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断罪の剣  作者:
序章・反攻作戦編
3/8

3、全員集合

集合場所の野営地に2人がたどり着くと、そこには既に残り8人と、この作戦の指揮をするフェリク・アーチボルト将軍の9人が揃っていた。

どうやら一番遅れてしまったらしい。

無駄話なんかせず、まっすぐ集合場所に向かうべきだった!と後悔していると、一人の少女が椅子から立ち上がり、つかつかと、ルーク達の目の前まで歩いてきた。


(あ、可愛い人だな・・・。)


そんな事を思ったのもつかの間、


「この大事な時に集合時間に遅れるなんて、どういうつもりなの貴方達!!

 自覚が足りないんじゃない!!!」


・・・すごく怒られました・・・。


何を言っても言い訳にしかならないので、小さくなりながら大人しくお説教を受けていると、


「アンリ、そのくらいにしなさい。

 皆さんがお待ちかねですよ。」

「君の気持ちは分からんでもないが、今は時間が惜しい。

 先に話を進めるべきだ。」

「くっ、確かにナタリアとガイウスの言う通りね・・・。

 この話の続きは後で、たっぷりとさせてもらうから!!!」


そう言い放ちながら、アンリと呼ばれた少女は自分の席へと戻っていった。


(今もプリプリしてるのがアンリで、それをたしなめてくれたのが、ナタリ アか。

 なんだか優しそうな女性だな・・・。

 それと真面目そうな男の人がガイウスか・・・。

 アンリとガイウスが身に着けているものは、王国騎士団の正式装備だな・ ・・。

 ということは、二人は騎士か・・・)


アンリとガイウスは、それぞれレイピアと槍の使い手で、まだ、17歳と20歳という若さながらその技量は騎士団の中においても1,2を争う実力者だった。

そしてナタリアは、アンリの母親のような人であった。

血の繋がりはないが、何かと家族と衝突の多いアンリにとって、ナタリアは実の母親以上に母親だと思っていた。

もちろん、だからこの場に呼ばれたわけではなく、ナタリア本人も凄腕の回復魔法の使い手で、その力は不可能といわれている死者蘇生までも行えるのではないかとさえ言われている。


「おい!!!

 いつまでそこで、ぼけっと突っ立ってるつもりだ!!!

 さっさと座れ、この愚図が!!!」

  

はっと我に返った。

ルークには、考え事をすると、目の前が見えなくなるという悪癖があった。

その悪癖のせいで、将軍を含めて10人に冷たい目で見られてるような状況である。

さすがにマズイと思い、急いで自分の席に座ろうとして気付いたのだが、


(・・・ん、10人ておかしくないか?

 ・・・・・・・・・。

 ゲオルグの奴、いつの間にか既に席に座ってやがる!!!

 しかもなんだよ、そのご愁傷様みたいな顔は!!!

 くそ、あいつのせいで遅れたってのに!!!)

 

すごすごと席に着いたのだが、王国でも1,2を争う実力者の貴族の息子であるアルフォンスは、腹の虫が治まらないようだった。

この作戦に集められた者達は何か1つは突き抜けたものを持っているが、アルフォンスにはそれがなかった。

しかしアルフォンスは、自分こそ最強の剣士なのだと信じて疑わなかったし、この場にいるのも当然のことだと考えていた。

この作戦が上手くいけば、救国の英雄として国王の一人娘とでも結婚して、絶大なる権力を手に入れてやろうと考えていた。

そんな自信家のアルフォンスは、まるで劇を演じているかのように、仰々しく、身振り手振りを交えながら、


「この私を待たせた上、現れたのはこんな男か女かも分からないようなガキ とは・・・。

 こんな奴なら、いてもいなくても同じだったのではないか?」


と、ルークをしつこく叱責した。

ルーク達が来る前からこの調子で、何かにつけて見下すものだから、皆口には出さないが辟易していた。

そんなこととは知らず、アルフォンスの叱責を大人しく聞いていたルークだったが、心の中では、


(この人、口が悪いな・・・。

 仲良く出来ないタイプの人間だ・・・。

 まあ、遅刻した僕がそもそも悪いんだけど・・・)


アンリの時にはその様に感じなかった嫌悪感を、アルフォンスに対しては感じていた。

まあ、アンリに苦手意識を持たなかったのは、アンリが美少女だったという事と、ルークが健全な少年であった事は無関係ではないのだろうが・・・。


このままでは話が先に進まないと思ったのか、この中でも一番年長者のエルベが助け舟を出した。

エルベは今でこそ60を超えるおじいちゃんだが、昔は伝説的な弓の名手で、体力こそ衰えはしたものの、その知識と技術は衰えることを知らず、この作戦の精神的な支柱として参加を要請されていた。


「まあ、それくらいにしておきなさい。

 もう十分反省しておるだろうよ。

 ワシ達はこれから過酷な任務にあたるのじゃ。

 仲違いして得るものなぞ何もないとは思わんかね?」


そうエルベにたしなめられ、流石に周りの空気を読んだのか、ふんと鼻を鳴らすと、アルフォンスはそれ以上何も言ってこなかった。

どうやら引き際は心得ているようようで、これ以上言っても自分にとってマイナスにしかならないと判断したようだった。

エルベも、やれやれという表情を浮かべた後、フェリク将軍に話を先に進めるよう促した。

フェリク将軍は席を立ち、


「さて、そろそろいいかね、諸君。

 これより作戦の内容を説明する。

 なに覚えることは簡単だ、魔族領を突破し、魔王の首を取る・・・簡単だ ろう?」


ニッと笑いながら、これ以上ないくらい簡潔に説明を終えた。

流石に、全員が呆気にとられていた。


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