悪役令嬢不在の作戦会議【2】
テーブルに運ばれてきたアウフラウフを頬張りながら、アスパラとジャガイモが盛られた白い皿を手付かずのまま中央に押しだす。
「フリードリヒ小隊長はタリスマン創設時の初期メンバーでしたっけ」
「幸い、魔力素養は申し分なかったからね」
遠慮なくアスパラを自分の皿に取り分けるブレンも、あの場でどうにかできたかもしれない、が過剰な期待だと知っているのだろう。あっさりと引き下がり、話題を変えてきた。答えるフリードリヒはオランデーズソースがたっぷりとかかった部分のジャガイモをごっそりと持って行った。残りを皿ごと引き取ったのはオスカーで、同じものを再度注文しつつ、エールの追加も忘れない。
ホワイトシチューの到着に舌鼓をうつ。
マルクスが物心ついてからこちら、魔獣からの被害は途絶えることがなかった。隣国との緊張感も高まっていた。帝国の徴兵制度下ではさまざまな特権を持つ王族すらも2年間の兵役からは逃れられない。現国王も、先代国王も、義務は果たしているはずだ。そこそこの規模の討伐作戦に従事し、それなりの武勲を上げたことになっている、はずだ。実際のところは雲上での話しである。
フリードリヒの早すぎる軍属は世相の不満を逸らすための措置であったために大々的に宣伝された。そして。
13歳の王子様が軍服に身を包み、営庭、訓練用の片手剣を手入れする一枚のポートレート複製は当時、そりゃもう売れに売れたそうだ。
南の辺境に住んでいたマルクスですら雑貨屋の壁に飾られた王子様のポートレートには記憶があった。世俗に興味のうすい魔道士塔の研究室にすら、魔術式の走り書きと並んで掲示ボードに張られていたくらいだ。
ちらりと目をやったフリードリヒは優しげな容貌をしている。秀麗な容姿に浮かぶ甘やかな笑みは文学少女が思い描く御伽噺の王子そのもの。短く切りそろえられた髪や、着崩されることのない制服には清潔感があった。その人気は市井に根強く、老若男女を問わない。
フリードリヒ・フォン・フォルクヴァルツの母親は使用人が一人もいない名ばかり貴族だった。
在学中に文官の資格を取得し、王立図書館の司書をしていて、そこで王に見初められ側妃となっていた。物語のようなラブロマンスは国民を沸かせた。国王様の名前は知らないが、側妃様の名前がエルザであることならば知っているという者も多い。あやかり、生まれた女の子に同じ名前をつける親が続出したからだ。
帝国は一夫一妻制だが、国王だけは三人の妻をもてる。現在の王室にも三人の后がいた。王妃、皇妃、側妃だ。
王妃は王国より迎えられ、皇妃は国内の公爵家から迎えられていた。子は六人いる。立太子された第一王子は王妃が産んだ子だ。すでに執務の大半を担っているとも伝え聞く。第二王子、第三王子は皇妃から生まれ、第一王子の補佐を担っているらしい。
大口をあけてソーセージを頬張るフリードリヒは第四子であり、側妃より生まれている。宮廷作法の一通りは王宮で受けているのだろうが、軍隊暮らしが長ければ早食いは必須の特技である。
スプーンとフォークは外側から手に取りましょう、音を立てずに食べましょう?
気配を殺し、魔力を殺し、森にひそみながら。なんなら地面に落ちたチョコレートを口に放りこむ軍隊流にすっかり染まってしまっている。仕方がない。食えるときには食っておこう。あの時、あの飯を食っていればもう一歩を踏みこめたのにと後悔するのは一度で十分だ。
第五子であるフランツ王子は王妃が産んだ。第一王子が手を離れ、もう子は望めないのではないかと囁かれていたところへ生まれた我が子だ。可愛かったのだろう、兵役逃れを企むほどには。
一姫様はエルザ側妃が産んだ王女だ。国王にとっては六人目にして初めての娘だ。
帝国における一夫多妻制コロニーであるハーレムの心得はすべての妻をまんべんなく同様に愛することだが、そこは人間。国王は妻たちに対しては誠実な夫であったが、父親としてはダメだったらしい。はじめての娘可愛さに側妃のもとへと通いつめたらしい。そして生まれるのは家庭不和である。それでも王妃、皇妃、側妃の三人が居た頃はまだ調和が取れていた。
崩れたのは皇妃が病に亡くなってからだ。
急に苦くなったエールを置いて、フリードリヒに話しかける。
「ご母堂は息災であられるか」
「毎日私の無事を祈ってくださっているそうです。私に敵の牙が届かないのはそのおかげかもしれませんな」
「…そうか」
「ははっ。そりゃーいい母ちゃんだ」
「え。側妃様ですよね? 不敬になりません?」
「喜びますよ。母はタリスマンの皆を招いて食事会がしたいそうです。手料理をふるまいたいそうです」
「手料理!?」
「恥ずかしながら、どうも私に友人と呼べる者ができたのが嬉しいようで…。まあ、あくまでも私的なものですが」
「こ、光栄です。頑張ります」
恐縮に肩を強張らせながら、ブレンがこくこくと肯く。
「おまえ、仮にも侯爵家の息子だろう」
呆れた口調になったのは、フリードリヒを除けばブレン少尉が部隊のなかで最も社会的な身分が高いからだ。ブラートフィッシュ侯爵家の直系だからだ。
「スペアにも成り損ねた三男ですよ。まぁ好きな学問に専念させてもらいましたし、魔道士塔にも送りだしてくれましたから、そこは感謝してますけど」
「よいご両親ではないですか」
「まったくだ」
本人が望む教育の機会を与え、職業選択の自由を与えてやるというのはこのご時勢なかなか難しいのだから。
「そうですかねぇ?」
「なーに、おまえさんも親になればわかるさ」
「まず産んでくれる相手がいませんよ」
「おまえ、婚約者がいたろ?」
ブレンの胸元を指差す。
真新しい軍服の下、首にさげたロケットペンダントの中身を見せられたことがある。小さすぎて顔なんぞはよくわからなかったが、婚約者だと屈託なく笑うブレンの姿には「俺、この戦争が終わったら結婚するんだ」という非常に有名なフラグがマルクスの心をよぎっていた。新任の准尉が初陣でうっかり二階級特進するのは珍しい話ではない。気にかけてはいたが、卵の殻をかぶったひよこは四人もいた。立ったフラグの回収は早かった。
血と暴力、炎と魔力に酔って戦場に取り残されたブレンを救出に向かったのはアーデルハイトそのひとで、襟首をつかんで帰還した隊長本人に言わせれば「迷子を迎えに行って来た」である。助けたと恩に着せるでもなく、淡々と言ってのける。そこに痺れる、憧れる。と称賛するまでが様式美だったか? 笑って誤魔化さなければ見蕩れてしまう。惚れるなと命じられる方が難しい。叱責を覚悟していたブレンもまた、「隊長」「隊長」と目をキラキラさせながら親鳥のあとを追う雛のありさまとなった。
……まぁ卵の殻がとれたのは結構なことだ。
「北の戦線に出ている間に、両家の話し合いで解消されました。他に好きなひとができたって手紙がきました」
「自由な独身貴族の誕生に。新しい恋と出会えた彼女の幸運に。乾杯」
「乾杯」
「乾杯」
「ぜんっぜんめでたくないです。たしかに魔道士塔に入ってからは顔を会わせる機会だって減ってましたけど! 赤ん坊の頃からの約束ですよ? 俺はこの子と結婚するんだってずうっと信じてたのに」
俺たちが北方に張りついて10ヶ月。魔獣の活動が活発化する春に赴き、収束したのが年を越えた1月だ。凱旋する部隊を見送りつつ残って戦線を縮小し、最後の天幕を引き払うところまで後始末を終えて首都に戻った今、暦は2月になっていた。さらに魔道士塔に入ってから疎遠になっていたと言うなら年単位で会う努力を怠っていたということになる。
ただでさえ危険な任務なのだ。若くして未亡人になりたくないと考える女は一定数がいるだろうし、常にそばにいる男に魅力を感じることだって当然あるだろう。
「馬鹿め。返事ぐらい書いておかないからだ。副長を見習え」
部隊で群を抜き、手紙のやり取りが多いのはオスカーである。妻だけではなく、同封されている娘からの絵にさえ絵手紙での返事を書いてやっていたマメさを見習うべきだ。成長し、隣国に嫁いだ娘からの手紙が戦場へ届くことはもう無いけれど。拙い文字に「おとうさん」と書かれた絵を丁寧に折りたたみ、心臓の一番近く、胸の内側ポケットに忍ばせ。隣に立った副長が戦場へと踏みだしていたことをマルクスは知っている。
守るために戦って生き残る。家族が待つ港町へ、愛しき我が家へ帰るために。
言葉に、文字に力を与えるのはやはり行動なのだろう。
「季節の贈り物は? 魔道士塔に居た頃なら外出許可さえ取れば街で好きなものが買えただろ。遠征中だっておまえなら侯爵家出入りの商人や商会に伝手もあったんじゃないのか? 帰省や手紙は面倒でも、メッセージカードくらいならたいした手間じゃないだろ」
「うぅ」
「女が結婚相手に求める『誠実な人』って奴はな、浮気をしないだけじゃない。自分の非を認めて謝ることができて、相手を傷つけるような言動をしない男のことだぞ」
呻くブレンに届いた手紙はオスカーに次いで多かった。紐に綴じられ、野営地の部隊にまとめて届くそれを副官として個人に振り分けていたのはマルクスだ。
他人への手紙に書かれた差出人の名前を盗み見るような真似はしないが、ブレンへ送られた手紙の何割かが元・婚約者の令嬢からの便りだったのだろうと推測することはできる。真っ白く手触りのよい紙には透かし模様が入っていた。だが逆に、ブレンが野戦郵便局の職員に返信を託す姿をマルクスが見たことはない。原則として遠征地の兵士から家族への郵便物は無料だ。表書きに朱色で『軍事郵便』と記す必要はあるし、差し出せる枚数にも制限はある。その上内容については検閲が入る。それでも息子から、婚約者からの便りなのだ。生存報告でもある。心待ちにしていただろうに。
「釣った魚だと慢心したか」
フンと鼻で笑ってしまうのは俺の悪い癖だ。口を出せば、他人事にもつい皮肉混じり、偉そうな言い方になってしまう。
思春期さなかの男が「会いたい」だの「君のところへ帰りたい」だの。手紙であっても形にするのは気恥ずかったんだろうとは思う。しかし親のように便りがないのは元気な印だと受け取ってもらえるというのは恋人に対する過度な期待というものだろう。
「た、たしかに黙って待っててくれるなんて甘えてたのは俺の落ち度でしたけど! 勉強は楽しかったし、はじめての戦場でそんな余裕はなかったんですよ! だいたいっ、マルクス大尉みたいに何もしなくても女の子が寄ってくる人にはフられた男の気持ちなんかわかりません!」
当然の反発だが、失礼な奴だとは思う。仮にも上司にむかって生意気な。
「あー。ブレン。コイツは本命の魚にはじゃぶじゃぶエサをやって、網目から逃げだせないように太らせて囲いこむ奴だぞ?」
「そうですな。雛の風切り羽を切ったりはしませんが、手ずから上等のエサをたらふく食わせて空を飛べないよう仕向けるでしょう。自ら望んでここにいるのだと錯覚させたまま巣に留まらせ、野性に戻ろうとは考えもしないくらい甘やかすでしょう」
「大尉、なにか心の病をこじらせてます?」
「やかましい」
「わー…否定しないんですね」
「なにが悪いんだ?」
頬杖をつき、斜めに視線をくれてやる。
「性質が悪いですね!」
「ああ。このカオで言うんだぜ」
「ええ。この容姿で言うんですよ」
「顔がいいことを自覚してる男って腹たちますよね。引っかかる女性は多そうですけど…マルクス大尉、本命なんていたんですか?」
「そのうち紹介する」
「えっ。紹介してもらえるんですか」
「ああ。楽しみにしてろ」
薄笑いを浮かべる俺にオスカーとフリードリヒが顔を見合わせた。
そろそろ全員の腹がくちてきたのを見届けて、カラになった皿を下げてもらうついでにコーヒーを四杯頼んだ。
エールも、こちらのテーブルでは二杯目を頼んだのはザルのオスカーだけだ。俺もそうそう酔う方ではないが、控えておく。
夜もふけ、酔っ払いに埋め尽された食堂のテーブルに両肘をつく。音を聞こえ辛くする阻害アイテムは問題なく稼動していた。俺たちが話していることは回りから見える。声も聞こえるだろう。だが言葉として意味を捉えることはできない。水の中から外の音を聞いているようなもの。同じ制服を着用した隣のテーブルがほどよく盛り上がっている分、違和感も薄れるだろう。
「さて、」
仕切りなおしだ。
「当面の方針についてだが。まずはなにか質問はあるか?」
そっと手を上げたのはブレンだった。
「婚約破棄を破棄するー的な展開ってありますかね?」
言葉遊びじゃあるまいし。
「無理だろ」
「ムリだな」
「無理ですな」
あれだけの公衆の面前、公式の慶事の場。はっきりとこの国の王子が宣言したのだ。
今夜の騒動はおそらく明日の朝刊には三面誌のすみっこへ、なにごともなければ明後日の政治欄あたりを飾るだろうし、次回の貴族月報には顛末までもが掲載されるだろう。
やっぱりやめた、なかったことに、水に流そうなんてことはありえない。
「ブレン少尉は元婚約者に同じことを言われて納得ができますか」
「……たしかに。ちょっと待てよ、ってなりますね……」
フリードリヒが穏やかに問う心情的にもそうだ。後ろ髪を引かれる後悔があったとしても、こぼれたミルクはもどらない。しかもあの王子は跪いて両手に受けとるべき努力と挺身に満ちたミルクピッチャーを故意に落とした。むしろアーデルハイトに向かって投げつけたのだ。
濡れタオルに手を拭いながら、オスカーもまた例えを持ちだす。
「国境でよその国にむかって連式極大魔術をズドンと撃ちこんどいて、訓練でした、誤射でした、なかったことにしてくださいが通じると思うか?」
「あっ無理ですね!」
「ああ。婚約の破棄は大前提として話を進める」
「異論はないが、…先に、一度、隊長への意思確認は行った方が良くないか?」
「命令は下された。隊長は受諾した。これ以上、なにをどう確認する必要がある」
手の平をこちらに向けた副長は部隊の良識であり、暴走しがちな若者のストッパー役でもあった。しかめっ面に一時停止を呼びかけてくる。
「待て待て。気持ちはわかるがそう急くな。責任と賠償の問題が出てくるだろうが。第五王子本人が婚約関係の解消を望んでも、周りが引きとめにかかるだろ。ただでさえ婚約者のスカートに隠れた王子呼ばわりされてんだ。便利に使い潰して、結婚可能な年齢になったとたんに解消じゃあいくらなんでも外聞が悪すぎる。女ひとりも大事にできない、婚姻の約束ひとつも守れない甲斐性なしに格下げだ。馬にも乗れないガキの頃ならまだしももう十八なんだ。王侯貴族にとっちゃ社会的な信用問題になる」
「だからどうした。配偶者として最低の烙印を押されようが次はもういるんだ。頭が花畑の似合いがな。不貞による離婚よりは婚約関係の段階で解消する方がマシだ。それに、引きとめたところで元には戻らない。これ以上、隊長がコケにされる必要がどこにある」
「……まぁな。言ったな。隊長が。いちど承った命令だ。隊長自身が同意してるからな」
引き下がったオスカーに代わり、次の質問を投げかけたのはフリードリヒだった。
「アルニム伯爵の反応はどうです?」
「追っては来なかった。官舎前まで送り届ける間の接触は何処からもなかった。おまえたちと離れれば、もしや少数と侮る者もいるかもしれんと期待したが、監視者の気配もなかった」
「緘口令が布かれるのは明日以降になりそうですな。まぁ遅きに失しますが」
「おいおい…。本気で根回しも事前調整もない突発的な動きってことかぁ?」
顎を撫でるオスカーはまだ信憑性の問題を疑問視している。俺も信じがたいが、状況はそう言っている。
外交筋を通さず、物理的な軍靴の侵攻。つまり隊長と俺たちタリスマンは宣戦布告をされたわけだ。
なにしろ上官侮辱罪、横領罪、敵前逃亡罪、利敵行為諸々が婚約破棄の理由らしいのだ。戦場帰りの魔道士部隊にソレをふっかける胆力、あるいは無謀には恐れ入る。
隊長が命令を受諾することで初撃をそらした今、俺たちがやるべきことは可及的速やかな迎撃の用意である。
「アルニム伯爵がどうしたって言うんです?」
不思議そうにブレンが瞬く。
苦笑をこぼしたところへコーヒーがやってくる。椅子の背もたれへと体重をかける。
「忘れたのか? アルニム伯爵はアルニム少佐の父親だ」
「ええ。乱入してきましたね。あそこは真っ先に娘を庇うところじゃないんですかね。……それが?」
「ブレン。おまえさん、経験者だろう。婚約解消の手順はどうだった?」
小さなミルクピッチャーを太い指に傾けるオスカーは、ブラックは胃に良くないと妻から言われているらしい。健康な長生きを互いに乞う夫婦円満な家庭を築く副長が、質問に質問を返す。
「手順、と言われても…、書類にサインして返送しました。手続き完了の連絡が届いて、それだけです。もちろんこの休暇は帰省するつもりですけど。……気が重いです」
「その前だ、前」
コーヒーの香気を楽しみながら、フリードリヒがオスカーの言う「その前」を説明してやる。
「婚約の解消を検討するなら、まずは親御さんに相談するのが一般的ではないでしょうか。結婚は家と家との繋がりでもあります。本人たちの社会経験の有無は横におくとしても、成人したばかりです。当人だけでの判断は難しいでしょう」
「次に具体的な方法論に進む。よほどの過失でもない限り、最初から婚約破棄ありきとはならんだろ。三男とはいえ侯爵家の相手なら相手もそれなりの家格持ちだろ? 両家の話し合いよる互いの意見のすり合わせ、歩み寄り、妥協…。そういったことが行われる。決裂し、そこで初めて婚約の解消、あるいは破棄の方向性が決まる。おまえがサインした書類を作ったのは誰だ? 互いに納得できる条件を整えたのは?」
一息に進め、コーヒーカップの縁に口をつける。…豆が変わっていた。前回に注文したときから価格は変動していないが、酸味の強い種類に変わっている。適度な甘みもあり、アルコール後にはちょうど良かった。ただし好みが分かれそうな味ではある。
もっとも。ミルクに加え、砂糖を2個も入れたコーヒーをスプーンにせっせとかき回すブレンにはあまり関係のない話しかもしれない。侯爵家に生まれていながらこの味音痴ぶり。
(まぁ魔道士塔の研究棟ではフラスコでのコーヒーの直飲みが珍しくないからな)
追い討ちをかけるのが従軍経験だ。思わず憐れみの視線に見てしまう。あなたが必要だと求められなかった味覚が婚約者の前に荷物をまとめて出て行ったとしても仕方がないというものだ。