捨てられるまで
俺は産まれてきて良かったのか?
そんなことを毎日考えていた、答えなんてない、それもわかっていた。
1982年北海道…梅雨の時期に産まれ、その半年後の雪の降る午前2時頃実の母親に俺は捨てられた…
家は地元で少しは名の知れた家具屋を営んでいたらしい。
親父は家具屋として独立するために、昼は職人として、夜はいまで言うホストとして働き金を貯め起業した努力の人である。
正直会社経営者の次男で産まれてここまでなら勝ち組だと言っても間違いではないだろう。
それが全てを壊れるきっかけになったのは母親の父親、つまり俺の祖父の存在だった。
会社は起動に乗り売り上げをどんどん伸ばしていた。
母親は学力があまり無い人で父親である祖父に言われたことはなんでも従う人だったらしい。
親父の会社の手形を母親に盗ませ、それを使い金を借り、次は納品間近の家具を他人に転売し金だけは自分で受け取り使うということを繰り返していた。
父親が叱責すると逆ギレして暴行するというクズだった。
当然会社の信用は無くなり倒産してしまう。
母親は言いなりになっていて幸せに暮らしていける環境を自分で壊したことにも気付いていなかった…と思いたい。
でも蛙の子は蛙でしかない、他の男を作り俺をつれて駆け落ち、つまりは逃げた。
その時には祖父も姿を消し、父親に残ったのは莫大な借金と二人の子供と父親の母親である祖母だけだった。
絶望した親父は祖母に兄と姉を預け、車で山に向かい自殺しようとしたらしい…でも子供たちの顔が浮かび思い止まってくれた。
家に帰ってきて酒に逃げる生活を続けていた時に、深夜赤ん坊の泣き声が聞こえてきて玄関を出ると俺が置き去りにされていた。
母親が産まれたばかりの俺を連れて男と逃げたが、人妻と知ってて駆け落ちした相手が他人の子供に愛情などあるはずがない。
戻してこいと言われて置き去りにしたのは憶測だがそれが事実だろうとは誰でも予測できる。
祖母に聞いたが父親はそんな状態だったのに俺が戻ってきたことを喜んでくれたらしい。
それから親父は家族のために神奈川県に出稼ぎに出ていった。
それから数年がたち、俺は小学生になっていた。