第27話 クソったれの化物へ銃弾を
「久しぶり、クソったれの化物よ。――そして還れ」
銃口が瞬く。
不意打ちに近い形で、俺はライトマシンガンの弾倉に残っていた弾丸を撃ち尽くす勢いで引き金を引いた。
我々がこの街へ来た本来の目標が出てきたのだ、撃たないバカはいない。
合わせて、部下も一斉にワイバーン級レクトルへ発砲。
煌めく曳光弾が火花を散らしながら頭部を叩き、中隊火力を集中させた。
以前片目を潰されたのが聞いたか、ヤツは再び翼を広げる。
「02から33! 釘付けにしろ! 重機関銃でワイバーンを狙え!!」
塔に陣取る重機関銃手へ、掩護射撃を要請。
12.7ミリ徹甲弾が、音速の約3倍という馬鹿げた運動エネルギーをもって、1000メートル先から正確にワイバーンを殴りつけた。
「ゴギャアアアアアアアァァァァァッッ!!!!」
堅牢な甲殻にヒビが入り、確実にダメージを与えていると確信できた。その隙に箱型の弾倉を交換し、チャンバーへ初弾を押し込む。
目標は2、ワイバーンとそれを付き従えし執行者だ。
「侮るなよ人間共、浄化を受け入れられぬというならば、強制執行するまでだ!」
こちらのリロードと平行して、ベルセリオンがその右手に幾何学な紋様を浮かべた。
「彼の地にて讃えられん、求めるは主の偉大な祝福を受けし剣、いでよ――《グランドクロス》!!」
虫唾が走るような詠唱、現れた剣はテオが持つそれと全く同じ、小柄な彼女の身の丈はあろう光沢がかった神器。
「――神罰を受けよ」
「ふん、やってみろ」
装填が終わった瞬間に発砲、分速100発にも登る5.56ミリ弾をライトマシンガンから吐き出す。
それでも......いや、やはりというべきか。ベルセリオンへ向かった弾はほぼ全てがグランドクロスに弾かれた。
「小賢しい! ワイバーン!!」
重機関銃に抑えられていたレクトルが、315大隊目掛けて大口を開け、灼熱の業火を吹き出した。
すぐさま魔導ブーストを使用しての回避、石畳が焦げ上がる熱量は恐ろしいが、ナパーム弾と比較すれば酸素低下も低く、粘着性でもない。
「だああああッ!!!」
宙高く飛んだテオがワイバーン級を飛び越え、ベルセリオンへ肉薄。硬質で甲高い音が響いた。
激しい白兵戦が始まる、目にも追えない速度でぶつけ合う剣筋は、他の一切の介入を許さない激烈なもの。
「ナスタチウム中尉!」
「了解です!」
ハンドガード下部のグレネードランチャーを使用、40ミリ擲弾が立て続けにワイバーンを襲った。
「ギュアアアアアアッッ!?」
爆炎が巨体を包んだ時、警戒に当たっていたラインメタル少佐から通信が飛びこんだ。
『レーヴァテイン01より大隊総員へ告ぐ、南西方向よりキマイラ級レクトルが接近中だ。数は30、第1中隊は私と共に迎撃。2、3中隊はワイバーンと執行者の相手だ』
「なっ!? 1個中隊では危険過ぎます! せめて友軍と合流を......」
『大尉、人手不足は否めんが、こちらはこちらで対応する。そっちは任せたぞ』
【グレネードランチャー】
名の通り榴弾を発射する。
本話ではアサルトライフルの下部に装着し、多目的に使用している。