姉から出された超難題。これは生卵?それともゆで卵?
初のミステリー?だと思う。
「弟よ。これが生卵か、ゆで卵か見分けてみよ」
その言葉が全ての元凶であった。
俺は姉に問うた。その卵に触っていいのかと、答えは否。姉はこの卵に決して触ってはいけないと言う。
もしこれが触っていいものだとしたら。卵をくるくるとコマのように回せば、一目で区別がついたであろうに。
「弟よ。この世の全てが自分の思うようにならないこともある」
確かに正論である。俺がこれから生きていく人生の中で、目視だけで、生卵かゆで卵かを判別しなければならない時が来るかもしれない。
これは一種の試練のようなものであろう。
俺は姉に問うた。この卵に光を当てていいのかと。答えは否。姉はこの卵に決して光を当ててはならないと言う。
もしこれが光を当てて良いものだとしたら。女性の肌のように、透き通っているものが生卵だと判別できたのに。
姉の掌に乗せられている卵。これは生卵であるかゆで卵であるかの究極の二択。
適当に答えれば済むかもしれない。ただそれは俺のプライドが許さない。俺の全身全霊をかけこれが生卵かゆで卵であるかを判別してみせる!
一見すると何の変哲もない卵。だがしかしよく見ると卵から煙が上がっているではないか。これは湯気。
つまりこれがゆで卵である査証。
いや待て、本当にそれでいいのか、湯気が立ち上るほどのゆで卵ならかなりの高熱のはず。つまり姉が平然と掌に乗せられるわけがない。
つまりこれはフェイク。
生卵に何らかの仕掛けをかけ、湯気が上がっているかのように見せかけてるに違いない。
だからこれは生卵である。
そう言いかけた俺は慌てて口をつぐんだ。姉が笑っているこれはそんな浅はかな推理をしている俺を嘲笑っているに違いない。
この思考も見抜かれているのか。
つまりこれもフェイク。
生卵から、湯気が上がっているように見せかけて、実は本当にゆで卵から湯気が上っているのではないか。実は姉は、熱いのを堪えているのではないか?
その瞬間。姉の顔に玉の汗が流れた。
「姉よ。俺は答えにたどり着いた」
「なんだと」
「その卵からは湯気が立ち上っている。つまりそれはゆで卵だ」
「本当にそれでいいのか」
「ああ。確かに最初は、生卵から湯気が上るトリックが仕掛けられていると思ったさ」
「ならどうして」
「そんなのは、簡単だ」
俺は、姉の掌に載せられた卵を指さし、こう言った。
「それもフェイクだからに他ならない」
「気づいたか」
そう言った。姉はどこか嬉しそうであり
「だが一本甘かったな」
「何!」
「お前はそもそも勘違いをしている」
姉は机の角で、一つ卵を叩きつけると白い皿の中に卵落とした。その卵は白くてドロドロしており、真ん中に満月のごとき黄身がある。
それは、
「温泉卵だ」
静寂が場を支配する。
そして
「それはねぇよ。姉ちゃん」
「お前が長考するから、手が火傷したんだけど!水みずぅ」
一気に、食卓が賑やかになる。さっきまでの言動はどこえやら。俺は姉に文句を言い、姉は水道で手を冷やしている。
その後、二人で美味しく温泉卵を食べたのであった。