表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神との戦争  作者: たにどおり
【グランソフィア防衛戦】
19/64

第19話 展開開始


 外へ出た俺達を最初に出迎えたのは、錯綜する市民と鳴り渡る警報音だった。

 車道は出動する帝国軍部隊が絶え間なく流れ、いかに切迫しているかが分かる。


「我々315大隊は民間人を市街中心の大聖堂に誘導しよう、あそこには昔から、信者を匿うためのシェルターが作られていると聞く」


 見れば、街を見下ろすように豪奢(ごうしゃ)な建造物が佇んでいた。

 なるほど手前には川、大聖堂自体も高台にあったりと、守るには最適と言って良い立地だ。


「了解しました、自分は中隊と合流後、速やかに任務を開始します。テオ、お前も来い!」


「えっ!? あ、うん。分かったわ」


 俺はテオを引き連れラインメタル少佐から離れると、部下に装備を持ってくるよう命じるのと並行して、合流地点を指示する。

 まだ敵が来ていないからか、幸い民衆はパニック状態に陥っていないようだ。


 組織だった誘導を行えば、円滑な避難も可能なレベルだろう。

 間もなく指揮下の中隊と合流し、俺は頼んでいた装備一式を受け取った。


 命令を素早く飲み込み、迅速に展開できる彼らは、帝国最強の即応部隊に相応しい練度を有していると再確認する。


「ありがとう軍曹、即応旅団からの要請はさっき話した通り、まず住民の避難誘導だ。他部隊と連携して事に当たるぞ」


「了解です大尉」


「それからテオ、使うことは無いかもしれんが、念のため"これ"を《コローナ》に入れておいてくれないか?」


「え? って何これ重ッ!? こんなの入れたら私の剣が入らなくなるじゃない!!」


 テオに渡したのは《84ミリ無反動砲》、いわゆる対戦車火器だ。

 重装甲の目標に対し大きなダメージを与えられる、いわば俺達歩兵の切り札。

 子柄な彼女がよく持てるなと思ったが、そういえば元執行者とか言ってたっけか。


「お前の剣じゃ重装甲相手にキツイだろ、いざとなったらそれを撃て。1発限りの使い捨てだから大切に使えよ」


 この数日で、テオには各種火器の扱い方を叩きこんでいる。

 兵士までとはいかなくても、予備知識を入れているだけで生存率は上がるのだ。


 俺がアサルトライフルの他、多用途機関銃を背中に背負っていると、何やら横でテオが無反動砲をいじり始めた。


「セーフティを解いて......、スコープで狙いを定めて、後ろに誰もいないことを確認、よし! 最後は引き金を――」


「おい今撃つな! 操作を覚えてたのは褒めるから、本番以外でセーフティを解くんじゃない!」


 プウッと頬を膨らませながら、筒型ランチャーを下げたテオが、右手にハマる指輪へその火砲を収納。

 代わりに、彼女の手には光沢のある鋭利な剣が握られていた。


「よし、準備はできたな。これより避難誘導を開始す――――」


 言い終わる前にそれは起きた。街の外縁付近で、大気を揺らす爆発が発生したのだ。

 しかも1つではない、いくつもの青白い光が弧を描いて住宅街に着弾。立て続けに地面を揺らした。


『こちらレーヴァテイン01、悪い報せだ、敵による砲撃が開始されたらしい。フォルティス大尉以下第2中隊は、至急展開中の旅団と合流、敵情把握を行ってくれ』


 砲撃だと!? まだ民間人のいる市街地に? 国際法で禁止されている行為を平然とやる辺り、ヤツらは本当に民族浄化を企てているらしい。

 いや訂正、相手は国際法に縛られない自称神だ。人間の枠に収めようとするのがそもそもの間違い。


『02了解!! 任務を変更、第2中隊はこれより前方偵察へ向かいます』


 俺はテオと部隊を引き連れ、混乱へ転落したメインストリートをひた走った。


【無反動砲】

発射と同時に反対方向から物体や爆風を飛ばし(これらをカウンターマスとも呼ぶ)反動を軽減する対戦車火器。


テオが後ろに誰も居ないことを確認していたのは、そのカウンターマスが人に当たると非常に危険と教えられていたから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ