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帰る途中、空の雲行きが怪しくなってきた為、駿は急いで自転車を走らせた。二人の家の前に着いたとほぼ同時に、しとしとと雨が降り出す。
自転車を自分の家の車庫へと運んでくれる駿に、美亜は笑顔を向ける。
「駿、今日は色々とありがとう」
「ん。まあ、これからも気を付けろよ」
「大丈夫だって! 今日はちょっと油断してただけ。いざとなったら、ガツンとやってやるから!」
満面の笑みを浮かべて言う美亜に、駿は今日何度目か分からない溜め息を吐いた。そして、「じゃあな」と告げて隣接する自分の家へと小走りで戻って行く。
玄関前で振り返ると、家の中へ入ろうとした美亜を呼び止めた。
「明日も雨だろうから、早く起きろよ。じゃねえとバスに乗り遅れんぞ」
「分かってるって。何か、お父さんみたいだよ」
「うるせえっ」
「ありがと。じゃ、また明日ね!」
そう言って、美亜は家の中へと入って行った。駿もそれを見届けてから、家の中へと入る。
雨は先程よりも強く、地面に打ち付け始めていた。