02
学校に無事到着。
が、時刻はam08:36――
気力でもダメだった。
「結局、遅刻しちゃったし……」
そう呟きながら自分の教室のドアを見上げ、窓越しにコッソリと中を覗く。
見ると、担任はプリントを片手に黒板に何やら書いており、完全にこちらに背を向けている。
(今だっ!)
“チャンス”とばかりに静かに且つ素早くドアを開閉すると、腰を低く屈め、自分の席目指して走った。
美亜の席は、窓際の1番後ろ。
その一つ前の席の親友・橘 茜が気付き、“早く早く”と手招きをする。
サッと席につき、無事に席まで辿り着いた事にホッと胸を撫で下ろした。
その瞬間。
「月城ーっ!」
低くて迫力のある、担任の怒声が静かな教室内に響き渡った。
気を抜いた瞬間に強く名前を呼ばれた為、美亜は「ふぇい!」と、何とも間の抜けた返事をし、思わず気をつけの姿勢をして立ち上がった。
教室内では、どっと笑いが沸き起こる。
「何つー間抜けな声出してんだ……」
担任はこちらに向かってツカツカと歩いて来ると、目の前で仁王立ちになる。
「月城、ごまかせるとでも思ったのか? これで新学期が始まってからの遅刻、通算何回目だ? ん?」
そのゴツイ熊のような身体から出る半端無い威圧感に圧されながらも、美亜は苦笑いを浮かべて答えた。
「じゅ……、10回目?」
「何ちゃっかり今日の分抜かしてんだ。11回だ、バカヤロウ」
そう言って担任は、手に持っていたプリントで美亜の頭をペシリと叩いた。
キーンコーンカーンコーン……
そこへ丁度、HRの終了を告げるチャイムが鳴り響く。
「じゃあ、今日のHRはこれで終了。あ、月城は放課後、職員室に来い」
担任は更に“いいな”と念を押し、教室から出て行った。