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こじらせて異世界  作者: 暖目直視
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さあいこうキッチン

魔力量を調節しながら”水浴び”にならないように魔法の練習をしていたら目的の村が見えて来た。

ずぶぬれになったオレをラウラさんが魔法で乾かしてくれた。

乾いたはいいが、ジャケットもパンツもかなりヨレヨレになっているので、できたら着替えたいくらいだ。

あの村で手に入れられればいいんだけど。


ドーラさんは村を囲っている丈夫そうな石組の外壁の近くに降り立った。

こんな大きなドラゴンが飛んできたら騒ぎを起こすのではないかと心配したが、やはり門の方から武装した二人が駆け寄ってくる。


「ドーラ様!ご苦労さまです!」


「うむ、マテオ、ご苦労じゃの。今日は客人を連れてきた。二人ともワシの知り合いでラウラ様とヒロじゃ。しばらくここに世話になるのでよろしくな」


「はい!ドーラ様のお知り合いでしたら何も問題ございません。いますぐ門を開けますので」


重そうな扉が音を立てて開き、中に入る3人。


あちこちから声がかかり、それに答えるドーラさん。


「ドーラは彼らの言葉を話せるのね。あれはラバッサ国の言葉かしら?」


「そうじゃここではラバッサの言葉が使われておる 。ワシも父様のおかげで劣化版の≪言語理解≫があるからの」


「何を言ってるかはわからないけど、あなたが歓迎されているのはわかるわ」


「あぁ、うむ、ここの者達は皆人懐っこいのじゃ」


「それに、外壁上にブロンズ像みたいなのがあったけど、あれってドラゴンじゃないの?」


「ほら、そこじゃ、そこで飯が食えるぞ!」


指さした先の大きな3~4階立ての建物で、1階部分の外側はテーブルとイスに囲まれていて、多くの人で賑わっている。


建物の中に入っていく時にも、「姉御」や「ドーラ様」にまじって「龍神様」とか、「聖ドーラ様」とかがたまに聞こえる。


ラウラさんのドーラさんを見る目がジト目になってきている。


「ラウラさん、聞き間違えかもしれませんが、ここの人たちから「龍神様」とか「聖ドーラ様」とか聞こえるんですけど」

小声でラウラさんに伝えると、彼女も頷いてくる。


「いくらドーラが村人を助けたと言ってもこの歓迎ぶりはありませんわ。まるで英雄を迎えるみたいですわね」

やはり小声で返してくるラウラさん。


そこへひときわ大きな声がして、料理を手に持った女の子が近づいてくる。

「お姉様!今日もいらして下さったのですね!」


「ロサーナ、手が空いたらこっちに来てくれるか。頼みがある」

「はい!よろこんで!」

元気な返事と共に二パッと笑って小柄な少女は料理を届けに器用に人々の間を抜けていく。


ドーラさんは店の一番奥にある6人位座れそうなテーブル席に二人を案内して座らせた。よく見ると、テーブルも椅子も他の物と比べて重厚でキレイな細工も施されている。


「お姉様!どんな御用でしょうか!?」

すぐさまやってきたロサーナさんが元気いっぱいにドーラさんに尋ねる。二人の距離感がすごく近い。

ウエスト周りがこげ茶でスカートが深い緑のビアメイド服を身に着けた少女の身長はそんなに高くなく、椅子に座ったドーラさんと同じ高さにある顔は今にもキスできそうなほどだ。


そんなロサーナの頭を優しくなでながら、「紹介しよう、ラウラ様とヒロじゃ。頼みというのは、このヒロにキッチンを使わせてやってほしいのじゃ。ヒロは料理人でワシの為にある料理を作ってくれるのじゃ」


「お安い御用です、ドーラ様!ここの物はすべてドーラ様のものですから!」


もうただの人助けでなかったのが確定でしょう。色々問い詰めたい所ですが、お腹も減ったし、後にしましょう。


「では、ヒロ様?こちらへお願いしますね」

ニッコリと微笑えんだロサーナさんの後をついてキッチンへと入っていくヒロ。


中で働いている人たちが作業の合間にチラチラっとこっちを見てくるが、その中の一人に目が釘付けになった。

あれはどう見ても尻尾だよな。ここに来るまでも、お尻の辺りに長い紐かダスターみたいなのを付けている人を何人か見かけたけど、尻尾なのか。よく見ると頭の上に三角形の耳らしきものまでついている。そういうコスプレかなんかなのか?


「ちょっと、あなた!人が説明してるのにどっち見てるのよ。そんなに獣人をジロジロ見て!感じ悪いわよ!あなたがどこから来たのか知らないけどこの村では獣人は奴隷じゃないのよ!」


マジか!獣人とか本当にいるのか!

「ごめん。申し訳ない。初めてみたものだからつい気になってしまって。オレのいた国には獣人はいなかったんだ」

獣人さんの方にも軽く頭を下げて謝罪する。


「まぁいいわ、許してあげる。お姉様を待たせるわけにもいかないし」

両方の腰に手をあててこちらを軽くにらんでいる。


そして、キッチンを案内されたのだが正直驚いた。

コンロは複雑な模様を施された円形の輪から火が出てくるし、その火力は手前に嵌めてある魔石に触れて調節するらしい。フライパンはミスリルでコーティングされていて焦げ付きにくいとかどんな便利素材なんだ。流しには蛇口があってこれも魔石で温度を調節できるようになっていて、水量も豊富だ。巨大な冷蔵庫の他にも、キッチンの隣にウォークインできる広い冷蔵室と冷凍室まである。

しかも、これらは全てドーラさんが提供したらしい。それを話すときのロサーナさんの自慢げなドヤ顔といったらなかった。

この娘はドーラさんが大好きなんだな。


村の造りや人々の服装から、もっとこう、前時代的な何かを想像していたからこの便利さには驚いた。そしてこの便利さを生み出したのは魔法。本当に魔法が便利すぎるんだが。


食材も驚くほど日本というか地球の物にそっくりだった。

米は日本のより少し丸っこくてほんの少し大きめだけど問題ない。トマトペーストはトマトの風味が濃厚 で自然のコクのある甘味があるので、少しのばして酸味と塩で調節すれば上等のケチャップになる。ベーコンもあるし、香り高いパルミジャーノまである!バターも発酵バターだ。


よし、これなら美味いオムライスを作れる。ドーラさんが喜んでくれるといいな。


魔力の扱いを教わったばかりだったので、まずはロサーナさんにお願いして火の調節をやってもらった。

【模倣】で魔力の流れを見てからおっかなビックリ魔石に触って調節した所、なんとか火加減を操れるようになった。


鍋で細かくみじん切りにした玉ねぎ、すりおろしたニンニクとベーコンを弱火で軽く香りが立つまで炒めてからコメを投入。透き通ったら水を加えて蓋をする。


炊きあがるまでに付け合せでもと周りを見渡す。コスレタス発見。シーザーサラダに決定。

小フライパンにオリーブオイル注いで、低温で1cm角のパンとステイック状に切ったベーコン、そして後からスライスしたニンニク を入れて焦がさないようにカリッとなるまで揚げ、油から取り出す。


ドレッシングは卵の黄身とレモン汁、アンチョビ、マスタード、ほんの少しのおろしニンニク、塩をよく混ぜてから撹拌しながらオリーブオイルを少しづつ足していく。このオリーブオイルは爽やかな草原の香りがして焼き魚に塩と一緒にかけて食べたら良さそうな好きなタイプだ。しかし、オリーブオイルだけで作ると苦味が出やすいので量は通常より少なめにしておく。このままだとモッタリしすぎなので牛乳を足して野菜に絡みやすいように調節する。

サラダボウルに近い形のお皿をもらい、ちぎったレタスにクルトン、カリカリベーコン、揚げニンニク、そして薄く削いだパルミジャーノをのせる。ドレッシングは小鉢にいれて、食べる直前にかける。


ご飯が炊き上がったので、ベーコンと玉ねぎを炒めてご飯投入、パラパラになったらケチャップを加えて一気にフライパンを煽る。


「オオーーー!!!」

いつの間にか集まっていたキッチンの人達から歓声があがる。こういうフライパンの使い方をしたことがないのかもしれない。


フライパンを振るってケチャップライスを飛ばす度に声が上がるので調子にのっていつもより多く煽ってしまった。


平皿にケチャップライスをキレイに盛って、後はオムレツだ。


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