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17話 協力者

「つまり……クロさんはドラゴン、だと?」


 村に戻り、まずは俺たちの家に移動した。

 ソードウルフ討伐の報告をすれば、確認などをしなければならないだろうから、時間がとられてしまう。


 そのため、まずは話をすることを優先にした。

 アンジェリカを家に招いて……

 そこで、俺がドラゴンであることを打ち明けた。


「じゃあ、イノリちゃんも……?」

「ううん、私はドラゴンじゃないよ」

「えっと……?」

「俺とイノリに血の繋がりはない。イノリは、拾った子なのだ」

「そ、そうなんですか……すみません、答えづらいことを聞いてしまって」

「いや、気にするな」

「きにするなー!」


 イノリが追従する。

 意味はよくわかっていないのだろう。


「あの……どうして、そのことを打ち明けて? いえ、そもそも、どうして、あの時、元の姿に……?」

「他に方法がなかった」


 最後の最後で気を抜いてしまった。

 それ故に、二人を危険にさらしてしまった。

 イノリを守ることはもちろんだ。

 ただ、アンジェリカも守らなければいけない。

 なぜなら、アンジェリカの同行を許したのは俺なのだから。

 そして、俺のミスで危機に陥った。


 ならば、正体を明かすことになったとしても、助けなければならない。

 それが『責任』というものだ。


 そう話をすると、アンジェリカは頭を下げた。


「ありがとうございます」

「なぜ礼を言う……?」

「クロさんに、命を助けられたからですよ」

「だが、それは俺の責任であって……」

「そういうの、あまり関係ないです。私はクロさんに助けられた、だから感謝しています。ただ、それだけのことですよ。お礼くらい、言わせてください」

「そう、か」


 やはり、人間というものはよくわからないな。

 ただ……

 それほど悪い気はしない。


「それで……どうする?」

「え? なにがですか?」

「俺のことだ。村人……村長に、どう報告する?」


 ラフタは良いところだが、こうなると、出ていかざるをえない。

 問題は、すんなりと旅立つことができるか、ということだ。

 ドラゴンが相手とはいえ、今の俺は人間の姿をとっている。

 討伐しようと、声を上げる者がいるかもしれない。


 一時とはいえ、世話になった村だ。

 なるべくなら、村人を傷つけるようなことはしたくない。

 荒事になることなく、村を出ていけるといいのだが……


 そんなことを考えていると、まったく予想外のことを言われる。


「どうもしませんけど?」

「なに?」

「あ、私がクロさんのことを誰かに話すと思っているんですか? もう、心外ですね。そんなことしませんよ」

「おー? アンジェリカ、みかた?」

「そうだよ、味方だよ」

「……待て。どうして、そういう話になる?」


 わけがわからない。

 俺はドラゴンなんだぞ?

 かばう理由なんて思い浮かばない。


 困惑する俺に、アンジェリカは笑顔を向けた。


「だって……クロさんは、クロさんですから」

「俺は……俺?」

「ドラゴンということは、とても驚きました。でも、ドラゴンだからといって、クロさんにしていただいた恩は忘れません。村を救ってくれたこと、みんなを助けてくれたこと。そして、ついさっき、私を助けてくれたこと」

「それは……」

「ドラゴンだとか人間じゃないとか、私にとっては、わりとどうでもいいことです。私は、クロさんを信じているんです」

「俺を……」

「だから、何もしません。今まで通りです。これからも村の一員です。あっ、クロさんとイノリちゃんさえよければ、の話ですけどね」


 なかなか、すぐに言葉が出てこない。

 まさか、かばわれるなんて……


 いや。

 かばわれたわけではないのだろう。

 そう……もっとふさわしい言葉があるはずだ。


 ……信じてくれた。


 そう言うべきだろう。


「おとーさん、私、まだラフタにいたいな」

「……そうだな、俺も同じ意見だ」

「それじゃあ……」

「すまないが、俺のことは黙っていてくれないか? 無用な混乱を招きたくない」

「はいっ、もちろん!」


 アンジェリカは笑顔で頷いた。


 この日、俺の本当の姿を知る協力者が一人増えた。

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