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現実サーガ  作者: 光太朗
6/7

6 「死なないでください」

 その日、桜井姉弟は吉川家に泊まっていった。例によって田中手製のパスタ──鶏とネギの和風ペペロンチーノ──を食し、例によって美琴と有里沙がふたりで風呂に入る。田中に、僕らも一緒に入ろうか、といわれたので、良太郎はとりあえず白髪ホストを殴っておいた。力任せに元凶を殴り飛ばしたことで、不本意ながら、良太郎は幾分すっきりしてしまった。

「美琴ちゃんさ、好きな子とかいないの?」

 同じベッドに潜り込み、有里沙は唐突に聞いた。突然のことに、美琴はわけもなく咳き込む。どうしてこんな展開に。

「す、好きな子、ですか? いませんけど……有里沙先輩は、いるんですか?」

「あたし? あたしは三次元には興味ないからなあ」

 さらりと問題発言をかます。ゲーマーというより、良太郎のいうとおりオタクなのだと、最近では美琴も認識を改めていた。見事な金髪も、ファッションではなく、定期的に行われるというあるイベントで、コスプレをするためのものらしい。美琴にはちょっとついていけない感覚だ。

「良太郎とかどう? ホストは絶対やめときなよ」

「良太郎先輩は、恐れ多くて、とても。でも、素敵なひとですよね。田中さんは……そもそも何歳なんですかね」

「そう! 年齢不詳よね、あのホスト。だいぶオジサンよ、きっと」

 そのいいかたがおかしくて、美琴はくすくすと笑う。

「ね、じゃあさ、ものすごいオシャレして、ナンパされに行こうか。ちやほやされるのって、気持ちいいよ」

「ええ?」 

 ナンパされに行く、という感覚がわからなくて、素直に驚く。知らない男のひとに声をかけられるなどと、想像しただけでそら恐ろしい。

「わたしは、そういうのはちょっと……。有里沙先輩、ちやほやされたことあるんですか?」

「あるわよ。つきあいで合コンとか行くとね。まーだいたいこの髪の色で引かれるけど」

「確かに、驚きますよね、それ」

「あ、美琴ちゃんもそんなふうに思ってたの? 傷つく!」

 他愛のない話をして、笑い合う。

 美琴は、目を閉じた。心から、楽しいと思えた。

「……有里沙先輩」

 少し真面目な声を出す。有里沙は冗談めかして笑った。

「なぁに、愛の告白?」

 田中と同じことをいわれてしまう。美琴は、そんなに告白しそうに見えるのだろうかと考えて、単純に田中と有里沙が似ているのだと思い直した。そんなことをいったらものすごく怒られそうなので、決して口には出さないが。有里沙が田中を嫌うのは、一種の同族嫌悪のようなものもあるのだろう。

「ありがとうございます」

 素直に、礼を述べた。有里沙は、なにが、とはいわなかった。くしゃくしゃと、美琴の頭を撫でる。こういうところは、姉弟でそっくりだ。

「──あたし、なにがあっても、美琴ちゃんの味方よ」

「はい。……よかったです、有里沙先輩に会えて。いくら感謝しても、足りないぐらい」

「終わりみたいないいかたしないで」

 ぴしりといって、真剣な目をする。美琴も言葉に詰まり、そのまま、沈黙がおちる。

 有里沙はくるりと美琴に背を向けた。怒ったのだろうか──もしかして、そのまま寝てしまったのかと、後ろ姿を見つめる。どうしても、礼を告げたかっただけなのに。

「……がんばろうね」

不意打ちでかけられた声は、いつもの有里沙の様子からは想像できないぐらいに、ひどく優しい声だった。

「はい」

 美琴は微笑んで、そっと目を閉じた。

 もう、余計なことは考えず、ぐっすり寝られると思った。自分でも信じられないぐらい、いままででいちばん、穏やかな気持ちだった。


   *


 シルバーのセダンが、高速道路を走っていた。

 朝一で、田中が借りてきたレンタカーだ。良太郎が助手席、美琴と有里沙は後部座席に座り、途中のコンビニエンスストアで購入したスナック菓子を回し食べる。こんな日はさぞ写真が美しく撮れるだろうという、見事な快晴で、もちろんそれだけに非常に暑い日だ。全国的に猛暑日になると、天気予報でも伝えていた。

「いいんでしょうか、なんか、まるっきり遠足みたいですけど」

 控えめに美琴がいうが、他のだれも、同じような感想を持ってはいないようだった。良太郎が身体ごと振り返り、有里沙の手から菓子を奪いつつ、こともなげにいう。

「行き先がゲートタワーなんだろ? だったらどう考えても車がいちばん早いんだから、いいんじゃねーの」

「そうよ、ゲームと融合してるっていっても、これは現実なんだから。使えるものは使うべきだわ。車に乗って、お菓子食べながらラストダンジョンに行くなんて、ちょっとカッコイイじゃない。まあ、もしかしたらラストじゃないかもだけど」

 新たにチョコレートの封を切りながら、有里沙も同意した。田中は運転に集中しているらしく、なにもいってこないが、美琴と同じように思っている可能性は極めて低い。

「そういうものですか……」

 それでもやはり、奇妙な気がした。有里沙に借りたゲームを無事クリアした美琴だったが、ゲームのなかでは、ラストダンジョンといえば、ダンジョンに入るまでにあれが必要、これが必要といわれて奔走し、ストーリー的にもこれでもかと盛り上がって、さあ行くぞ! と突撃していたのに。それが、菓子を食べ、流行りの曲を聴きながら、車で向かうなどと。

 そもそも、魔王が待っているといったからラストダンジョンと定義しているだけであって、美琴たちにとっては初のダンジョン突入となるのだ。これが本当にゲームとしてあったら、美琴でも怒りそうな展開だ。

「世界の融合って、難しい……」

 真剣にそう思った。どちらから見ても違和感のないように溶け合う、というわけにはいかないようだ。とはいえ、有里沙も良太郎も、違和感など感じていないようだったが。

 魔王が待つと告げたゲートタワーは、矢那呉市のお隣の、伊南市の入り口にあるランドマークタワーだ。伊南パークという、季節の花を取りそろえたテーマパークの中央にそびえており、「伊南」にちなんで一七〇メートルの高さを誇る。高速道路から行くと、伊南のサービスエリアからそのまま入れるようになっているため、車で訪れる客が多い。逆に、公共交通機関で行くには面倒な立地だ。最寄り駅からさらにバスで四十分もかかる。

「なにあれ、車ぜんぜん停まってないじゃない」

 有里沙が、高速道路の向こう側に広がる駐車場を見て、意外そうにいった。美琴も左側に寄り、窓から外を見る。いつの間にか、もう伊南市に入ったところらしい。

「春ならともかく、時期じゃねーんじゃねえの」

「だって、いま夏休みよ? こんなんじゃすぐ潰れるわね」

 田中が左ウィンカーを出し、減速してサービスエリアに入る。そのままそこを通過し、スロープを下りてゲートを通り、伊南パークの駐車場に滑り込んだ。

「すっかすかだね」

 田中がいうとおり、広大な駐車場には、車はまったく停まっていなかった。混んでいる日なら、遠くに停めて数分歩かないとパークに入れないのだろうが、シルバーのレンタカーは駐車場のラインを飛び越え、縦横無尽に入り口まで進んでいく。

「これは……お休みってことでしょうか」

 あまりの閑散っぷりに、美琴もつぶやく。そもそも、魔王が待つといっていたのだから、ごくあたりまえに営業しているほうがおかしいのかもしれない。

 しかし、入り口まで来て、警官らしき人影と、一台のパトカーが停まっているのが見えた。車を降り、そちらまで歩いていく。案の定、門はきっちりと閉められ、「立入禁止」という黄色のテープまで貼られていた。

「あんたら、ニュース見てないの? 伊南パークには入れないよ」

 即席テントの下で、二人の警官がペットボトルの茶を飲んでいた。テントには、四方に紫色のタリスマンがぶら下がっている。

「……なにかやってたっけ? 見た?」

 有里沙の問いに、全員が首を左右に振った。極力テレビをつけないようにしていたのだ。伊南パークが休園中などと、見た覚えがない。

「なにかあったんですか?」

「だいたいわかるでしょ。完全にモンスターに住み着かれちゃって、危ないったらないよ。けっこう強いのもいるみたいだから、おもしろ半分で入ろうとかしないでね。さ、帰んなさい」

 立ち上がるわけでもなく、テントの下でひらひらと追い払うように手を振る。美琴でも、そのやる気のない様子がしゃくに障った。その態度はなんだ。

「どーする?」

 良太郎が、とりあえず美琴に聞いてくる。美琴は、説明したらわかってもらえるだろうかと、ほんの一瞬考えたが、すぐに打ち消した。モンスターを倒したいから通してください、などとばか正直にいったところで、受け入れてくれるとも思えない。

「……どうしよう」

 ラストダンジョンに入る前の難関が、よりによって警察の足止めだとは思わなかった。こんなチープな展開でいいのだろうか。

「白の女神──」

 小さな声で、有里沙がつぶやいた。そういえば、真っ先につっかかりそうな彼女が静かに後ろにいたことに、今更ながらに違和感を覚え、美琴と良太郎が振り返る。

「お、魔法使うんだね。さすが」

 飄々と田中がいい、美琴はぎょっとした。

「魔法? いま?」

 確かに、有里沙はウィッチになるといい、魔法書を買ってはいたが。目の前で、実際に魔法を使ってもらえるというのなら、それはもちろん興味があるが。

 しかし、いま、この場面で、いったいなんの魔法を使うというのか。

「あ、有里沙先輩──」

 嫌な予感しかしなかった。早まらないで、といおうとしたが、有里沙はぶつぶつと続けた。

「──青の道化師、黄の咎人……」

 有里沙は、布に覆われたままのロッドを、警官に向けた。

「ソメイユっ!」

 高らかにいい放つ。傍目には、なにが起きたのかわからない。

 しかし、すぐに異変は起きた。テントの下で、警官二人が急にぐたりと椅子によりかかり、いびきをかいて寝始めたのだ。

「お、成功した! すごーい! 気持ちいい! あたし天才!」

「……サツ眠らせるとか、アリなのか?」

「ありなんですか? どうなんでしょう?」

 淡々と良太郎が疑問を投げ、美琴はおろおろと警官に駆け寄る。本当に寝ているだけのようだが、発覚すれば問題になりそうだ。

「アリでしょう。殴ったとかじゃないんだから、いくらでもシラを切れるし。だれもなにもいわなかったらいいのかなーと思って入っちゃいましたーゴメンナサーイ、はい、これで決まり」

 さらりと田中にいわれてしまえば、それもそうかという気がしてきてしまう。有里沙も、大きく頷いていた。

「それより、褒めるとかないの? 魔法って、もっと難しいと思ってたけど、意外とかんたんね。スペルを覚えるのがちょっと大変だけど。これならいけるわ」

 有里沙にしてみれば、せっかく披露した魔法についてだれもなにもいってくれないことのほうが、大問題のようだ。

「あ、もちろん、すごいと思いました。驚きました……そういえば、先輩、いつも魔法書見てましたもんね。勉強してたんですね……。──あれ? いまのこの世界でも、魔法を使うことは、特別なことなんですか?」

「え? うーん、そうね、ふつうは、やろうとは思わないかな」

 有里沙の答えはなんとも歯切れの悪いものだったが、良太郎も同意した。

「存在は知ってても、ふつーは、魔法使おうなんて思わないな。高いからか?」

 説明しようにも、うまくいかないらしい。美琴は、田中に視線を移す。

「もちろん、高いからってのもあるけど」

 田中は肩をすくめた。

「たとえば、銃って武器の存在を知ってても、日本じゃ一般的には手に入れようと思わないでしょ。その感覚に近いかな。それに、魔法っていうのは、ある程度レベルが上がってないと、いちばん初級のものでも扱えないんだ。失敗したら自分に跳ね返るから、リスクも高い」

 その説明で、美琴はやっと納得した。ということは、やはり、それを使いこなした有里沙はすごいということになる。

「かっこいいです、有里沙先輩」

「偉大さが伝わって嬉しいわ。もっと讃えてほしいけど……さっさとなかに入りましょ。たぶん、すぐには起きないだろうけど」

「それもそうだな」

 良太郎が門に近づき、開けようとする。当然のように、カギが閉まっていた。

 乗り越えられないこともないだろうが、長身の田中よりも高くそびえ、行く手を阻んでいる。スライド部分は金属のようだが、コンクリートでできているので、手や足をかけられるような場所もない。

「あ、そうだ」

 思いついて、美琴はいそいそと警官らのポケットを探った。乱暴に扱ったつもりもなかったが、よほど深い眠りについているらしく、バランスを崩して椅子からずり落ちる。ごん、と派手な音がした。それでも起きない。

 男性陣が痛そうと顔をしかめたが、別段気に留めることもなくポケットを探り続け、とうとう、拳ほどもあるキーリングを発見した。いくつかカギがぶら下がっており、そのうちのひとつに、「パーク 外 出入り口」とタグがついている。

「ありましたよ」

 さっそく、門の端の鍵穴に差し込んでみる。かちゃりと乾いた音がした。正解だ。

「さあ、行きましょうか!」

 振り返った美琴の笑顔は、きらきらと輝いていた。

「……たくましいじゃねーか」

 良太郎は呻いた。


 布を取り去り、武器を装備して、有里沙に防御力と攻撃力を上げる魔法をかけてもらう。準備万端であることを確認して、重い門をガラガラと開けた。

 まず飛び込んできた光景に、美琴は息を飲んだ。

「デリペリ……」

 さすがに、名前も覚えていた。美琴のクラスに侵入してきた、深紅のモンスター。後ろ脚二本で立ち、細い顎を突き出すようにしている。たてがみのようなトゲが背中を覆っているさまは、やはり恐竜のようだ。その、ぎょろりとした目、細い顎から突き上げる鋭利な牙、なにより鋭く長い爪を、忘れられるわけもなかった。

 一匹や二匹ではない。道や花壇を埋め尽くすほどに、うようよしていた。

 入り口付近の数匹が、のそりとこちらを向く。やはり、シルバーキャトビを相手にしていたときとはわけが違う。まったく戦える気がしなかった。美琴は、頼るようにスピアを握りしめたものの、動けない。

「念のため教えてあげるけど、ミコトくんたちがやっつけまくってたシルバーキャトビの生命値は四〇〇で、レッドデリペリは五六〇だよ。見た目怖いけど、たいして変わんない」

 自分は戦うつもりはないのだろう、武器すらもたず、スーツのポケットに両手を突っ込んで、田中がそう告げる。

 生命値、と数値で表されるシステムに、美琴は初めて感謝した。

 それだけで、ずいぶん身体が軽くなったのだ。

「ザコね」

「ザコだな」

 桜井姉弟の行動は早かった。有里沙はすぐに呪文の詠唱を始め、良太郎は拳一つで果敢にもデリペリに殴りかかっていく。どう見ても良太郎より大きなそれに、臆することなく、拳をたたきつけた。ナックルがめり込んで、一瞬にして消える。闇が集束し、赤い石が地面に落ちるよりも早く、次のデリペリに向かって拳を振り上げる。

「……すごい」

今度は別の意味で、動けなくなってしまった。あまりに鮮やかに倒していくので、見入ってしまったのだ。

「赤の使徒、黒の王、黄の騎士、青の女神──レコンフォール!」

 スペルと同時に、有里沙の手にしたロッドから、青白い光がほとばしる。下からライトで照らしたかのように、光が一気に地面を覆い、音もなく立ち上った。大きな光の柱が、デリペリの身長の高さにまで達し、そのまま集束する。

 光が消えたときには、視界すべてのデリペリがいたはずの場所に、赤い石があるのみだった。遅れて、一斉に地面に落ちる。

「……あっぶねえ……!」

 ぎりぎりで転がり出たらしい良太郎が、肩を上下させた。

「そうか、範囲魔法は危ないのか……。気をつけるわ」

 悪びれた様子もなく、有里沙は今後の課題にした。なにかいおうと口を開き、良太郎は諦めて肩を落とす。

 まばたきもできず、一部始終を見ることしかできなかった美琴は、二人のすごさを今更ながらに思い知った。あれだけいたデリペリが、いまはもう、一匹も見当たらない。有里沙の使った魔法は、生物以外には作用しないのか、色とりどりの花がなにごともなかったように太陽を向いている。

「いけそうだねえ、これ」

 どうやら、田中も上機嫌のようだ。

「さっさとタワーまで行きましょう。ザコにかまって、余分な精神力使いたくないわ」

 有里沙がさっさと歩き出す。いわれて初めて、美琴は顔を上げ、ゲートタワーを確認した。花壇がいくつか続く向こう側に上り階段、さらにその向こうに、タワーの姿が見える。黒い大きな三角形のような、無機質な外観だ。

「気をつけろよ。姉貴のそばにいたら、冗談じゃなく死ぬぞ」

 鬼気迫る顔でそう忠告して、良太郎も続く。本当にそうかもしれないと、美琴は肝に命じた。有里沙だって、魔法を使い慣れているわけではないのだ。

「本当に、あの一撃でやっつけちゃったんだ……」

道を進むうち、素直に感嘆の声が出た。ほんの少し前までの光景が嘘のように、パーク内は静まりかえっている。見晴らしが良いので、どこかにモンスターが隠れていて、いきなり飛び出してくるというような心配もない。魔法ってすごいんだなと、しみじみ思う。これなら、本当に、魔王を倒すのもそう難しくないのかもしれない。

 しかし、階段にさしかかったところで、そううまくは話が進まないことを、美琴は思い知った。ノースリーブのワンピースを来た美少女が、階段の上で仁王立ちして、こちらを見下ろしている。その頭から突き出る、二本の角。

 正体はわからないが、向こう側だということはわかった。

「これは、もしかして」

 なぜか、有里沙の表情はいきいきしていた。残り三人は、なにかを感じて一歩下がって控える。

「──待ってたわ」

 見た目どおりの、どこか舌っ足らずな甘い声でいい、少女は跳躍した。高さを感じさせない身軽さで、有里沙の前に着地する。スカートを手で押さえていたことに、男性陣はひそかに舌打ちした。

 頭に角さえなければ、街を歩いていてもおかしくない姿だ。それどころか、超のつく美少女といっていいだろう。茶色の巻き毛は肩より下まで伸びており、大きな瞳がくりくりとしていて実にかわいらしい。美琴は女性であるのにも関わらず、黄色のワンピースのぎりぎりの長さが気になって気になって、思わずそこにばかり目が行った。

「それ、下になにか履いてるの? いきなりぱんつ?」

 ずばりと有里沙が問う。美琴はちょっと感謝した。まさにそれが気になったのだ。

少女は、きょとんとして目を数回瞬かせ、それから一気に顔を赤らめた。

「アンタたち、アタシの敵でしょっ? なぁにその質問! あったまきちゃう!」

 怒ってもかわいい。しかし、どうやら質問に答える気はないらしい。

 有里沙が振り返り、美琴を見る。

「敵なの?」

 聞かれて、美琴も考えた。

「敵か、といわれると……敵なんですかね。通してもらわないと困りますし。でも別に、あの子になにか恨みがあるとか、そういうわけでも」

有里沙は少女に向き直り、

「微妙なとこね」

「緊張感ねーなー」

 良太郎のつぶやきが、さらになけなしの緊張感を削いだ。

「だいたい、アンタたちダレなの? どうしてぽっと出が、いきなりグラナドールさまに会いに行こうって、恐れ多いこと考えられるかな? 段取りってあるでしょ? いきなり招集されて、アタシたち怒ってるんだから」

「グラナドールってだれですか?」

 美琴が素直に質問を口にすると、少女はさらに顔を紅潮させた。

「それも知らないのっ? アンタたちが魔王って呼んでる御方のことよ! なんなのムカツクー!」

「……どうしよう、なんだか、すごく怒っているみたいですが」

「確かに、段取りは無視しまくってるからねえ。そりゃお怒りもごもっともなんじゃないかな」

 どこかおもしろそうに、田中がいう。美琴も、ゲームをひとつクリアしてみたので、自分たちが正規のルートを通っていないことはなんとなくわかった。ウラワザで儲けて、引きこもってレベルを上げて、いきなりラストダンジョンだ。敵側にとってみれば、おもしろくない展開だろう。

「くだらないやりとりはいいから、早く名乗りなさいよ、お嬢ちゃん。聞いてあげるから」

 疲れたような有里沙のいいかたに、少女はむっと眉を跳ね上げたが、思い直して咳払いをひとつ。それから、両手を腰にあて、ない胸を反り返らせた。

「アタシは、グラナドールさまに仕える四天王のひとり──」

 しかし、聞くといったのに、有里沙は最後まで聞かなかった。

「四天王! やっぱり! TSといえば四天王よね! そのうちのひとりがパーティーのだれかの生き別れのお兄さんだったり、昔お世話になった恩師だったりするのよ! ああ、肌で感じるゲームの醍醐味! やっぱりいたのねー、四天王」

 有里沙のオタクセンサーが反応していたようだ。恍惚とした表情で、愛おしげに少女を見つめる。

「で、他の四天王のかたたちは?」

「最後まで聞きなさいよー!」

 少女は地団駄を踏んだ。そんな仕草もかわいい。

 美琴はふと思いついて、少女の前に歩み出た。いくらこの少女が敵だとしても、美琴の知らないところで極悪非道なことをしていたとしても、どう考えてもいまここで戦おうという気にはならなかった。いかにもモンスターという外見ならまだしも、角が生えている以外はごく普通の女の子なのだ。ましてや、会話を交わしてしまった。

 ならば、やるだけ無駄だとしても、戦わないですむ道を模索したいと思った。

「あの……あなたは、魔王さんに、なんていわれたんですか? わたしたちを倒せって?」

 尋ねると、少女は訝しげに眉根を寄せ、美琴を真っ直ぐ見返してきた。

「勇者一行が来るから相手をしろといわれたのよ。アンタたちがそうでしょ?」

「違います」

 きっぱりと、美琴は否定した。ええ、と驚きを隠せない様子で、有里沙と良太郎が美琴を見る。相変わらず、田中はおもしろそうに傍観を決め込んでいる。

「もしかして、わたしたち、勇者の一行に見えるんですか?」

 見えない自信があった。中学生に、高校生二人に、胡散臭いホスト。しかも、基本的に引きこもっていたので、顔も知られていないはずだ。

 少女は、ゆっくりと考えて、首を左右に振る。

「……そうね。見えないわ」

「よかった、誤解が解けて。勇者ならわたしも、噂を聞いたことがあります。すっごいマッチョな大男らしいですよ。魔王さんの気持ちを少しも考えない、自分勝手で傲慢なひとらしいです」

 普段、どちらかというと引っ込み思案な美琴が、一言一言告げると、妙に説得力があった。少女は思案顔のまま黙り、しばらくして、当然の質問をする。

「じゃ、アンタたちは、なに?」

 美琴はやわらかく微笑んだ。待ってました、という笑みだ。

「魔王さんの考えに共感し、ぜひなにかお手伝いをしたいと思い、やってきました……といって、信じてもらえますか? 信じられないなら、魔王さんとお話ししている間、仲間を一人、ここに置いていきます」

「…………」

 少女はじっと美琴を見据え、考えを巡らせているようだった。

 有里沙も良太郎も、田中も、おとなしくやりとりを見ている。その様子と、登場の際の緊張感のないやりとりとが、決め手になった。

やはりどう見ても、勇者一行だとは思えない。

「いいわ」

 勝った、と美琴は思った。

 戦わないですむのなら、それがいちばんだ。

「ありがとう。一応、ひとり置いておきますね。──田中さん、よろしく」

 やっぱりね、と田中は苦笑した。

 

 ゲートタワー一階は、エントランスホールになっていた。入ってすぐの正面に、半円形の受付カウンターがあったが、当然、ひとの姿はない。

 ホールの右手前に土産物の売店、その奥には「伊南市の歴史」と銘打たれた蔵書コーナーがある。さらに向こう側にエレベーターと階段。左側は多目的スペースになっているのか、観葉植物とベンチが設置されてあるのみで、がらんとしている。

 それほど古めかしくもないのに、だれもいないためか、妙にさびれて見えてしまう。普段なら音楽のひとつも流れているのだろうが、息づかいが伝わるほどの静けさは、不気味でもあった。

「だれもいねーな。やっぱボスは最上階か」

 つまらなそうに、良太郎がぼやく。あたりまえでしょ、と答えて、有里沙が先頭を切って直進していく。

 美琴は、立ち止まった。

「──有里沙先輩、良太郎先輩」

 呼び止めた。二人はすぐに振り返り、美琴が真剣な顔をしていることに驚く。

「ラストダンジョンだからって、緊張することないわよ」

 わかっていて、そんなことをいう。美琴はその優しさに頬をゆるめたが、それでも、うやむやにするわけにはいかなかった。

「いくつか、わかったことがあります」

 良太郎が不機嫌そうに顔をしかめ、有里沙は大きく息を吐き出した。

「……だから、あのホストと離れたの? いいわ、聞かなくてもいいことは、聞きたくない」

「でも、聞いてください」

 良太郎はうなずかなかった。有里沙は観念したように、美琴の真っ直ぐな目を見返す。

「たぶん、もうあまり、時間がないです。有里沙先輩、田中さんが、ゲームオーバーの定義について話したこと、覚えてますか?」

「魔王の目的によるから、わかんないって話じゃなかった?」

「いいえ」

 美琴は、首を振った。良太郎にとっては初めて聞く話だったので、やっと美琴に向き直る。

「世界そのもののダメージが一定値を超えた段階で、ゲームオーバーと判断される場合がある──田中さんは、そういいました。この場合の『世界』は……わたしの予想ですが、『ティピカルサーガ』の世界のことだと思います。だとしたら、たぶんもう、ゲームオーバーに近いところにいる」

「……どういうことだ? そこまでダメージ負ってねえだろ」

「ばかね」

 姉に一蹴されて、良太郎も気づいた。もとの世界にとって被害はゼロだと、有里沙はいっていたのだ──ならば、『ティピカルサーガ』の世界にとっては、どうなのだろう?

「不思議だったんです。世界が融合してるっていいながら、もとの世界にあった店に、向こうの世界のものが商品として並ぶことはない。カジノや、武器・防具屋、マジックショップ……まるごと、そのまま、この世界に来てる。そこで働くひとたちも、ぜんぶ」

「気づいたわ。……モンスターにやられたっていう被害者も、たぶん全員、そうよね」

「だと思います」

 がん、とカウンターを殴りつけ、良太郎は美琴を睨んだ。

「わかってて、それでもやるのかよ。……こういうの、茶番ってーんだろ。要するに、おまえはあの田中ってのに祭り上げられただけだ。おまえがやらなきゃひとが死ぬって、責任感をあおられてな」

「でも、……ゲームの世界でひとが死んだとか、やっぱりぴんとこないのは確かですが……それでも、このままゲームオーバーになったら、こっちの世界がどうなるかわかりません。だれかがやらなきゃ終わらないなら、やっぱり、わたしがやりたいんです」

「いいたいことはなに?」

 辛辣ないいかたになってしまったことに気づいたが、それでも有里沙は、そのまま続けた。「……決意表明?」

 いまさら、とはいわなかったが、そのニュアンスが存分に含まれている。

 いいえ、と美琴はきっぱり否定した。

「たぶん、わたしがやらなくても、いつかこのゲームは終わります。田中さんがいる限り。何度でもロードして、やり直して……いままで、そうしてきたみたいに。いいたいことは、そうじゃなくて──」

 なにか、反論めいたものをしようと良太郎が口を開いたが、それを遮って、美琴は告げた。

「──死なないでください。お二人は、わたしと違って、やり直しがきかないから。わたしが死んでも、ゲームの世界をリセットすればいいんです。また田中さんが、新しい主人公を作るでしょう。……でもお二人は、たぶんそういうわけにはいかないから、死なないでください、絶対」

 有里沙はロッドを持ち上げた。そのまま、美琴の頭上に振り下ろす。がん、と鈍い音がして、美琴は頭を抱えてうずくまった。

「それ以上いうと殴るわよ」

「……ご、ごめんなさい」

 美琴の目に、涙がにじみそうになる。

 泣いてはダメだと、必死で我慢した。たとえ、あまりの痛さに、といいわけが使えるとしても。いまここで、糸を切らすわけにはいかない。

「……俺も殴っていいか」

 良太郎が、ナックルを装備した拳に息を吹きかける。さすがにそれは生死に関わりそうだったので、美琴は急いで首を振った。愛の鞭はひとつで充分だ。

「──これで、こっちの話は終わったけど。いつまで待ってくれてるの?」

 突然、有里沙が上を向き、空間に向かって声を張り上げた。頭を押さえながらも、美琴はなんとか立ち上がる。良太郎は戦闘態勢に入り、腰を低くして構える。

「……なんかいるのか?」

「幽霊?」

 美琴は真剣にいったのだが、良太郎に呆れきった目を向けられた。

 得意げに、有里沙は胸を張る。

「ダンジョンに入ったのにモンスターがいないなんて、中ボスが出てくるエリアだからに決まってるでしょ。こっちのイベントのために気を遣ってくれたとも思えないし。さあ、出てきなさい!」

 美琴と良太郎は、息を飲んだ。有里沙も黙って、来るであろう敵の登場を待つ。

 たっぷり十数秒待って、良太郎のすぐ隣の受付カウンターから、ぬっと男が顔を出した。

「うお! びっくりした!」

 慌てて良太郎が飛び退く。カウンターの下でずっと屈んで隠れていたらしい男は、伊達男という称号の似合う風貌をしていた。金髪に、少し垂れた青い目。都会の若者のように、ズボンをずらして履いている。頭には、小さな角がひとつ。

 男は、んー、と伸びをした。

「呼ばないで欲しかったなー。中途半端に登場するの、いやだったのに」

 といわれても、どう答えればいいものか。少し考えて、美琴はばか正直に尋ねた。

「じゃあ、通ってもいいんですか?」

 男はもともと細い垂れ目をさらに細め、にやりと笑う。

「いいよ。おもしろい話聞けたし。グラナドールのおっさんが、ずっと不機嫌な理由がわかったよ」

「……おっさん呼ばわりかよ」

 良太郎が思わずつっこむが、その呼び方には親しみが込められていた。男は、体重を感じさせない身軽さで、ひょいとカウンターを飛び越える。

「あのひとさ、勇者一行が現れたら相手しろとはいったけど、倒せとはいわなかったんだよね。それってたぶん、意味があったんだろうし。どうせ倒しても倒しても、なかったことになるみたいだから、いいよ、通って。オレ、無駄に疲れること好きじゃないし」

「あなたも、四天王?」

 有里沙に問われ、男はあっさり頷いた。

「……なんなの、ラストダンジョンでいきなりわいて出てきたくせに、四天王のこのキャラの濃さ……! 侮れないわ、さすがTS! 第四シリーズでゲーム化しないかしら。……あれ? でもあたしが忘れてるだけで、第三シリーズの登場キャラ……?」

 ぶつぶつと、有里沙がなにかに衝撃を受けている。

「あと二人、まだ上にいるけど、そっちは頭固い連中だから、戦うことになるんじゃないかなー。まあ、ガンバッテ」

 男は、ひらひらと手を振った。少しためらったが、美琴は心から頭を下げる。

 ゲームの世界に生きるひとたちというのが、どういうものなのかわからなかったが、外で会った少女も、いまここにいる男も、敵対しなければならない人物とは思えなかった。本当は、魔王とでさえ、明確に戦う理由があるわけではないのだ。

「おっさんを頼むよ」

 背後から、声をかけられる。振り向かず、三人はエレベーターに乗り込もうとする。

 ──その瞬間、地面が揺れた。

 立っていられないほどだ。美琴と有里沙が膝をつき、良太郎はとっさに男のほうを振り返る。通っていいといいながら、不意打ちをしかけてきたのかと思ったのだ。

 しかし、彼の目に飛び込んできたのは、信じられない光景だった。さっきまで手を振っていた男の額に、鋭い針のようなものが突き刺さっている。

「貴様の忠誠心は、そんなものか」

「ならば、いらぬ」

 針を突き刺した男は、二メートル以上はあろうという巨体だった。ひとのようであるのに、背中から翼が生えている。鳥や虫のそれとは明らかに異なり、翼の形に伸びた骨に、皮膚が張り付いているような、生々しいものだ。濃い茶色の短髪から、やはり角が突き出ている。

 もうひとりは、一見すると華奢なぐらいの女性だ。黒く長い髪を後ろでひとつに束ね、袴のようなものを履いている。手には、長刀のような長い武器。

 いつの間にか、地面の揺れもおさまっていた。急激に静まりかえったホールで、悲鳴もなく、男が倒れる。すでに事切れていることは、一目でわかった。

「な……」

 言葉にならない。それでも美琴は立ち上がった。

 怒りを込めて睨みながら、有里沙も体勢を立て直す。

「意外そうじゃな。仲間どうしでなぜ、と思っておるのか? ういのう」

 女が嘲笑した。端正なひとつひとつのパーツが歪むことで、ぞっとするほど妖艶な笑みになる。翼の男は、顔の筋肉を動かさないまま、突き刺した針を引き抜いた。針に見えたそれは、ひどく鋭利な爪のようだ。五本の指すべてから、すらりと伸びている。

「我らは、真にグラナドール様に忠誠を誓っている。忠誠心の揺らいだ者は、死するが道理」

「……どうでもいいわ。聞きたくもない」

 有里沙が吐き捨てる。美琴も良太郎も、同じ思いだった。

 美琴の脳裏に、転がった少女の顔が思い出される。本当は実在しないとか、そんなことは、問題ではなかった。さっきまで話していたのに、目の前で死んだ──こんな思いはもう二度としたくないと、あれほど思ったのに。

「よもや戦う理由がないとはいうまい? 大義名分が必要ならば、いくらでもくれてやろうぞ」

「志が違う──戦うのに、これ以上の理由が必要か」

 女は長刀を構えた。男は、爪をそっと舐める。

「礼儀はわきまえている。我はリグズ」

「妾は紅」

 二人は、冷えた目を真っ直ぐ三人に向け、声を揃えた。

「──いざ」


   *


「あー、わかっちゃったかも。アンタたち、結局、勇者一行? で、アンタが勇者を作ってるっていうワルモノか。グラナドールさまが、そんなことおっしゃってたわ」

自動販売機で買ったジュースを仲良く飲みながら雑談するうちに、唐突に少女はいった。どうでしょう、と田中は曖昧に笑む。

「じゃあアタシ、勇者一行通しちゃったのかぁ。……まあいっか、グラナドールさま、やっつけろとはいわなかったし。なんか、あの子、ワルっぽくなかったし」

 空のペットボトルを振りながら、少女はぼやく。それから、すとんと地面に座り、田中を見上げた。

「なんであんなヘンな勇者なの? なんか狙いあんでしょ?」

 田中は、少しの間思案顔で黙りこみ、それから提案した。

「聞いても理解できないと思うけど……それにちゃんと答えたら、ここ通ってもいい?」

「いいわよ」

 わくわくと瞳を輝かせ、少女は答えを待つ。田中は、もったいぶるように咳払いをひとつ。

「最初にパラメーターに振り分けられる数値が決まっててね。過去五人は攻撃力や魔力なんかを強化して失敗したから、今回は運と知力にほとんどをつぎ込んだんだ。おかげで、もともとの知識のない、やる気のないのになっちゃって、最初はどうしようかと思ったけど……結果オーライかな」

 少女は、思い切り眉をひそめた。全身で、なにいってんのこいつ、といっている。分かり切っていた反応だったので、田中は気にしなかった。

「じゃあ、通らせてね」

 そういって、階段を一段上がるぐらいの力で、トン、と地面を蹴った。そのまま、風船のように空に飛び上がる。

「……飛んでっちゃった……」

 やがて見えなくなるまで、呆けたように見送って、少女は頬杖をつく。

「アタシは、グラナドールさまが笑ってくだされば、それでいいんだけどなあ」

 その願いが叶えられなくなってから、ずいぶん長い時間が経ってしまっていることを、少女は知っていた。ひどくつまらない役回りだという気がして、ちぇっと舌打ちをした。



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