表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/29

8話 ドラゴンの契約

 イノリに魔法の才能があるなんて。

 驚いたものの、次いで、うれしくなる。

 娘が『すごい』となると、なぜか、俺も気分がよくなる。不思議な感覚だ。


 だがしかし、待ってほしい。

 本当に娘は才能があるのだろうか?


 いや、才能があることは間違いない。

 あの年齢で魔法を唱えることができて、なおかつ、木を倒すことができた。

 普通に考えて、ありえないことだ。


 だが、こう言ってはなんだが、出会ったばかりのイノリは、ちょっとした風で飛ばされてしまうそうなほど儚く、力があるようには見えなかった。

 今になって覚醒したという見方もあるが……都合がよくないか?


 少し、調べてみる必要があるな。

 何しろ、イノリのことだ。

 なにかあってからでは遅い。


「……ひょっとしたら、俺は過保護というヤツなのかもしれんな」

「おとーさん、どうしたの? かほごー?」

「いや、なんでもない」


 家に戻り、イノリと向き合って座る。


「調べたいことがある。少しの間、じっとしててくれないか?」

「うんっ。私、じっとしてるよー」

「いい子だ」

「にゃふぅ」


 頭を撫でると、イノリは気持ちよさそうに目を細めた。

 猫みたいだ。

 本来の目的を忘れて、ずっと撫でていたくなる。


 イノリを撫でながら、静かに魔法を起動する。


「知識の精霊よ。

 我の力は汝のもの。

 汝の力は我のもの。

 ここに契約を交わす。

 魂の領域」


 魂の構成を覗き、対象の体、心の状態を調べる魔法を使用した。

 次々と情報が舞い込んでくる。



====================

イノリ 10歳 女 レベル:1

クラス:なし

HP :20

MP :60

腕力 :5

魔力 :30

敏捷 :5

耐性 :5

運  :10

技能 :ドラゴンの加護

====================



 イノリの体に問題は……ない。

 心もオールクリアーだ。

 レベル1にしては、ステータスが高い気もするが……まあ、それについては、個々による。

 優れた資質を持っていると解釈すれば、納得できる。


 ただ一つ、見過ごせない点があった。

 今までに見たことのない、特殊状態が付加されていた。



『技能:ドラゴンの加護』



「……なんだ、これは?」

「なんだー」


 不可解そうにする俺の顔がおもしろいのか、イノリが笑う。

 ただ、俺は笑ってはいられない。

 毒、マヒ、呪い……色々な状態異常の知識を持っているが、『ドラゴンの加護』なんていうものは初めて聞いた。

 どういうことだ?


「おとーさん、むずかしー顔してるよ」

「そうだな……」

「んー……よくわからないこと、見つかった?」


 俺の心を見透かしたようなイノリの発言に、ドキリとした。


「どうしてそう思うんだ?」

「なんとなくー?」


 コテン、とイノリは小首をかわいらしく傾げながら言う。


「おとーさんが私の中にいるような……おとーさんのこと、すごく近くに感じるの。そのせいかな?」

「近くに……」


 イノリの言葉に閃くものがあった。


 そう、あれは……『契約』だ。

 今の今まで忘れていたが、ドラゴンは、特定の生物と『契約』を交わすことができる。

 契約をすることで、ドラゴンに等しい力を得ることができる……というものだ。


「……もしかして、俺はイノリと契約を?」


 契約をしたことなんて一度もないから、どういうものかわからない。

 が……

 現状を考える限り、他の可能性はなさそうだ。


 まずいな……

 知らず知らずのこととはいえ、イノリと契約を交わしてしまうなんて。


「おとーさん、まだー?」

「すまない、もう少し、じっとしていてくれ。契約を破棄しないといけない」

「けーやく?」

「そうだな……間違えて、俺とイノリを一つに繋ぐ、特殊な魔法を使ってしまったんだ」

「おー。だから、おとーさんを近くに感じるの?」

「おそらく、契約の影響だな」


 どんな副作用があるかわからない。

 イノリに害が及ぶ前に、早々に破棄しなければ。


「はき、って?」

「契約をやめる、っていうことだ」

「え、やめちゃうの……?」


 イノリが不安そうにした。


「イヤなのか……?」

「うんっ!」


 どうして、元気いっぱいに頷くんだ……?


「私、今のままがいいな。おとーさんを近くに感じるから……おとーさんとつながっていたいな」


 そんなことを言われれると、決意が鈍ってしまうではないか。


「いや、しかしだな……危ないものかもしれないんだ」

「だいじょーぶだよ」

「どうして、そう言い切れる?」

「なにかあったら、おとーさんが守ってくれるよね?」

「それは、まあ……」


 俺の全力で守ると、約束しよう。


「なら、へーきだよね!」

「だがな……」

「おとーさんとつながっていたいな……おねがい、おとーさん」


 上目遣いでお願いされて、断ることはできなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ