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たった1人の英雄奇譚   作者: 葵流星
第2章「歪み始めた日々」
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「犯人」

たった1人の英雄奇譚

第8話


「はぁ…。」

「あれ、死体だったのか。」

「どうりで…。」


部屋の中で1人呟いた。

5月ではあるが…夜は肌寒く感じる。

気温ではない別の要因もあるだろう。


死体を見るのははじめてではない。ただ一つ気になることがある。


「シルバーバレットはどうやったんだ…。」


あの火災の原因は、バックドラフト。

現場にあった練炭、一酸化炭素が不完全燃焼を起こしていた。そこに、昨日会った役人がドアを開けたことで急激な反応が起こったのだろう。

しかし…。


一酸化炭素で充満した部屋で、どうやって撃ったんだよ…。


いや、もういい、今日のことは忘れよう。

何かあったらまた、警察か、消防が来るさ。


………。


………。


………。


彼女を殺してから一日が経った。


「ふふっ。ははははは!。」


殺したのは私だ。しかし、警察はシルバーバレットが犯人だと思っている。

何が、シルバーバレットだ。

無論、こちらは都合がいい。


「逃げる、いや、逃げない方がいいか…。」


シルバーバレットの被害者を、装っていればいい。

そうすれば、大丈夫だ。犯人だと誰も思いはしないだろ。現にそうしたのだから。


「ははっ、こいつはいいねぇ!。」


一人部屋で、笑っている。まあ、いい今日はあのうるさい女もいない。勝利の美酒は飲んだ。


「ははははは、ははははは!。」

「…。」

「…。」

「…えっ。」


物音がする…。自分以外誰もいないはずなのに。


咄嗟に、武器をとる。

妻を殺した凶器そのものだ。


「なんだよ!なんだよお前!。」


「ひぇっ…。」


頭に冷たい感触がある。


正確には、あっただか。


…。


…。


…。


ジャラッ。


薬包が落ちる。


そして、消えていった。


辺りに赤い花びらと白い本を残して。


…。


…。


…。


「おはよう、紗奈♪。」

「おはよう、お兄ちゃん♪。」


時計を見る。

昨日のことがあったせいか、寝坊した。

遅刻はしなさそうだが…。

紗奈が起こしに来てくれた。


「ほら、早く。」


俺を気遣っているのか明るく振る舞っているように見える。


情け…ないな、俺。


「わかったって。」


「次のニュースです。」


また、昨日と同じ内容だ。


「えっ、ちょっお兄ちゃん?。」

「どうした?。」

「いや、いつも私がチャンネル変えるから…。」

「…そうか。」

「犯人、捕まるといいね。」

「ああ、紗奈も気をつけろよ!。」

「うん。」


紗奈は、どこか遠い目をしていた。


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