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こじらせて異世界  作者: 暖目直視
8/9

村長マッシモとあいさつ

このカリンバ村の村長のマッシモさんがオレ達のテーブルにやってきた。


「ふぅ、年は取りたくないもんですな。半日見回りに出ただけで、もうクタクタですわ」

首を左右にゴキゴキ鳴らしながらガハハハッと笑ってる。


もみあげからアゴまでつながった髭には白いものが混じり、頭髪も額からかなり後退しているのだが、迫力のある顔に大きな笑顔のおかげで年齢よりも若く見える。


「それで、ドーラ様、こちらの女性ですか?」


「うむ、そうじゃ。このラウラ様がワシが守護しておったお方じゃ。かねてからの話通り、ここで面倒を見させていただくがよいな」


「まかせて下さい。まずは、この建物の中の部屋にしばらく住んで頂いてこの村に慣れていただきましょう。経験のある産婆もいるし、いいお子さんを産んでくださいよ!ガハハハッ!」


ドーラさんとラウラさんの目があって頷きあっている、言葉のわからないラウラさんの為に念話で通訳しているみたいだ。

オレにもできるのかな?『模倣』と念じんて二人に注目してみると、脳の中で小さな光がチカチカしているのが見えた。これもあれか、魔力と同じで使い方が解らないとできないパターンか。


「そして、このドーラ様を泣かせたこのひょろっとした男前は何者ですかな?」

マッシモさんがジロッと見たその目は笑っていない。顔はニヤニヤしてるのに。誰だよ男前って?


「そいつは、ヒロと言ってな、偶然拾ってきた。心配はいらんぞ。ヒロはダイスケ様と同じで異世界から来たのじゃ」

えっ?ドーラさん、そんなに簡単にオレが異世界から来たとかバラしても大丈夫なの?すっごい怪しまれると思うんだけど?それとも異世界からやってくる人って珍しくないのか?


「ガハハハッ、拾ってきましたか。異世界とか普通なら信じられない話ですが、ドーラ様がおっしゃるならそうなんでしょう!」


あれ?いいのかスゴイ信頼されてるなドーラさん。

オレが不思議そうな顔をしているとマッシモさんがこの村の事情を話してくれた。


「詳しい話は後日するがな、この村は特別なんだよ。俺がまだ髭もなくて髪もフサフサしてた頃に、山の向こうにあるダンジョンで大規模なスタンピードが起きたんだ。」

ダンジョン?スタンピード?いくつかわからない単語があるけど、後でまとめて聞こう。


『ダンジョンというのはモンスターが出る洞窟や廃墟のことじゃ。スタンピードはダンジョンでモンスターが大量発生することじゃ」

と、思ったらすかさずドーラさんから解説念話きた。ラウラさんにも通訳してるだろうに。

ドーラさんには”ありがとう”の視線を送った。


「そのスタンピードの時に山を揺るがすような大きな音と共に山のこちら側にもダンジョンへの穴が開いたんだ。しばらくしたら土煙と共にモンスターの大群がこのにやってくるのが見えたんだ。あの時はもう俺たちは終わりだと思ったな」

「この村は一応ラバッザ王国に属しているんだがよ、兵隊も何も派遣されてないので自分達で村を守るしかないんだが、さすがにあの数のモンスター相手じゃどうしようもなかったな」

「それでも女子供を逃がす時間位は作ってやろうと、俺も含めて戦える奴は全員武器を持って村の外で迎え討ったんだが、いかんせん多勢に無勢だ。あっという間に蹴散らされて、モンスター共が村の方へ向かってな。もうダメだ。神様!と祈った時に巨大なレッドドラゴンが現れたのさ」

「向かってくるモンスターを手で払い、足で潰し、尻尾で薙ぎ払い、まさに無敵だったな、呆然と見入ってた。そしたら頭の中に話しかけてくるじゃないか『生きているならモンスターから逃げろ!20を数えるたら火を吹くからの!』ってな。俺達生き残った者は必死に走ったよ。その後の光景は一生忘れられないな。ドラゴンの口から放たれた火の柱がモンスターの群れの中心を走ったらそこから爆炎を上げて破裂していくんだ。モンスター共が、中には小屋くらいの大きさのモンスターもいたが、そいつらが肉片となって飛び散っていったんだ。破片は俺たちの近くにまで飛んで来たんだがまだ煙を上げていてな。俺達は、モンスターよりも火事の方が心配になっちまったよ。ガハハハッ!」


ドーラさんに抱きしめられて生きているオレは神に感謝した方がいいのかもしれない。


「そのドラゴンがだれあろう、ドーラ様よ。モンスターを一掃された後にヒトのお姿になられて魔法で火事も消して下さったよ」

「俺達は、さすがに少し怖かったが、命の恩人だからな。なにより素っ裸だったから村に迎えて服を着てもらって、酒と料理でおもてなしをしたのよ。言葉も通じるし、乱暴もしないとわかるとみんな打ち解けてな。そこで聞いたのよ。ドーラ様がとある女性が目覚めるのを待っていらっしゃると。」


ドラゴンからヒトになった時に服を着ているのは、何か、魔法か?それも魔法なのか?


「それ以来、ドーラ様がゴーレムや魔性道具を村の為に作って下さって、おかげでこの村は非常に便利で暮らしやすくなった。だが、問題も起きた」


「ドラゴンがいる村ってことで、徴税人がやってこなくなっちまったのよ。もともと、ここら辺は領主にとって価値のない放っておかれていた地域だったんだけど、少ないながらも税は払っていたんだ。それが徴税人が怖がって来なくなった。そうなると領主もだまっちゃいられないから何度か討伐隊を送って来てな。そいつらはドーラ様にかなうわけもなく撃退されたんだが、あんまりゴタゴタしたくねえし、ドーラ様に頼りっぱなしも良くねえしってんで、こっちから年に一回、北の街に税を納めに行く事にしたんだ。色々、交渉して安くしてもらってるけどな」


「最近は大きな問題もなく、平和にやっている。これも全てドーラ様のおかげだ。だからドーラ様が連れてこられたあなた方も我々にとって重要な友人だ。よろしく頼む」

マッシモさんが差し出した手は大きくてゴツゴツしている、皮膚も分厚そうだ。オレはその手を握って体を鍛える決意をする。

モンスターが当たり前にいるような世界では、戦う術を持たないと、トラックに跳ねられるまでもなく死んでしまう。

そして、死んでしまっては、ドーラさんにオレの料理を食べさせられない。

あの幸せそうに食べる姿をいつまでも見れるように強くなりたい。


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