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思い出す前に、死んじゃいます☆

あと少し……

「忘れてしまったままなのですか?」


だから、何を?


「あ、あのさ…スッゴい今更なんだけど、オレたち会ったことあったっけ?」


ホント今更な質問だ、と我ながら呆れた


「いいえ、ありません」


ねぇのかよ!


この質問に少なからず期待を込めていただけに、メイドのキッパリ発言に再び眩暈がした


言いやがった!お前、そりゃねーだろーが……


一体、何が言いてーの?!

会った事ないんだろ?なら今までの発言おかしくね?


オレはゲンナリしながらメイドを睨み付けた


「じゃあ、覚えてるも忘れてるもなくない?!バカにしてんの?」


確かにオレは勉強の成績は悪くないんだけど、頭がキレるか?と、言われたら自信は無い!

でも、これはないだろう?いじめか?苛めにあってるのか!?オレ!


「滅相もありません!ご主人様を謀るなど、絶対致しません!!」


たばかるって…


メイドは力一杯否定して真っ直ぐオレを見つめ返している。嘘を吐いている表情ではない様だが、いかんせん話が噛み合わない


「あのさ、アンタ自覚あってやってる?(あってやってたら、それこそ最悪ダケど…)言ってる事が支離滅裂、矛盾だらけ」


肩を竦めるオレに、メイドは何やら確信めいたように呟いた


「やはり、お忘れなのですね……」


また同じ台詞……いい加減腹が立ってきた


「だぁーから、何をっ… …‥‥な、何持ってんのっっ??!」


見れば、悲しそうな表情をしたメイドの手には、絶対数十キロはあるであろう、どでかいハンマーが握られていた


オレはソレを目の当たりにして、ツッコむ事すら忘れて愕然となる


「思い出して下さい。我々の事、前世の事を… 」


前世?! ソレ美味しい?

今は彼女の言動を聞いている場合じゃない


「そ、そそそソレっ どーすんのかしらぁ?!」


震えて自然と大きくなる声。言動も混乱に乗じて変になってても、この時のオレの心情を考えたら仕方なかった


動揺して壁に背中を張り付けて、それでも尚、無意識に後退ろうとする体は正直さんだ。ドアまで蟹歩きで辿り着いても逃げるまでの余裕はない


背中を見せたら、即!

殺さ(ヤラ)れる!!


これはオレが長年培った動物的直感……そんなものに助けられた覚えもないが、持ってるのも怪しいモンだが、それでも今だけはその直感が警告音を鳴らしていた



 …―――逃ゲロ




(何でオレ、部屋のドア閉めちゃったんだぁ?!むしろ、二人きりに部屋に閉じこもった時点でバカだ、オレぇ!!外に逃げれば良かったじゃんー!!)


大ッ後・悔ッッ!!



メイドの顔には笑顔が戻っている。さっき迄可愛いと思っていたソレは、今では死神にしか見えない。ニコやかにすればするほどその恐怖心は深くなる


「ちょ…やめ……」


ハンマーを軽々振り上げるメイド


実は結構軽いのか?片手で支えてるし。…でも行為に変化があったわけじゃないのでオレの危機が変わったわけじゃないし


「大丈夫です。ご主人様」


なにが?


蒼白するオレは、これから彼女がやろうとしている行為を想像しながらも、片隅の何処かで、よもやそんなこと…と鷹を括っていた。

そんなオレの信頼(?)を、この女は次の瞬間見事に裏切りやがったんだ


「今、思い出して差し上げます!!ご主人様っ」


「ひっ 」




ドゴォ…っッッ!!



ヒクッ

「‥‥‥‥」


木片が飛び散り、その床にはハンマーの半分が埋まった状態にあった。オレは顔を引きつらせ、硬直しながら目を見開いてズルズルとドア伝いに崩れた


誰が軽々だって?


(ハ…ハハ……鼻、擦った‥‥‥)


咄嗟に逃げ様もないその僅かなドアと自分の距離を、それこそ一心同体とならんばかりに体を押しつけて、間一髪彼女からの攻撃を避けた自分に賞賛を送りたい


オレが座り込んだ股の間の破壊された床とそこに埋まるハンマー、その状態だけで攻撃の威力を物語るには充分だった。

これが直撃していたら‥‥‥


ゾッとした


このハンマーも並みの重量でないのは一目瞭然、それを片手で振り回すこの美女は……


こんな恐怖心に襲われているオレに、この女


「あら、避けてはいけません。ご主人様」


キョトンとした様子で、さも当たり前のようにオレに言ったのだ


思わずカッとなる


「さけっ… こっ、殺す気か?!」


叫んだオレに、メイドはコロコロそれこそ可愛く笑うのだ


「イヤですわ、ご冗談を。ちょっと頭にショックを与える程度ですわ。コレで思い出すはずです。

さぁ、今度は避けないで下さいませっ!!」


再び振り上げられるハンマーにまたもやオレは絶叫した


「ギャアアァァァッ!

どこがちょっとジャーッッ!!死ぬーッ!」


グワッシャッ !!


「はぁ ハァ ハァ ‥‥‥」


あるのは恐怖。

それ以上のものなんて無かった


ガクガク震えるオレは、自分が案外反射神経が良かったことを知る。この時のオレはそんな事を実感している暇などなかったが


今度はしゃがんだオレの頭上ギリギリにハンマーが背後のドアにめり込んでいた


(ぜっ、絶対当たったら即死っ ショックどころか、あの世へレッツらGo?!)


「‥‥‥ご主人様ったら……」


さも、聞き分けのない子供に対するような目で見下ろされても、今のオレがした事は憤慨するより、逃げる事だった


めり込んだハンマーを軽々引っ込抜くメイドの隙をつき、抜かしたと思った腰を叱咤して素早く立ち上がり、半壊したドアを開けて部屋から逃亡した


「! お待ちなさいっ、ご主人様ー」


しかし、メイドも反応は早い。直ぐにオレを追い掛けて来る。‥‥‥ハンマー持って♪


「ぎゃあーっ 殺されるぅ〜!!」


何が怖いって、なんでこの状況で笑ってるんだよ!あの女!!


「ご主人様、何故逃げるのですか?」


「逃げないでかぁーッ!!その質問が既にミステリーだっ テメェ!!状況考えろ!」


追われてんだよっ、オレは!口も荒れる


なのに、追い掛け回す方は難のその


「ご主人様ったらダンディーですね♪ユーモラス抜群ですよ。

ほほほ、このような重さでご主人様がどうにかなるわけないですよ?」


ドゴォッ


「‥‥‥‥。(カベ…一応コンクリで出来た壁……そんなトコに軽々穴掘っといて、どんな解釈だよ!全然説得力無し!それで死ななかったら、それこそオレが化け物だ!…死ぬ、絶対死ぬ!)イヤだぁー!殺されるぅ〜、メイドに殺されるぅ〜っ!!」


情けないなんて言ってられなかった。嘆きながら階段を駆け下りるオレ!

と……?


 ‥‥‥階段を軽やかに‥‥‥え〜…と‥‥飛び下りる‥‥

…―――メイドォ??!



オレは一瞬、驚きで足を止めて彼女の一挙一動を見守ってしまった


なんと、メイドは階段の最上部から飛び下りる(上がる?)と、駆け下りていたオレの頭上を2回転して…


‥‥‥‥

(ウソ… )




スタッ   10.00 満点

美麗なフォームで一階に着地


(うん、見事な運動神経だ。スカートから覗いたレースの間の脚線美のガーターベルトがセクシーで……って、見惚れている場合じゃない!

鼻血モンな状況に喜んでる間に、追い詰められたあぁっ 絶対絶命ッ こいつこそ地球外生命体!あぁ…さよなら、オレ!!)


落ち着いて考えてみると、オレもとことんアホなんだな…何やってんだよ!オレ〜っ


ここはもう覚悟を決めて……




 …って、んな訳あるかぁー!!


待ち受けるハンマー片手のメイドさん。追い詰められたオレ


でも、もう自棄だ、諦めてたまっかよ!


野球バットのようにハンマーを構えるメイドにオレは突進を試みる


「うおぉぉー!」


階段を一気に駆け下りる


その入り口に仁王立ちのメイド、その目は爛々輝いている


「必ず的中させます!待っていて下さい。さあ!!」


「さあ」じゃねーっ 死ぬっつーの!

気合い入れてんじゃねーよ!!


打たれる直前、オレはその一撃を辛うじて避け、メイドの横を擦り抜ける


(やった!このまま外へっ!)


「あっ… ダメッ

お待ち下さいっ ご主人様!いけませんっ、外は……っ」


慌てた様子のメイドの声を背中に受けて


(誰が止まるか!!外で警察に突き出してやるっ)


高笑いを抑えて玄関の扉から外へ脱出


「やった!今度こそ…っ 」

実は隠してたんですが、コレはファンタジー要素の含まれるスペクタクルストーリーだったのです。

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