表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒銀の狼と男装の騎士【改稿版】   作者: 藤夜
第二章 生き別れの兄と白い狼
48/126

24 告白

 キースの街へ向かう船の中で、ようやく四人は落ち着いて一息つくことができた。

 幸い港を封鎖される前に船は出港したので、後はエディーサ王国に着くまで波に揺られていればいい。エルフェルムがどうなったか心配ではあったが、彼のことだから大丈夫だと信じている。


 リゼットの足にできた靴擦れを手当した後で、エルディアは三人に囲まれて詰問されていた。長く伸びた銀の髪は今は紐で一つに括られて、まるで髪を切る前のエルフェルムのようだ。



「で、説明してくれるかしら?」


「エル、お前女?男?本当はどっちだ?」


「エルディアはお前の妹じゃなかったのか?」



 三人にかわるがわるに詰め寄られて、エルディアは真実を話すことにした。後で説明すると言ったからには仕方ない。これ以上は内緒にしておけるものではない。



「ルフィが本当のエルフェルムなんだ。僕は彼の妹で、エルディア。僕達は双子で、フェンリルに襲われた時、ルフィが行方不明になった。それ以来、僕はエルフェルムとして生きてきたんだ。母やみんなの仇であるフェンリルを倒すために」



 そう言ってエルディアは、服の袖を捲って左肩を見せた。

 そこには赤い魔術紋様と白金の腕輪がある。



「アーヴァイン様が僕の魔術の師匠で、このブレスを作ってくれた。強すぎる僕の魔力を抑えて、姿を変えるんだ」



 エルディアは肩から腕輪を抜く。すると銀から金に髪の色が変わり、姿が少女のものへと変化した。

 三人は改めてエルディアの変化を目の当たりにして、言葉を失っている。



「なんともまあ、アーヴァイン様は凄いとしか言えん」


「エルが、エルディア本人だったのか?」


「なんで隠していたの?わたくし達、親友でしょう?」


「………ごめん」



 エルディアは謝るしかできない。



「女の身で騎士団に入ってるし、王宮にいた時からずっと男の姿でいたし。それに、僕の魔力は生まれながらのものではなく、このフェンの刻印のせいなんだ。魔獣との契約で魔獣と同じ魔力が得られる。これは誰にも言えない秘密なんだ。悪用されると、とても危険だから」



 知っている人はごく限られている。

 そう伝えると、三人はそろってゴクリと喉を鳴らした。



「じゃあ、ロイ様はエルがエルディアだって知っていたのね。だから、あんなに………」



 ロイゼルドは王都から届いたエルディアからの手紙を、恋人からの手紙のように大事そうにしていた。

 きっと、彼は彼女の事を愛している。そして、目の前のエルディアもまた………



「え?じゃあ、わたくしの立ち位置は何ですの?ロイ様とエルの仲を邪魔する女………わたくし、悪役令嬢?もしかして悪役令嬢なの?」



 リゼットはショックを受けたように、ブツブツと独り言を言っている。



「リズ、また訳の分からないこと言って」



 エルディアは、リゼットがまた何か変な本を読んだなとジト目で見ていた。




「シード、気の毒にな」



 リアムが呆然としているカルシードの肩を叩く。



「お前の気持ちはエルにもろバレだ」


「シード、なんかごめんね」


「言うな。頼むから」



 カルシードは頭を抱えて床に突っ伏した。好きな子に告白するつもりなくバレているなんて、恥ずかしくてたまらない。もう少し心の準備が欲しいというものだ。



「副団長がライバルだ。頑張れシード。歳はお前の方が若くて有利だ」


「だから、言うなって!」


「エル、お前はぶっちゃけ、どっちが好みだ?」


「ええっ?今、僕にそれを聞く?」


「だから、(さら)すなって言ってるだろう!」



 カルシードに蹴られて、リアムがゴロゴロ転がっていった。



「リアムは案外普通だね。もっと怒るとかするかと思ったのに」



 エルディアが転がるリアムにクスクス笑うと、彼は起き上がってあぐらを組み、ぽりぽりと頭をかいた。



「だって、見た目は違うけど、中身はお前だし。事情を聞いたら怒れないしなあ」


「ありがとう!」



 エルディアは飛びあがってリアムに抱きついた。



「うわあっ!」



 中身は同じでも超絶美少女に抱きつかれると動揺がすごい。男の時でも破壊力が半端ないのに。


 カルシードが慌てて飛んできて、二人をベリッと引き剥がした。



「俺の目の前で抱き合うな!」


「えーっ、いつもは何にも言わないじゃん」


「その姿の時はやめろ!いくら中身がエルでも、俺が傷付く!」


「なんか、めんどくさいな」


「お前がややこしいからだ!」


「俺は大歓迎だぞ」


「お前は下心ありすぎ!」



 にへらと笑うリアムを、再びカルシードが船の端まで蹴飛ばした。




 河を下るのは行きよりもスムーズで、船はそれから程なくキースの街に着いた。


 街に入ったエルディア達は、王都に向けて使いを出した。さすがにリゼットを連れて、野宿しながら馬で帰るわけにはいかない。迎えを依頼して、この街で待つことにしたのだ。


 数日後、ヴィンセント自ら馬車を連れて迎えに来た。

 そうして、レンブル公爵令嬢誘拐事件は無事に解決したのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ