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神との戦争  作者: たにどおり
【神との休日】
36/64

第36話 休日返上!


 軍人たるもの銃を撃つだけでなく、何事にも対応できる能力が必要とされる。

 陣地構築、体力錬成、"上官からの無茶ぶり"。強いて言えば今回は3つ目にあたるのだろうか......。


「ねえねえエルド! このフードコートってとこ、好きなお店から買ってきて良いのよね!?」


 ラインメタル少佐からの命令(おねがい)を了承した俺は、賑わいに満ちた帝都の『ショッピングモール』へ訪れていた。

 普段ならあまり縁のない場所だ、ならなぜ来たか? 付き添い......っというか連れてこさせられた2人の神がその証左である。


「節度をわきまえろテオ・エクシリア。ジークから目立つことはするなと釘を刺されているだろ」


 テオとベルセリオン、この2人に休日帝都を満喫させてやってくれというのが、今回俺に与えられたミッション。

 さようなら安寧(あんねい)の休日、こんにちはクソったれの理不尽よ。


「では、私もこいつを見張りがてら食事を買いに行く。エルド、席の維持を頼んでいいか?」


「ん? ああ、了解した」


 俺の予想とは反対に、ベルセリオンはとてもおとなしくしており、はしゃぐテオを逆に(いさ)めるくらいだ。

 何があったのだろうか、言動もやたらとラインメタル少佐を気にしている。


 なんにせよ、アルバレス中尉がいたら「ありゃ大尉! 女の子を両手に携えて、マジハーレムじゃないですか!!」とか絶対言われてた。

 まあ、315大隊も今日はほぼ全員休み。休日返上は俺くら――――。


「何をブツブツ言っている......、ほら、買って来たぞ」


「うおおッ!?」


 首筋にヒヤリと冷たい感触が走った。


「ちょっ! どうしたのエルド!? ベルセリオン! あなた何したのよ」


 振り向けば、飲み物を持ったベルセリオンと、バーガーセットを預かるテオが立っていた。


「ズボラの首に飲み物を当てただけだ、目も覚めただろう?」


 えげつないことをしてくれる、こないだのコーヒーといい俺はそんなに腑抜けて見えるか?


「ああバッチリ覚めたよ......、さっさと置け」


 殲滅すべき悪の権化(ごんげ)め! 絶対仕返すと胸中で誓い、とりあえずの昼食。

 こう見ると、本当に2人は神なのかと疑ってしまう。いざ私服になるとそこらの高校生とさして変わらん。


 ハンバーガーをがっつく元執行者に、俺は雑談を持ち込んだ。


「なあ、お前らの居た『アスガル』っていうのはどんな所なんだ?」


 軽い気持ちで聞くと、ジュースを喉へ流し込んだベルセリオンがまず答える。


「――別世界と言った方が早いな、だがこの世界とは古来より繋がりがあったと聞く。ある時代では、人類からもよく崇められていたらしい」


「そうね、私も主からそう聞いたわ」


 テオが続けた。

 思えばこのような公共でする話ではないのだが、気になったのでしょうがない。一応ICレコーダーは起動してあるからあとで纏めてみよう。


「なるほど、っていうかそんなアッサリ話していいのか?」


「マズいだろうな。だからこそ、私はあの時殺されかけたんだろう」


 氷をストローでいじりながら、ベルセリオンは感慨もなく言った。

 案外、槍で貫かれたことを怒ってるのかもしれない。......当然だが。


「そうか......、じゃあもう1つ聞きたいんだが」


 テオとベルセリオンが2人して顔を上げた。


「お前らのいう『主』ってのは何なんだ?」


 場が固まる、いや、凍てついたというべきだろうか。

 テオはあちこちに目を逸らし始め、ベルセリオンはリンゴジュースの中身を飲み干すと、端正な顔を向けた。


「分からない」


「はッ!?」


 思わず叫ぶ。

 分からないだと!? 詠唱にすら出てくる単語が?


「分からないって......どういうことだ?」


「うーん......何て言えばいいんだろ、主に色々教えてもらったっていう記憶はあるんだけど、思い出そうとすると雲が掛かったような感じで」


「私も直接会ったことは無い、だが、刷り込まれたように記憶や意思は存在する。お前ら人間を殲滅せよ......とな」


 なんてことだ......。

 ここで聞き出せればと思ったが、連中の情報統制は思いの外しっかりしているらしい。


「まあそんなつまらないの置いといて! 食べ終わったんなら早く行きましょう! 私まだまだ寄りたいとこあるし」


「同感だ、ジークから貰った軍資金を使い果たしてやらねばな」


 情報収集に半分失敗した俺は、泣く泣く彼女らの休日に引き戻されていったのであった。



【ICレコーダー】

音声等を録音する機器。

※和製英語であるが、そこはスルー願いたい。

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