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こじらせて異世界  作者: 暖目直視
2/9

捕まったのか

....


......


.........


「.....ロ....」


「タ......ロ.....」


「タナ......ロ...ん」


ん...誰かの...声....が...きこえ...る...?

ここは、灰色のスチール机に、私が座っているのはパイプ椅子か、机の向こう側には見たことのある男が座っている。


「ようやく目を覚ましましたね、タナカ・ヒロさん」

「えっ、なぜ未来の捜査官が...。俺は捕まったのか?」


そう、この取調室のような部屋に俺はあの職質してきた警官と一緒にいる。

「捕まったともいえるね。運命にだけどね。タナカ・ヒロさん、あなたは父親を殺害していますね?」


運命とか意味不明な言葉も聞こえたが、名前もバレてしまっているようだし、しょうがない。

「はい、やりました」


しかし、歩道橋の上から飛び降りたのではなかったのか?

ハッとして自分の体をあらためて意識してもどこも痛いところはなく、着ている店支給の黒服にも汚れた跡はなくむしろキレイすぎるくらいだ。


「えーと、死因は失血死。凶器は刃渡り30cmの牛刀。正面から首をスパッと横に切られたと見られる。かなりキレイな切り口だったらしいね。でも何で正面からやったの?殺すのなら後ろからやった方が簡単じゃないの?」

「それは...誰に殺されるかわかってもらいたかったら。牛刀は切れ味優先で研ぎましたし、衝撃に負けないようにグリップテープ巻いたし、なにより失敗しないようにしっかり練習しましたから。でも、剣道とかやってる人だったらもっとキレイに切れたんじゃないですかね」


何かこの状況はおかしいとは思いながらも質問に答える。

あの頃は父の洋食屋の仕事の後、夜中に神社の裏の林で古い牛刀を居合のように切りつける練習が日課のようになっていた。抜き身で近づいたら逃げられるかもしれないから鞘に入った状態から一撃で仕留めようと思ったのだ。


「それは、カッとなってとかではなくて、計画的な犯行だったって事でいいんだね?」

「はい、殺意はそれはもうずっと以前からありました。父が死んだら自由になれるからそれまでの辛抱だと思ってたんですけど、とうとう見合いする羽目になったんですよ」


一度話し始めるとスラスラと言葉が出てくる。

なにやら興味を持ったような感じで、「へぇ、お見合いですか。それがどうして殺しに?」


「俺は女性と付き合った事ないんです。父が浮気の常習犯だったんですよ。浮気相手がうちまで押しかけてきたり、家の前で大騒ぎになったりで母は大変苦しんで悩んでて。小学生の頃、たまたま父が普段聞かないような甘い声で電話してるのを聞いて母に教えたんです。その後、父は烈火のごとく怒って『この卑怯者が❢』って半殺しにされました。卑怯者はお前じゃないのかと。もうそれ以来女性と話すのも嫌で。」


「そんな父に愛想を尽かしてか、母はとうとういなくなってしまったんです。母がいなくなって人手がたりなくなって、父が『お前が結婚しろ』と。見合いをさせられたけど、結婚なんかしたらいくら父が死んでも自由じゃないし、他人を巻き込みたくなかったから、話が進展しなかったんです」


もともと女性と楽しい会話なんて無理だったんだから話が進むわけがないんだけどね。

「あまりにも進展がなかったからか、父が言ったんですよ。『女なんざ、とっととヤっちまえばいいのに何トロトロしてやがんだ、この玉無しが!オレが代わりにヤっといてやる』」

「結婚しても俺の嫁に手をだすんだろうなとか思ったら、もう無理でした。その日から神社に通い始めて、1週間後に殺りました」


「はぁ、なるほどお父さんの女性関係のだらしなさが原因ですか。それではなぜ今の職場に?」なにやら手元のノートパソコンにリズミカルに入力しながら水を向ける捜査官。


「父を殺した後、妙にスッキリした気分になったんです。父の死体を見てむしろ心が軽くなったくらいで。ようやく父から自由になれたけど、犯罪者ですからね。行ける所も限られるわけで。それで、これを機に女性にも慣れてみようかと。あの風俗店は仕事はキツイ代わりに身元を厳しく聞いてこなかったし、店内や店の持ってる部屋に寝泊まりできましたから。」


お店の上司や先輩は顔が怖く、恫喝や暴力で辞めていく同僚も多かった。俺の場合は父で慣れていたからあまり気にならなかったし、むしろ仕事ができれば褒めてくれた。褒められた事なんてなかったからうれしくて、なんでも率先してやって、また褒めてくれて、俺って人の役に立ってるのかなって思えるようになった。


女性とも話せるようになった。実際に風俗店で働いてみると、プロ意識の高い人が多く、言葉使いもしっかりしていたのに驚いた。実家から外に出たことのなかったオレには彼女たちから教わる事だらけで、「僕」をやめて「俺」と言うようになったのも彼女たちの指導による。いまだに「オ」を高く発音する変な「オレ」だが。以前は女性を意識の外側において「存在しないモノ」としていたのが、今では普通に会話できるようになった。あくまで仕事中で要件がある時に限るが。


「はい、タナカ・ヒロさんの事はこれでだいたいわかりました。では、これより判決を言い渡します。父親殺害と女性不信の罪で異世界追放の刑ですね。」


「..................................................はい?」


ちょっとよく聞こえなかったんですが、判決って取調室で出されるのか?伊勢湾に?追放?それに女性不信って罪なんですか?それにもう女性不信はお店の女性達のおかげでそんなに強くないし。


「異世界に追放です。大事なことなのでもう一度言います。異世界に追放です。」捜査官は右手の中のボタンのようなモノを押す。


「あ、荷台のないトラックにダイブして死ぬとかあなた面白すぎでしたよw」


それと同時にオレは座っているパイプ椅子とともに床に突如として現れた暗い穴へと落ちていった


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