いに対し。
「三対一で近衛兵を倒せるならば無詠唱は基本だろう」
多方面より異口同音の指摘をイヤになるほど受けてきたのだろう嬢ちゃんはそれでも生真面目に答えた。
ベックマンからの訂正が入る。
「第五王子殿下が優勝した天覧試合は多対一の戦闘ではなく、一対一の勝ち抜き戦でしたが? 訓練時の話でしょうか?」
一瞬だけ。おかしいな?という表情を見せた嬢ちゃんの立ち直りは早い。
「情報の伝達に齟齬があったようだ」
「はぁ…」
まぁ、たしかに。挑発の様子を見る限り。手加減するつもりはあったのだろう。そうでなければ倒れた王子を蹴り飛ばして闘技場の外へ押しだせばそれで試合終了だ。脳を揺らしはしたが、外傷は少ない。
プライドはズタズタだろうが、必要以上の恥をかいたのは現役軍人の胸を借りるつもりで、程度の謙虚さを持って挑まなかった王子が悪い。自分の代わりに戦地に赴いた婚約者の戦績票くらいは目を通しているだろうに。……いるよな?
ちょっとゾッとした。
「フランツ殿下はなんで剣を構えてなかったんでしょうねぇ?」
「そりゃあおまえ…男の見栄だよ」
答えを持っていないアーデルハイトに代わって口を開いたのはベックマンだった。
「灰色熊の張り手が迫っているのに?」
「危機管理意識のないヤツはびっくりするぐらいすぐ死ぬよな…」
ごもっとも。
無手のアーデルハイトに対し、フランツ王子には剣が支給されていた。軍人対学生のハンデは与えられていた。だが帯剣の状態だ。鯉口すら切っておらず、なんなら柄に手をやる様子もなかった。同い年の婚約者相手、一人だけ武器を手にするのを格好悪いと考えていたのかもしれない。
いやいや。悪いことは言わんから最初から構えておけよ。
未知の、しかも格上との戦闘だろ?と忠告したい。
「隊長は緒戦の猛攻から力尽きての惜敗、あたりを演出するつもりだったんでしょうがね」
「そうだ。…そうなんだ。オスカー副長。私は様子見でいれた当て身のつもりだった」
言外、こんなに景気良く吹っ飛ぶとは思わなかったと。
わかってくれるか、と肯く可愛らしくも恐ろしい悪役令嬢サマは自分の力を今ひとつ理解していない。これは周りが悪い、環境が悪い。わずか10歳の頃より王宮の研究棟に閉じこめられ、狭い戦場に生きてきた彼女の比較対象が俺たちしかいないということが問題だ。
嬢ちゃんの癖や呼吸を読むことに慣れた俺や、反射神経にバケモノじみたマルクスなら避けて反撃していた。なにしろ野性の猿、どころか。特定討伐対象である紅猿よりも速く動けるヤツだ。どういう機動力をしてやがるのか。嬢ちゃんと同じ戦法をとった可能性もある。互いにフルスロットルで踏みこんで、闘技場中央にガチンコの接近戦をやっていた可能性を考えてげんなりした。
重いパンチ、鋭いキック、掴めば投げる。締める。折る。どっちもどっちだ。目の前のソファに並んで座る二人ならばやりかねない。マルクスは心からアーデルハイトを愛しているが、それは彼女が檻のなかで出会う灰色熊であり、黒豹であるという事実を否定しているわけではない。手を抜けば喰われる。体格差は身体能力向上の術式に補われているのだから。思考の躊躇までもを削ぎ落としたアーデルハイトは時にマルクスよりも速く動くのだから。
フリードリヒやシュタインたちは危なげなく、とまではいかずとも追撃まで回避したはずだ。新兵以外の、俺たち7人ならば、驕りではなくそれができた。
リュデガー少尉やデニス准尉ならば「はじめ」の合図前からガチガチに警戒、探索術式を全方位稼動。軌道打撃戦を想定し、回避と防御に専念しただろう。
エメット准尉はそもそも戦わない。闘技場に上がる前に「まいりました」と両手を上げている。あいつはそういうヤツだ。世の中には逃げてもよい相手がいることを、身をもってミヒャエルたちに教えてくれるよい先輩である。
神童と称された学園のプリンス相手だ。座学、実技ともに学年トップレベルの成績。王族だけあって魔力素養も秀でている。おまけに立ち居振る舞いには余裕があった。
学校に通ったことのない伯爵令嬢が王子の力量を誤解したのは無理もないことだ。しょうがない。
オスカーとしてはそう思うし、周りの誰もが嬢ちゃんが悪いと指差したところで、マルクスは婚約者に代わって喧嘩を買うだろう。寝言は寝て言え、なんなら貴様が代わりにやれと。淑女に代わり、決闘の手袋を受けて立つ騎士のように。悪女の猟犬は爪をとぎ、恐めず臆せず闘技場へ降り立つだろう。
「講師陣は頭を抱えたでしょうね」
「知ったことか」
ベックマンの所感に、熱のない調子で相槌をうったのはマルクスだ。
華々しい魔力戦を想定し、なんなら口上を述べようとした王子様は、開始の合図とともに右足にのみ筋力強化の術式をながしこみ、一瞬で距離で詰めた婚約者に対応できなかった。
学園で経験学習を積んできたと言っても、最前線の塹壕でもまれ、磨かれた格闘戦技術が想定されていたとも思えない。王立学園はフリードリヒが通った軍学校ではない。経験学習と講義形式の学科の割合は1:9というところ。
つまり王子は机上の空論を安全で清潔な学び舎に語る学生さんである。
対峙する嬢ちゃんは、密林、雪原エトセトラの過酷な環境下、不足しがちな装備、食料をもって言葉の通じぬ魔獣を狩る軍人令嬢である。
特定の状況下において『話せばわかる』は幻獣種よりも希少な幻想だ。
快晴に響き渡る打撃音。
軽快なワンターンキル。
キラッキラした目に眺めるブレンはこの場面が一番のお気に入りらしい。最初に見たときなど、手を叩いて痛快を叫んでいた。
自信と自負に満ちていた、張りぼての王子様が無様にゴロゴロと闘技場を転がるザマを指差し、アッハハハハ!と笑っていた。
「王子もなかなか演出家だなぁと思った」
「ええ。突然の呼び出しにも関わらず、隊長は頑張りました」
「苦戦からの逆転という展開はまぁ…王道ですがねぇ」
「ふん。本心から殺意があったのならこめかみ目掛け、掌の付け根を振り下ろしている。隊長は充分手加減しているだろう。第五王子が無能すぎただけだ」
ベックマンの言葉に鼻を鳴らし、感想を述べるマルクスは隊長の元・婚約者を芯から軽蔑しきっている。
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