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悪役令嬢と円卓会議【4】


 安堵混じりの敬礼に拝命。

「少々の無茶であれば許可する。営倉だろうが王宮だろうが迎えに行ってやる」

「ハハ…」

 気遣いめいた台詞セリフには乾いた笑いしか出てこない。

 マルクス大尉の言う少々の無茶とは皇都治安維持法に反した危険物持込のことだろうか。それとも王立学園に火災を起こすことだろうか。

 どちらにしろ営倉に放りこまれたり王宮に軟禁されるというのは少々の無茶どころではなく、たいそうな非常事態ですと返したい。

 ほんの二、三日前、どちらへも打通だつうを試み成功、ブレン少尉、アーデルハイト隊長を奪還済みのマルクス大尉が言うと重みがあるし、冗談には聞こえなかった。いや、たぶん本気で言っている。

 大尉は王族相手、本気で戦争を買うつもりなんだなぁと思えば素直にすごいと思う。

 自分の席に着き、報告書の作成に取りかかる。

 ちら、と目をやった稀有なブロンド、グリーンアイズの上官は分厚い辞書を片手、情報部から持ちこまれた文書の翻訳中だった。公用語だけでも大変なのに、少なくとも三ヶ国語が混在とは!

 怖いひとではあるのだけれども。敏腕であることは間違いない。

 上へ行くためには戦闘能力だけではなく賢さやコミュニケーション技術など、オールマイティーな能力が必要なのだと痛感させられる。横切ろうとする好機チャンスの女神さまの手をすかさず掴みとる意欲はなにより重要に決まっている。掴んだ手の甲に口づけ、愛を乞うマルクス大尉の容貌の麗しさ、体躯の精悍さときたら女神さまだって微笑まずにはいられないだろう。


 『君のためなら世界を敵にまわしたってかまわない』とは『ハートに火をつけて』のなかで王子がヒロインに告げた口説き文句だが…。

 現実問題、それを許容できる人類などこの世にはほとんど存在しない。王様だって、王子様だって同じことだ。幾度かの世界大戦を省みればよい。神話が物語るトロイア戦争の結末は誰も幸せにしなかった。たった一人の女を奪った王子のために、あまねく英雄が天使様の翼のしたへ招かれることになった。

 皇都騎士団管轄の営倉だろうが、欧州大陸に覇を競う帝国の王宮だろうが乗りこんで目的を達する男ですら、……あるいは個人の卑小さを自覚する男であるからこそ。


 戦うために、争うために、競うために。


 マルクス大尉は爵位まで継いできた。酒場でクダをまく酔客の戯言ではない。たった8日間にミュラー騎士団という最強の後ろ盾を手に入れて戻ってきた。

 帝国陸軍大尉として積み上げてきた実績に加え、爵位という体裁を整え、婚約破棄された伯爵令嬢にすかさずのプロポーズ。指輪を受け取った隊長からは合意を取り付け済み。

 慰留に縋る元婚約者の母親、つまりは王妃様はパワーランチによる会談にて引き剥がし済み。

 高貴なる雲上人であられる王妃陛下からの嫌がらせは熨斗をつけてお返しの真っ最中。

 夏の卒業を繰り上げ、春には兵役に就く第五王子の僕らの部隊への入隊は謹んでお断り済み。

 人事については軍務尚書閣下のお墨付きだ。フリードリヒ小隊長も、どこで、誰にとは言わないが釘を刺してきたそうだ。陸軍省は軍政と人事を司り、軍令部は作戦と指揮を司る。横槍を弾く盾の準備は充分だそう。

 そうしてカジノデートに出かけたと思えば、強硬な破談反対派であったアーデルハイト隊長の父親からも同意書を徴集済み。おそらくは大尉本人が合法的なイカサマだと言うカウンティングに分捕ってきたのだろう。

 おまけに昨日の締めは内閣宰相閣下同席のもと、自身の父親との婚姻挨拶とくる。鍋のシメは麺にするか米にするかぐらいの気軽さに見えるが、強行軍での段取りを考えると「いいから今日はもう帰って寝てください」とお願いしたくなる。

 ここまでに要した期間が二週間。アーデルハイト隊長が婚約破棄された夜からだ。ちょっとどうかしてるとぼやきたくなる僕は英雄にはなれない。

 どれか一つであってもミヒャエルには困難だ。「やれ」と命じられるぐらいなら、隊長の指揮下、幻獣種相手に突撃する方がマシ。

 だがマルクス大尉は平行して仕事もしている。恐るべきマルチタスクの能力。強固な意欲。欲しいものは欲しい。奪われたくない。そのために。為すべきことを一歩ずつ。進む。歩き、走り。登ってゆく。望む未来を見据えて。─── こういう人間が貴族になって領地や領民を、複雑怪奇な南方の国境線を守るのだろう。村に暮らしていた頃は意識したこともなかったけれども。


 ミヒャエルは実感している。

 僕は今、勇者になれるひとを目の前にしている。


 おまけに、…なんてことだろう。大尉は笑っていた。

 文句もジョークも口にしながら楽しそうに。好戦的に。婚約者を見つめて幸せそうに。


 だからモーリッツは言う。今のマルクス大尉の方が好きだと。もちろん今までの副官が嫌いだったわけでもないけれども。わかる。マルクスは怖い上官だ。気前はいいし、融通が利かないわけではない。ただし愛嬌や愛想は皆無。少なくとも、ミヒャエルら部下には見せてこない。

 尊大な自信家でもある。口先だけではない。特定討伐対象を討ち取れるほどの実力者。恐れられて一目置かれ、敬われながら距離をとられるタイプの上官だ。新兵が馴れ馴れしく話しかけられる尉官ではない。目的のためには正論も脅迫も使いこなす。なんなら暴力をひけらかしもする。そしてどこか厭世的な雰囲気を漂わせていた。


 合理的で、理性的。

 そんな副官が隊長の前にでたあの夜に。

 きっと、なにかが生まれて、なにかが壊れたのだ。



 ……恋愛経験のないミヒャエルとしては想像するしかないが。

 書きあがった報告書を手渡し、新人らしく手伝いを申し出る。

「休息日だ。ミヒャエル准尉。休めるときに休んでおけ」

 上官らからのありがたいお言葉である。曜日どころか日付の感覚すら薄れた前線とは違うらしい。ちょっと落ち着かない。まぁ彼らのように語学に秀でているわけではない。できることと言えば書類の仕分けとラベル張りぐらいだろう。帝国語の読み書きに不自由せずにいられるのは孤児院の基礎教育の賜物である。

「明日の昼は俺も隊長とともに軍食堂で食事をとる。反応を確かめて来い」

 本ではなく。悪役令嬢本人を登場させるということか。

 ただし隊長との直接接触は許さないということらしい。

 命令を反芻し、敬礼に場を辞した。


 

 一歩を外に出れば冷たい風が吹いている。北方よりはマシとはいえ、足元からは底冷えするような寒気かんきが体温を寄越せと軍用ブーツを這いのぼってくる。

 両手に口元を覆い、手袋の上から白い息を吹きかけ、ささやかな温もりを味わう。

 あの夜みんなで歩いた官舎への道を辿る。記憶を辿る。


 抜き身の剣を下げた本来の戦場ではなく。誰も彼もが着飾ったきらびやかな祝賀の席で。今まさに王子様から弾劾されている孤立無援の令嬢を庇うなんてなかなかできることじゃないよ、とは今さらだけれども。感嘆符のため息がもれる。


 少なくともミヒャエルは動けなかった。頭が真っ白になっていた。離宮とはいえ。王族が所有する建物だ。栄誉を受けると招待されたって緊張しかなかった。モーリッツだって、ペーターだって、同じようなものだ。初めてまとう礼服が窮屈で、お互い水を飲むのも苦労した。ブレンはまぁ…ブレンだったけれども。部隊の皆が一緒にいてくれて、話しかけてくれていなければ歩くだけで足がもつれていたに違いない。

 だから隊長に対する叱責が突然始まったときも、隣にいたエメット准尉に無言、肩を叩かれて場所を移動するのが精一杯だった。人混みに紛れながら、無意識、喉の魔石チョーカーに手でふれて安心していた。ダンスホール中央にぽっかりと開いた空白にまっすぐ立ったアーデルハイト隊長の背中を見つめることしかできなかった。

 隊長がどんな顔をしていたのかはわからない。

 背中、声はいつもどおりだった。だからきっと表情だっていつもどおり、人形のようだったんじゃないかと思うのだ。

 彼女を中心に防御を固め会場の外に出て…慰める言葉はぐるぐると頭を回るのに、誰も口を開くことができなかった。


 マルクス大尉以外は、誰も。


 官舎への帰り道の別れ際。今の場所だ。立ち止まる。

 隊長はどんな気持ちだったんだろう。どんなカオをしていたんだろう。想像してみる。下っ端で新人で若造で…つまりは自分のことで精一杯だったミヒャエルにはわからない。思い出せない。ちゃんと見てもいなかった。彼女が僕らのところへ戻ってきたときに、せめて声だけでもかけていれば…。そういう悔いはある。けれど同じくらい。それ以上に。大勢に囲まれた吊るし上げの舞台に堂々と反論し、堂々と歩いて退場した隊長なのだから大丈夫だろうという信頼もあるのだ。彼女が暗い部屋に膝を抱え、しくしくと泣き濡れている姿は想像できなかった。

 本当のところはわからない。考えてみれば、僕は職務から離れた彼女を知らない。私服姿の彼女を見たことがない。それがスカートなのか、ズボンなのか、どちらを好むのかも。

 アーデルハイト・アルニム少佐はもともと感情豊かとは言いがたい人間だ。精神に安定しているとでも言えばいいのか。ペンを走らせているときは淡々としていて、気分で部下を怒鳴りつけたり、個人的な使い走りを命じたりするような暴君ではなかった。それでいて戦端が開かれれば指揮官先頭の勇猛果敢な戦いぶり。

 隊長がすごいのは、魔道刃と指揮棒を両方いっぺんにふれるところだ。ついていくだけで精一杯の新任准尉から見れば、脳内にどういう情報処理が行われればそんなことができるのか教示願いたいところだ。

 シュタイン中尉に言わせれば、部下に嫉妬しない上官は魔道士には貴重とのこと。それな、とエメット准尉も同意していた。控えめに、僕も。

 本来の歩兵であればミヒャエルの階級はせいぜい一等兵だろうに、戦闘魔道士の肩書きだけで尉官からのスタートだ。妬みや嫉みがないはずがない。ガチャなら星一つ、そこにシールの星を足しただけ、とはエメット准尉独特の表現だ。

 アーデルハイト隊長が良い婚約者であったかどうかは知らないが、彼女は控えめに言って良い上官であった。

 教会の孤児院育ちの僕ら三人を、侯爵家の嫡男であるブレン・ブラートフィッシュとまったく同等に扱った。

 ぴよぴよと鳴いて、卵の殻をかぶった新品准尉が四人。もれなくそういう扱いだ。隊長がそうであれば魔道士部隊タリスマンの下は従う。

 アーデルハイト隊長は仲間を見捨てない。自ら放った炎に囲まれて取り残されたブレン准尉のもとにすら赴いた。軍馬に跨ったかと思えば一瞬だ。「わかった」とモーリッツからの報告にうなずき。「迎えに行って来る」の即答。「貴官らは本隊と合流しろ」…えっ? クエスチョンマークの嵐に足をとられる僕らをオスカー曹長に任せ、置き去り、隊長はもう駆け出していた。驚く暇もない。首根っこを引っつかまれた仔猫のようにブレンを連れて、帰ってきたときには二人、煤塗れだった。軽い火傷はあったけれど、大きな怪我はなかった。アーデルハイト隊長は副官と副長からのお小言にはおとなしく耳を傾け、反省する素振りも見せていた。けれど。同じことがあれば同じように炎へ飛びこむんだろう。そしてそれは僕らの誰であっても同じなんだろう。


 赴任時の顔合わせに「なんでこんな小さな子が戦場に?」と首をかしげ、無意識侮った少女は、兵士が夢見る理想の上官だった。

 そうであるように育てられたから、なんて当時の僕は知らなくて。ただ、感動に胸をふるわせていた。


 世界に三人きりだと頑なに思いこんでいた僕らを、魔道士部隊タリスマンは迎え入れてくれた。


 ミヒャエルが一番許せないのは、第五王子がアーデルハイト隊長を責める理由に彼女の仕事ぶりをあげたことだ。

 王族の目が届かないのをいいことに、だとか。第五王子殿下は第四王子様が僕らの部隊にいることを綺麗さっぱり忘れているようだ。ミヒャエルはアーデルハイト少佐が理不尽だと感じたことはない。命令は、するだろう。だってそれが上官だ。指揮官だ。謙虚で奥ゆかしく、控えめな人格は人間としての美徳であるかもしれないが、一兵士の立場からすれば悪夢でしかない。お山の大将の方がよほどマシだ。僕らのために戦う上司であって欲しい。

 兵士が欲しいのは命令だ。誤解しようもないほど明確な命令を。自信に満ちて断言して欲しい。信じるしかないから。従うしかないから。戦うしかないから。ならば希望をくれ。勝たせてくれ。僕らを生きて連れて帰ってくれ。

 それが本音だろう。

 部下への横暴な振る舞いだの、上官への侮辱だの。何を言っているのか。第一、僕らの隊長は、王族の目の前だってやる。

 

 パーティでの衝撃が去ったあと。哨戒しながら夜道を行軍し、冷静になればなるほど、猛烈な怒りがこみ上げてきた。

 食ってかかったモーリッツほど表面的ではないが、ペーターだって怒っていた。ミヒャエルだってそうだ。なんで、どうして。唇を噛んでいた。だからつい。待機、解散を命じられた足を止めてしまった。マルクス大尉に問いかけていた。問い詰めていたような気もする。

 このままでいいのかと。

 暴言に隊長を責め、浮気相手を庇いながらなんて身勝手な婚約破棄を突きつけた王子をこのままにして良いのかと。

 口にしながら理解もしていた。王族相手、なにをどうするって言うんだ? 粛々と拝命したアーデルハイト隊長が正しいのだろう。それでも悔しかった。

 ミヒャエルは、悔しかったのだ。そして悲しかった。

 頑張った人間が報われないことに途轍もない無力感を感じていた。それは村を襲った魔獣の群れと同じ理不尽の具現化。不安と不満に言葉を投げつければ投げつけるほど、何故かマルクス大尉は深く笑った。

 連中には相応の報いを、と。瞳と唇が三日月を描き。夜の陰影が上官に凄惨な印象を与えた。わずかに見える皮膚、頬に返り血があってもおかしくはなかった。そんな気配を纏っていた。軍服は何故黒いのか? 血が目立たないからだ。いつか、どこかの問答が浮かび。ヒュ、と息を飲んだ。冷水を浴びたように頭が冷えた。意味もなく僕は後ずさっていた。


 ああ、嗤っていたのだな、と今ならわかる。


『裸の王子様には因果応報を教えてやろうな?』


 同じ場所で思い返せばもう一度ぞっとした。

 やると決めた以上、あの副官は完遂するだろう。すべての準備と舞台を整えて。この二週間の上官の行動を見ればわかる。祈りはしない。神頼みなんか鼻で笑いそうなのがマルクス大尉だ。己の手に、拳を握るのだ。剣を握り、魔石を握り、戦う意思を握る。

 僕は第五王子としてマルクス大尉の前には立ちたくない。後ろ足で立ち上がった灰色熊から受ける威圧の咆哮どころではない。雪原を駈ける銀狼よりも俊敏で、角を揺らして突撃する黒牛よりも獰猛なくせに。特定討伐対象・紅猿よりも狡猾だ。あの凄みを向けられる男にはなりたくない。

 兵役に就く第五王子、フランツ・フォン・フォルクヴァルツは戦場に斃れるだろう。おそらくは無残に。踏み躙られるだろう。直接に手をくだすのか、追い込むのかはわからない。僕が知る必要もないことだ。ただ僕ら魔道士部隊の庭で、王子様は二年間の兵役をまっとうすることはできないだろう。


 バカだなぁ。

 

 ひときわ大きな白い息を吐く。

 アーデルハイト・アルニム少佐の婚約者として入隊していたのなら。アーデルハイト隊長の大切なひととして兵役に就いていたのなら。

 僕らはどんなに嫌な奴にだって力を貸したのに。隊長を悲しませないためだけに、マルクス大尉は王子様を守っただろうに。


 門扉をくぐる。寮監に姓名と階級を名乗って、部屋へ向かう。


 王族なんて知らないが、…いや、フリードリヒ大尉もそうか。だが、マルクス大尉がとても恐ろしい人間であることはより知っている。

 上官殺し。たぶん同じ陸軍に所属する仲間も。何人かは殺している。だってしょうがない。彼らは僕らを後ろから撃とうとしたから。そして僕らのアーデルハイト隊長を襲おうとしたから。わかっている。わかっているけれど、恐ろしくてしょうがなかった。誰にも言うことはできなかった。たぶん部隊の大半は共犯者だから。

 隊長に告げるべきかどうかを迷って、もっと恐ろしくなった。彼女だけはダメだ。マルクス大尉はアーデルハイト隊長には忠実だ。オスカー曹長も、フリードリヒ小隊長も、隊長には従う。己の手を汚してでも守ろうとする。部隊の責任者が彼女である以上、その上位者への告発も危険だった。下手な真似をすれば口封じが待っているとわかってしまったから。魔女の猟犬は群れを守るために牙をむく。けれど唯一無二の忠誠は魔女そのひとにだけ。

 迷う間にも魔獣の腹を裂き、首を斬って落とし。緑の草原を、白い雪を赤く染め上げた。熱い血を「ああ温かいなぁ」なんて感じる頃には恐怖は形を変えていた。怖いなら、僕もまた怖いものになってしまえばいいのだ。後戻りはできない。魔獣を殺す。一匹残らず。ひとつのこらず。そのために。

 魔道士部隊以上の待遇に、孤児である僕らを迎えてくれる部隊などない。

 便利な下っ端として遣いつぶされるのは目に見えていた。

 その頃には、もう。僕は軍隊という組織の恐ろしさを知っていた。


 ひとを殺してはいけません。けれど敵は殺しましょう。平和を守るために戦いましょう。

 

 なんて矛盾だ。だったらすべてを飲みこんで、僕らを対等の仲間として扱ってくれる部隊を、群れを守るのは当然じゃあないか。

 

 前線暮らしが長くなると、こうやって頭がおかしくなるんだな? という事実に気づいたのはミヒャエルが皇都の官舎ベッドに眠るようになって一週間は過ぎた頃だ。…うん。気をつけよう。


 生活用品の買出しと部屋の片づけで日中を潰し。夜はブレン少尉から借りた本を読みながら眠った。翌日。昼。月曜日の軍食堂は混みあっていた。フィッシャー伍長に相席を求め。


「故郷に帰ることになりました」

 挨拶もそこそこ切りだされた。


 待機所へ向かう足取りは昨日よりもさらに重くなった。



いいねやブックマークなど、評価や反応が本当に嬉しいです。書く気力になります。もっとください(真顔)。こんなにたくさんの小説がアップされる中で読んでくださり、ありがとうございます。

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