表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神との戦争  作者: たにどおり
【帝都決戦】
60/64

第60話 首都直撃


 ――――テオドール帝国首都 オーディン。


 時刻は夜。315レーヴァテイン大隊は装備を整え、要塞化された国防省の屋上にいた。

 上空には視界に入り切らないサイズの魔法陣、まさか首都を直撃されるとはな......。


 近衛師団が慌ただしく帝都へ展開、今のところ現れたのは巨大魔法陣だけだが、テオいわくレクトルが溢れるのは時間の問題だそうだ。


 明かりに満ちた都市部から、闇を裂くようにいくつものサーチライトが空へ昇る光景は幻想的だ。


「01より大隊本部、詳細を求む」


 数十基の対空砲が真上を指向し、隠れていた短距離対空ミサイルも顔を出す。国防省は文字通りハリネズミと化していた。


『こちら大隊本部、魔法陣は全世界の主要国首都へ同時出現したもよう』


「全世界?」


『ああ、帝都オーディン、ミハイル連邦首都モスカ、アルカディア連合王国首都ロンドニア。そして――――オリヴィア合衆国首都ワシンテニオン、秋津国首都だ』


「交戦国ならまだしも、オリヴィアと秋津は直接参戦していなかったのでは?」


『そうだ、しかし彼らは食料や弾薬支援、武器供与レンドリースを我々に行っていた。それが攻撃のキッカケになったのかもしれん』


 先日のユグドラシル破壊、そして大陸間弾道ミサイルを使った一斉攻撃プランことピースキーパー。

 主導権を握りかけていただけに、今回の奇襲は出鼻をくじくためか。

 だが、それにしたって全ての大国の首都を同時攻撃とは......。


「エミリア、顔色悪いけど大丈夫?」


 グランドクロスを携えたテオが、ナスタチウム中尉へ近づく。

 見れば、中尉は額に尋常でない汗を流していた。


「秋津のことが気掛かりなのか?」


「ッ......! すみません......」


「いや、中尉は秋津で過ごした時間の方が長いのは承知している。考えるなと言うつもりはない」


 故郷に等しい国にも戦火が及んだのだ、心配するなというのは難しいかもしれないな。


「だが秋津の軍隊も精強と聞く、秋津海海戦でバルシック艦隊相手に完勝したのは有名な話だ。極東は彼らに任せ、こちらも帝都を守るぞ」


「了解ッ!」


 民間人はマニュアルに従って、各区域ごとに地下シェルターへ避難となっている。

 現在近衛師団が避難誘導を行っているらしいが、さていつまで待ってくれるか......。


「――――来たッ! 真上に魔力反応!! 全員備えて!!」


 魔力探知を持つテオが叫んだ。

 釣られて上を向けば、思わず弱音が出そうになる。

 ......どうやら、くそったれの主は避難完了まで待ってはくれないらしい。


「さて大隊諸君、オーバーワークに祝福を。理不尽を相手に戦争を始めるぞ!」


 三重、四重にまで重なり合った魔法陣から降り注ぐレクトル、視界を覆い尽くすような数の敵軍が、帝都全域へ降下を開始した。


『撃ち方始め! 繰り返す、撃ち方始めッッ!!!』


 帝都中から猛烈な対空砲火が打ち上がった。

 地対空ミサイルが尾を引きながら次々に化物を穿ち、死の花を上空に咲かせる。


『弾幕を張れ!! 敵空挺を少しでも減らすんだ!!』


 火を吹く機関砲が降下中のゴブリンを、執行兵を瞬時に肉の塊へと変えていく。

 濃密に展開される弾幕、それでも帝都各地から最悪の報告が上がったきた。


『帝都B2ブロックに敵大隊降下! これより交戦します!!』


『こちら外務省守備隊! キマイラ級40以上が直進中!! 戦車の支援を要請する!!』


『国土交通省にもオーガ級多数!! 攻撃されている!!!』


 アスガルは市街に加え、帝国の脳たる各省庁を潰しにかかっているようだった。

 最悪だ! 皇宮と国防省は中心部の高台にあり、周囲より対空砲火やミサイル迎撃も厚いのでいまだ無事だが、このままでは国家が機能不全を起こしかねん!!


「大隊諸君! この中で車の運転に自信のある者は?」


 通信に耳をやっていた少佐が、唐突に振り向いた。

 一体なにを......?


「車なら運転できます、以前もフォルティス大尉と行った偵察で、運転を担当しました」


 対物狙撃銃アンチマテリアルライフルを抱えたアルバレス中尉が名乗り出る。

 そういえばそうだった、テオを拾った日も巧みな運転でキマイラの攻撃を回避していた。


 その他にも、数名の隊員が挙手する。


「よろしい、では早速装甲車を取りに行こうか」


「装甲車!? 少佐、一体なにをするつもりで?」


「大尉、我々は魔装化機動大隊を名乗っているが、なにも魔装化だけが機動する手段ではない。これだけ戦線が流動的では魔力が追い付かないのは自明、ならガソリンを使った機械化部隊になろうじゃないか」



【機械化部隊】

主に車両などで機械化された歩兵を指し、高い即応能力と機動力、展開力を備える。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ