第2話
「正座」
勇者は最初からクライマックスだった。いきなりなんて言い草だと思ったが、体は正直で勇者が言い切る前には完璧な正座を披露していた。
助けを求めて修練場の周囲を見渡してみたが既に誰の姿もない。
「なんで・・・なんで・・・」
勇者はプルプル震えている。なんかスライムみたいで可愛いなと場違いな感想を抱いてしまった。
「なんで武器がスポーツチャンバラなんですか!!」
やっぱりアウトだったらしい。
勇者が折れた相棒を指差して激怒した。
くそっ!オージの奴、何が「お前ならどんな得物でも大丈夫だろ?」だ。半笑いだったじゃねーか!
しかし、今はクソ王子に文句を言ってる場合じゃねー。リアルタイムでピンチすぎる!
「だが、考えてもみてくれ。確かに俺の相棒はスポチャンだったが、ちゃんと打ち合えていただろ?」
「・・・スポチャン命名は置いといて、勝負になっていたことは確かですね。スポチャンで。」
「だろだろ?」
「ホント、ヒトって頑張ればなんでもできるんだなーっておもっちゃいました」
やけに褒めてくれるではないか。俺も嬉しくなってしまう。
「でも・・・でも・・・」
ん?勇者がまたプルプルしだしたぞ?
「でもこれはナイんじゃないですか!?」
2アウト。追い込まれてしまった。
やっぱり勇者は納得していなかったようだ。
勇者は俺の相棒を一瞥して、
「だいたい、その剣?はなんなんですか?」
「俺の相棒エクスカリバーだ」
「エクスカリバー!?それはボクのものなの!」
はい3アウトー。しあいしゅーりょー
そういって勇者は自分の手に剣を顕現させる。
これが勇者のエクスカリバーか。勇者といつも共にあり、勇者の呼び掛けでどこであろうと顕現する聖剣である。
だが、俺の相棒とどっちが上かな?と挑発的な視線を向けてみる。
「なんで勝てると思ったの?考えるまでもないでしょ!」
今のところはそう思っているがいいさ。だが、いつか俺の相棒がお前を越えてみせる!
「なんかカッコいいけど違う!」
勇者はヒートアップし、説教はこの後3時間続いた。