表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神との戦争  作者: たにどおり
【神との休日】
40/64

第40話 理解と和解


「弾帯よし、あとは書類か」


 地下駐車場での一件、あれから3日程経った。

 大方の処分が決まるまでは官舎に禁固っていう感じなんだけど、反省も兼ねて大隊武器庫管理の手伝いや、書類作業を私は続けていた。


 今回の件は少佐から説明してもらったところ、現場の軋轢を見抜けなかった上の判断ミスと、ラインメタル少佐も誘導していた節があったということで、処分自体は軽いと言われた。


 でも、やっぱり私が激情に身を任せたことが原因には違いない。

 罪悪感が拭えぬ中、紛らわすように書類の空欄を埋めているとノックが響いた。


「はい、どうぞ」


 誰だろうなんて思って振り返ると、黒色基調の士官服に身を包んだベルセリオンが入室してきた。


「どうしたの?」


 ドタバタしていたこともあり、最近彼女とは会えていなかっただけに、ちょっぴり話しづらい。


「いや、他の者が忙しそうだったんでな、暇だし会いに来た」


「プフっ!」


 思わず吹き出す。


「なっ、何がおかしい! 会うのを禁止されてはいない筈だが、もしかして間違えてたか!?」


「そういうのは無いけど、普通あんなことしたヤツに会いたいって思うのかなーって」


 彼女は扉を閉めると、私の方へ近づく。


「会いたいと思うくらい良いだろう、自分の意思に従っただけだ」


「そうね、でも結構人間らしくなったじゃない」


「一応言っとくが私は神だぞ、人間でも、ましてや人形でもない」


「あはははっ! それもそうね。あと、その......こないだはごめんなさい。アザとか残らなかった?」


 頭を下げて謝罪する。

 ずっと気になっていた、私がまだまだ子供だったせいで皆にも迷惑を掛けてしまった。

 もちろん、ベルセリオンには本当に申し訳なく思ってる。


「気にするな、こないだは対戦車砲で撃たれた上に槍で貫かれたからな、お前のパンチなんて効くわけないだろう」


 どこか明るくて優しい返事、まるで感情がこもったような人間らしい、おどけた口調で彼女はそう言った。

 胸のわだかまりが払ったようにスッと消える。どこか安堵する私に、ベルセリオンは続けた。


「エルドやグランから聞いた。お前がアスガル軍に襲われた街は、私とテオが初めてこの国に来たときの"廃墟"らしいな。お前の心中を思えば真っ先に考慮すべきだった、すまない」


「いやいや! 私の方こそ話そうとしなかったのが悪いわけで――」


「違う、これは私の自己中心的行動が招いた――」


 永遠に続きそうな訂正と謝罪を切るタイミングで、ドアが再びノックされる。


「あっ、はいどうぞ!」


 どぎまぎしながら返事をすると、端正な金髪の男が入室した。

 私の上官にして大隊長、ジーク・ラインメタル少佐だった。


「お疲れ様、ナスタチウム中尉。......うん、彼女と仲直りできたようで何よりだ」


「あっ、いや、はい、大変ご迷惑をお掛けしました!」


 直立し、ベルセリオンの時と同様頭を下げる。


「今回の一件は僕らにも責任がある、あまり気負わないでくれ。書類作業(はんせい)もできてるみたいだし、もう喧嘩はよしてくれよ」


「はい!」


 右手で敬礼する私。

 でも、ベルセリオンは何か曇ったような目つきでジークを見ていた。


「ジーク、終わったなら要件を話してくれ。さっきからドタバタと大隊が騒がしい、......何が起きた?」


 そういえばベルセリオンも「他の者が忙しそうだったから来たって」。もしかして......。


「さすがに気づいてたか。ナスタチウム中尉、ベルセリオン特務尉官、休日はおしまいだ。今をもって315レーヴァテイン大隊は、占領された【ミハイル連邦領カーラグラード】奪還支援のため出撃を行う。仕事の時間だ」



あまり休日という雰囲気ではありませんでしたね(汗)

ですが、この軋轢とその解消はどうしても描きたかった次第です。


次章からミハイル連邦の飛び地、【カーラグラード】へ315大隊は進撃を開始します!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ