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Mr.ドワーフ!  作者: はには
ドワーフの村にて
7/29

ドワーフとゴブリン 前編

再び2年経つ。


ザースにはハッキリ言って全然かなわない。

たぶんベ◯ータと◯ッパほどの差がある。


というのもあの「流斧」は斧で相手の攻撃を受け流す技術なのだが、あれがとても厄介だ。

馬鹿力が取り柄の俺の攻撃を全て受け流してしまう。


斧でだ。


本来斧は剣や刀と違って攻撃を受け流すとかをする様に出来ていない。

重いゆえに細かい動きのし難い斧はもっと威力を重視したものだ。


が、ザースは斧でそれを可能にしてしまう。

見た目によらず技巧派なのだ。

力の強いドワーフとはいえ厳しい修業でもしたのだろうか?


とはいえ、ザースは「流斧」をあまり気に入っては居ないようだ。


力強いを美徳とするドワーフにはあまり使っていて楽しいもんでもないらしい。


まぁ、冒険をする上でそんなことを言ってられない場面もあったのだろう。


必要に駆られてというやつだ。



ここ最近は、ザースの狩りに同行している。勿論早朝の訓練という名のイビリも続けている。


感覚的にはまだ早い。


しかし考えてみれば、俺の身体は前世基準で言うところの15歳くらいだ。


中3だ。思春期真っ只中だ。頭のなかピンク一色の歳だ。


それにこの世界は実践主義な面がある。

何故かというと、身体の出来てきた子供を遊ばせとくほど平和な世界でないのと実践で鍛えたほうがより早く強くなるからだ。


前者はいくら裕福なこの村とて例外でないのと、後者はどうも稽古より獣を狩ること、獣より魔物を狩ることのほうが身体もより強力になるらしい。


どうもレベル制くさい。


だが、実際にはレベルと言うものは存在しない。

いや存在するかもしれないのだが、それを測るものがないのだ。

つまり、貴方なんレベですよ。というのが分からない。


が、稽古ばっかりのやつと実践するやつとでは身体的な能力に大きな力差ができるらしい。


道理で元Bクラスとはいえザースが上級ギフト持ちの俺の攻撃を正面から弾くわけだ。



というわけで、ここのところ仕事終わりのザースと一緒に近くの森に狩りをしにきている。

この世界の動物は非常に逞しい。


それはもう。繁殖力も旺盛だ。


特にウサギや鹿なんかは敵も非常に多いもんで大量に繁殖しないと絶滅してしまうのだろう。


ザースなら3時間も森を彷徨えば1匹や2匹余裕で狩れてしまう。


勿論魔物もいる。


ウサギに角の生えた角ウサギやら、まるで肉食動物のような声で威嚇するワイルドディア、毛皮が保護色となるグリーンボアなどだ。


しかし、追い詰められると攻撃してくるものの基本能動的に襲ってくる魔物ではない。


グリーンボアは突っ込んではくるが、その点はほら俺上級ギフト持ちじゃん?


真っ直ぐ突っ込んでくる奴なんて怖くないのよ。正面から頭カチ割れるし。


そんな訳で順調に強くなっているはずの俺の仕事はもっぱら狩ってきた獲物の解体である。


最近はもう血抜きだろうが革剥ぎだろうが抵抗もなくサクサクできる。


慣れとは恐ろしいものだ。


しかし、最近は獲物が異常に取れる。別に必要以上に狩る必要も無いので持ってかえる獲物が多いわけではないが必要数狩れるのが随分と早いのだ。


どうも、これはザースも気にしているらしく夜コソコソと大人同士で話し合っている。

酒を片手にではあるが。



「ふぅ。終わったのじゃ。」


「あら、ジオお疲れ様。お茶でも飲む?」


食後、余った肉を燻製にする作業を終えた俺にセリーがお茶を持ってきてくれた。


「ありがとうなのじゃ。」


「ふふっ、随分作業も手慣れてきたわね。猟師さんとしてもやって行けるんじゃない?」


セリーがそう言って湯呑にお茶を注いでくれる。


おとと、奥さん。そんなに飲めませんよ。いやいや、申し訳ないね。

それではグイッと。


どうです?奥さんもひとつ。

そんな手酌なんて、私がつぎますよ。っと。


そんな妄想をしつつセリーにもお茶を淹れていると。


「カンカンカン!!」


と村の鐘が大きくなる。と同時に向かいのグリアさんが駆け込んできた。


「ザ、ザース!ちょっと来てくれ!ゴブリンじゃ!ゴブリンの群の襲撃じゃ!!」


それを聞くやいなやザースとセリーはすぐさま戦いの準備をしだす。


流石元冒険者。お馴染みゴブリンは小さな魔物で身長は130センチぐらい。俗にいう小鬼だ。

特徴は強い繁殖力と集団性。

ファンタジー世界の雑魚の定番だが猿の獣人の戦闘訓練を受けていない男性などで1対1でも勝てないことがままある。


俺も一様ザースから貰ったお古の革鎧に片刃の斧、腰には手投げようの斧を持ち戦いの準備をする。


ザースが詳しく話を聞いている。

どうやら、村の南側の森がいつもより騒がしかったので猟師のダルタントさんが森に入ったところゴブリンが大量に攻めてきていたらしい。

その数おそよ100匹。


ゴブリンの群の襲撃としては大型に分類される量。


それに対してドワーフで実際に戦闘できる人数は約50人。これは村の人口が100人程度の村では以上に多い。

ドワーフは頑丈な身体と強い力を持つため基本的に男はゴブリンなどの魔物に負けるほど弱くはない。


「なんじゃい、そんなに慌てんでも大丈夫じゃろがい。」


ザースはグリアさんに少し拍子抜けしたように話しかける。


「そうじゃが、確認が遅くてのう。南門に人が居らんのじゃ!ダルタントらが頑張っとるので早くいってやってくれんかの。」


「うぬ、わかったのじゃ。ジオ。お主は万が一に備えて西門の警備に回れ。ワシは南門から討って出る。セリーは避難所の警護と怪我人の治療じゃ。」


ザースは矢継ぎ早に指示を出すと軽い足どりで出て行った。


「ふふっ、ザースは相変わらずね。ジオも気をつけて怪我したら直ぐに戻ってくるのよ?」


セリーもまるで息子を遊びに送り出す母のように避難場所の集会所に足を向ける。


あれ?なんだこれ?

魔物の襲撃ってもっとこう緊張感がビリビリしてるもんじゃないの?


俺は何とも生温い空気に送り出されて西門についた。


「おーおー、南門の方は派手にやっとるのぅ。ワシもあっちがよかったのう。」


西門の警護として振られた人数は7人。殆どの戦力は南門に集中している。

といっても、高々100人程度の村。簡単に回り込めるのでこうして南門と東門には警護を割いている。北門は出て直ぐが鉱山な為回り込むことは出来ないだろう。

一応人はいるだろうし、北門は鉱山からの土砂が流れてきた場合に備えてかなりしっかりした作りになっている。

滅多なことでは突破できまい。


「おっ、こちらも4匹ほどきたぞい。」


隣で門の外を見張っていた男がゴブリンを見つけた様だ。


「なら、ワシとジオで行こう。」


南門を羨ましそうにみていた細工屋のターリさんと一緒に俺もでる。

どうも、暴れたくてウズウズしていたらしい。全く好戦的なやつだ。


門の外へ出るとゴブリン達も俺達を発見したらしく錆びたナイフや木の棒を片手に持ち襲いかかってくる。


あれぇ?超デカイんですけど?全然小鬼じゃないんですけど。

ゴブリンの目線俺とほぼ一緒じゃないですか。


……忘れてた。俺そういやチビ代表種族ドワーフでしたわ。


くそぅ。こんなところでチビを実感させられるとは。


心なしかゴブリンもニヤニヤしている様に見える。


なんだよ。俺のほうが10センチはデカイだろがい。なに勝ち誇ってんだこの野郎。


「ジオは左側の2匹じゃ。ワシが右側をやる。若いからというてこれぐらいに遅れをとるんじゃないぞい。」


「うむ。任せるのじゃ。」


飛びたしていくターリさんに遅れを取らないよう俺も怒りに任せゴブリンに向かって飛び出していく。


途中1番左端の奴に手投げようの斧をぶん投げる。

斧は見事にゴブリンの頭にめり込み命を刈り取る。

隣のゴブリンは仲間が死んで慌てたようだ。そこにすかさず切り込み袈裟斬りにする。ゴブリンは肩からわき腹にかけて真っ二つになった。


ふっ、俺にかかればこれ位チョロいもんだ。このドチビが!だてに毎日毎日自分より大きいイノシシやシカ追いかけてる訳じゃねぇぜ。


手斧を回収してターリさんを見るとどうやらそちらのほうも片付いたようだ。ゴブリンの頭に叩き潰した槌をぬちゃっとあげている。


「しかしジオよ、ギフト持ちとはいえ完全に真っ二つとは凄いもんよのう。」


ちなみにサーズゴア村の人達は俺がギフト持ちだということは知っている。

ばれて騒ぎになるのは上級ギフト持ちということであり、単にギフト持ちと言えば、おっ、珍しい奴だな。ぐらいですんでしまうからだ。


「ターリさんも流石じゃ、ゴブリンがぺっちゃんこじゃわい。」


「うぬうぬ。そうじゃろう。最近運動不足じゃったからのう。ちょうどええわい。」


槌を振り回しながらわらうターリさん。


でも、槌についたゴブリンの破片がチョットグロい。うん。将来的にも槌やバトルメイスを使うのはやめておこう。



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