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神との戦争  作者: たにどおり
【帝都決戦】
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第61話 再臨


 魔力節約を決めたレーヴァテイン大隊は、機動のための装甲車を調達していた。

 その作業は時間を要するかとも思っていたが、首都の国防省なだけあり要求されるスペックの車両はすぐに見つかった。


 12.7ミリ重機関銃搭載の4輪装甲車×4両。

 自動擲弾発射機グレネードランチャー搭載の4輪装甲車×2両。

 25ミリ機関砲を持った偵察警戒車が1両だ。


「各員乗車! 発進後はまず外務省へ救援に向かう! 1号車に続け!!」


 小隊ごとに乗り込み、ラインメタル少佐の座乗する1号車へ続くように次々と発進させていく。

 俺はアルバレス中尉の運転する2号車のハッチに着いている。


「大尉、我々がここを離れても大丈夫なんですか?」


「テオとベルセリオンが守備として待機している、おそらく大丈夫だろう。我々は遊撃し、増援到着まで戦線悪化を防ぐぞ」


「了解ッ!!」


 車列を形成して向かった先は、帝国外務省。

 キマイラ級40体が降下し、守備隊は苦戦を強いられているらしい。


「到着と同時に運転手とガンナー以外は降車! 魔装ブーストを使った戦闘を開始せよ」


 移動は車、戦闘は魔装。要は使い分けか。


「外務省正門付近に友軍を確認!!」


「敵を目視後に攻撃開始せよ!! 機動要員は魔導ブーストを発動!」


 壊滅寸前の友軍を敵から遮るように車両で滑り込むと、瓦礫を踏みつけるキマイラ級へ、大口径の重機関銃を向けた。


「撃てッ!!!」


 12.7ミリ徹甲弾が嵐のように撃ち出され、重く無機質な発砲音を轟かせる。

 最大クラスの機関銃だ、さしものキマイラ級もただでがすまない。


 ライオンの顔が叩き潰され、山羊の頭が弾け飛ぶ。


「機銃! 敵を牽制し続けろ!! 5、6号車はグレネード斉射!!」


 いくら装甲車とはいえ、魔法攻撃を受ければ大破してしまう。ならば敵の反撃を許さぬ密度での攻撃が必須。

 グレネードランチャー搭載車両が火力を浴びせつつ、偵察警戒車の機関砲が先頭で火を吹いた。


 降車した部隊は守備隊の後退支援、残りは屋上まで駆け上がり、対戦車ロケットを高所から撃ち下ろす。


「ごギュアああああああああアッ!?」


 不意を突いたことも合わさり、キマイラ級はその数を一気に減らした。

 だが、往生際の悪い数体が装甲車と変わらぬ体躯で突っ込んでくる。


 だが不安はない、1号車を飛び出した黒き暴風によって連中は一瞬で斬り刻まれたのだから。


「撃ち方やめ。弾がもったいないし、残りは僕が片付けよう」


 刀身の長い魔力刃を両手に持ったラインメタル少佐が、戦闘狂ここにあらんと言わんばかりに切先を瞬かせる。

 踊るように3体、4体とキマイラ級の部位が斬り飛ばされ、外務省を襲っていた敵部隊は壊滅した。


「次は国土交通省だ!! 総員乗車!」


 間髪入れずに次の目標へ。

 1分一秒すら惜しい想いで大隊は車を走らせる。


『こちらマーキュリー。第1、第2攻撃ヘリ大隊が現着! 農林水産省、警察庁、消防庁に群がるレクトルは彼らに任せろ!! 必要なら航空支援要請も可能だ』


『朗報だマーキュリー、留意する』


 帝都周辺の基地から、続々と増援部隊が駆け付けているな。

 しかしこうして見ると一つ思うところがあった。


「大隊長、敵の目標は分かりますか?」


『僕も気になっていたところだ、敵はレクトルを首都に降下させ、省庁を集中的に狙っている。にしてはまるで統率が取れていないからね』


 今回の首都直撃は、北方攻勢援護の陽動とも見れる。

 だが襲う場所が場所だ、狙うなら事前計画に必ず基づくはず......。


 狙いはなんだ、虐殺か? 政府の機能不全か? それにしては衝撃が甘い。

 アスガルは戦力を分散し過ぎている、ならば陽動に徹しているだけか? 


 そういえばベルセリオンが言っていた。

 空間転移でレクトルを移動させる戦術は万能ではない上に、レクトルの制御は困難だと。


 好きに暴れさせるのが楽、ならこの統率の無さも頷ける。

 そして陽動......、戦力分散......。

 ――――まさかッ!


「大隊長!! 直ちに皇宮へ引き返してください!!!」


 捨てゴマに暴れさせ、手薄な本命を自らが叩く。

 これはただの陽動ではない、陽動の陽動か! 


「アスガルの......敵"執行者"の狙いは皇宮です!! 我々はまんまと誘い出されました!!!」


 我々レーヴァテイン大隊、近衛師団、増援部隊は広範囲に降下したレクトルの対処に忙殺されている。

 雑多な面ばかりに気を取られすぎた! 真に警戒すべきは強力な点だ。


『こちらドラゴン4! 新たな飛行物体を帝都上空に探知! ......ワイバーン級か!?』


『おいなにをしている! 撃てッ! 撃てッ!!』


 友軍戦闘機がなにやら慌ただしい。だがわかる......嫌ななにかが、思い出したくないものが近づいてきている。


『空対空ミサイル効果無しッ!! 繰り返す! 対空ミサイルが弾かれた! アンノウンはワイバーン級にあらず――――がぁッ!?』


 風切るハッチから上空を見上げれば、そこには爆炎に包まれる戦闘機の姿。

 もう半年前以上前、まだ俺が魔装化する前の任務で見た光景だ。


「ガアアアアアアアアァァァァァァァァァッッ!!!!!!!」


 ジェットエンジンを上回る咆哮に、俺とアルバレス中尉は体を震わせた。

 戦闘機すら撃墜するレクトルの王、あの日、俺とアルバレス中尉、北方の避難者を炎で包んだ神の使者。


『――――ドラゴン級レクトル接近!! こっちに突っ込んできます!!!』


 ......久しぶりだな! 殲滅すべき悪の権化よ!! 



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