異世界は無法地帯。一章.第三話
いろいろあって、上空巳の髪はピンクになっていた。
高級美容室になんでピンクのヘアカラーがあるのだろう。
そう思って美容師さんに聞いてみたところ何が要求されても一通り出せるように全色用意しているらしい。
さらには既存の塗料からどんな色でも作りだすプロすら用意しているらしい。
お金の力は恐ろしいと体感した。
「ふふふっ上空巳さんとでーとなのです~」
「付き合ってもないのにデートはおかしいだろ」
現在残金430円の上空巳は、妃美の車に乗っていた。
リムジンというわけでもなく普通の軽自動車だ。
妃美が運転しているが、未成年なのに大丈夫なのだろうか?
「お前運転免許持っているのか?」
「世界には成人が十四歳の国もあるのです~」
「日本は18歳だよ」
「国際ライセンスだから問題ないのです~」
多分問題があると思うが、逮捕されたくないので黙っておこう。
余談だが、成人が十四歳の国というのがプエルトリコで、国外運転免許が有効である。(2021年十二月二十六日二十三時のIyamada調べ、正直寝たい。)
実際に運転する際は実際の法律をしっかり確認することをお勧めする。
そうこうやっているうちに、上空巳が住んでいるアパートについた。
妃美は部屋に車のまま突っ込んだりせずしっかりと駐車場に駐車した。
ライセンスや免許はともかく、技術はしっかりしているようだ。
寸分の狂いなく白線に平行に車を駐車していた。
「えっと、一応送ってくれてありがとう」
「問題ないのです~」
そういうと、妃美はトランクから荷物を出した。
上空巳は学生カバン一個しか持っていないので、妃美の荷物だろうか。
妃美は重そうな荷物をトランクから出すと、ハッチアップドアを閉めて、車の鍵を閉めた。
「今日は上空巳さんちにお泊りなのです~」
「帰れ。三十秒以内に帰れ。今すぐ帰れ、お前にやる部屋はない」
本当に泊まられても困るので全力で否定した。
「でも、上空巳さんちに泊まれないと野宿です~」
体を張られても困る。
「あ~あ、上空巳さんが泊めてくれないなら野宿です~襲われるかもしれないけど仕方がないです~」
自分の身を人質に泊めろと要求してきた。
「あ~分かった分かった泊めるから」
なんで俺がこんなことをしなければいけないのだろう?
「上空巳さん大好きなのです~」
「もっとまともな人を好きになれ」
少なくとも上空巳はまともな方ではないだろう。
上空巳の部屋は12階にあるので、普段はエレベーターを使っているが、エレベーターの扉の前に立札が置いてあった。
エレベーター点検中につき、使用禁止。
そして、非常階段のドアが開いていた。
「上空巳さんこの荷物全部持つのです~」
そういうと妃美は荷物を上空巳に放り投げ、ぴょんぴょんしながら階段に向かって行った。
残された上空巳と大きな荷物・・・
神はこれを持って十二階まで上がれというのか・・・
十キロマラソンで疲れたこの体で・・・
妃美の荷物を抱えて非常階段まで行くと、妃美は一個上の階で
「早くするのです~」
とか言っていた。
妃美の荷物のせいで遅くなっているのに早くしろというのは理不尽である。
「お前せめてこの学生カバンだけでも持ってくれ」
「いやなのです~」
一瞬、妃美の荷物は置いていこうかと思ったが、どうせ後で良心に負けて取りに来る羽目になると思ったのでやめておいた。