閑話:チーム、グルーモア
ザース視点
「ふむ。ここだったはずじゃがのう。」
「あぁ、ジオは一人で大丈夫かしら。やっぱり引き返したほうが。」
ワシとセリーは今、隣の村である。ヤロイー村にきておる。
旅立つジオにワシらからの餞別を送るためじゃ。
「うぬ。安心せい。もう、ジオは1人でもやってゆけるわい。」
「でも、やっばり」
そうジオの心配ばかりするセリーに横から飛び出してきた人影が抱きつく。
「あぁー、セリー会いたかったわ。何時までたっても可愛いわね。こんな岩石男と一緒になるなんて本当こんな罰ゲームよく耐えられるわ。」
飛び出してきた人影はリーリアじゃった。
エルフの魔法使い。その性格はエルフには珍しく苛烈。その性格ゆえか得意な魔法は火属性とエルフが得意とする地属性じゃ。
もう一つのエルフの得意魔法である水属性はあまり得意でないが、あらゆる魔法を使う凄腕じゃ。
「リーリア、久しぶりね。元気にしてた?」
「全然、元気じゃないわよ。セリーがこの筋肉ダルマに攫われてから、辛くなる一方。なんどドワーフの村に飛び込もうと思ったかわからないわ。」
「リーリアなら何時きても歓迎なのに。」
セリーがリーリアを引き離しながら答えたのじゃが、リーリアは。
「こいつがいなけりゃすぐにでも行くんだけどね。ホント、辛くない?辛いなら何時でも私が貰って上げるからね。」
どうも、ワシはというかドワーフの男はエルフに嫌われがちじゃ。何故かのう?ワシはドワーフの中でもそれなりに容姿も良いほうなのじゃが。
しかし、ワシはリーリアを嫌いになれん。なぜならリーリアはエルフには珍しく、その、なんじゃ、立派なのじゃ。
ぬっ、しまったのじゃ。
「そうね。ジオと一緒にあなたの所に行くのもいいかもね。」
セリーが凍てつく波動を撒き散らしながらリーリアに話かけておる。
前から思っとったがこのドワーフの女特有のある一点における察しの良さはどうにかならんものじゃろか?
「ジオ?あぁ、前に手紙を貰った貴方たちの息子?うーん。セリーは歓迎だけどドワーフの男はねぇ。」
「大丈夫よ。ジオは………。」
渋るリーリアにセリーが何か吹き込んでおる。
「ふんふん。なるほど……何!?そうか、よし!…やい、筋肉ダルマ!私とセリーとジオをかけて勝負しろ!消炭にしてやる!」
セリーが何か耳元で囁いたあとリーリアは杖を構えて魔力を練りだしおった。
本気じゃ。この魔力は本気でワシを消し炭にする気じゃ。
「おい、やめなさい。ザースは今回の依頼人だよ。」
いつの間にかおった猿の獣人がリーリアの頭を叩いたのじゃ。
「痛いわね。冗談よ。バドルはすぐ本気にする。まったく毎回私の感知を簡単にくぐり抜けて来るんじゃないわよ。」
「嘘ばっかり。さっきの魔力の練りかたは本気だったでしょ。」
そうリーリアをたしなめてくれるのは、バドル。長身で黒髪黒目の温和な顔つきをした男。かつてワシとセリーが組んでおった。チーム、グルーモアのリーダーじゃった男じゃ。
「うぬ。バドル久しぶりじゃのう。達者じゃったか?」
「やあ。元気だったよ。ザースも相変わらずセリーちゃんの尻にしかれてるかい?」
「あら、私はそんなことしないわ。」
快活に笑いながら尋ねてくるバドルにセリーがクールな顔でそう切り返す。
あぁ、たっぷり敷かれておるとも。もうこれ以上ないほどのう。
「あとは、あの犬っころだけね。まだかしら?」
リーリアが言うのはワシらが組んでおったグルーモアの最後の1人、狼の獣人のシバイルじゃ。
「ん、あぁ、シバイルならあっちの食事処でなにか食べていたよ。」
「ホントに?あの犬っころは。ここに集合って書いていたじゃない。」
「まぁ、良いじゃないか。どうせもう昼だ。積もる話もあるし、そこで昼飯食いながら話そうよ。」
そう、バドルはリーリアを宥めてメシ屋に誘う。ワシらも急ぎで来たものじゃから、それに賛成したのじゃ。
「いらっしゃいませ。」
「おい、親父!このステーキもう500g追加だ。焼き方はもう少しレアにしてくれ!」
「はいよ。」
ワシらが店に入るとそこにはすでにステーキを3皿くったがっちりした体格の茶色髪をした狼の獣人がエールを飲みながらもう一皿注文しておった。
「おい、犬っころ!あんた集合場所忘れたの?馬鹿なの?」
「ん?おお、皆久しぶりじゃねぇか。もうそんな時間か?まぁメシでも食おうぜ。」
「シバイルは相変わらずだね。まぁ、これで皆揃ったし、話を聞くついでにご飯でも食べよう。」
バドルがそう取り持って皆が席につく。
あぁ、懐かしいのう。昔からこうしておったもんじゃ。
横を見るとセリーも目を細め同じような顔をしておる。
「では、ソロソロ話を始めて貰おう。。ザース、セリー、頼んだよ。」
メシも食い終わったころバドルに促されてワシとセリーは詳しい依頼内容を明かす。
ジオが1人立ちすること。
それに伴い冒険者としてワシらから装備を送りたいこと。そのためにワイバーンを狩りたいこと。
ワシが依頼料を机に置いて話を終える。ワシらはBランクの時にチームを抜けたが3人はそのあとも冒険を続けAランクになっておる。
いまや、バドルがAランクになりギルドの要職についたのを切っ掛けにチームは解散したがその指名依頼料は決して安くない。
「そんなの、買えばいいじゃない。そのお金があればできない事もないでしょ?」
「そうだぜ。わざわざ俺達を呼んだ意味がわからないな。」
リーリアとシバイルはそう言ってきたのじゃが、ワシが説明しようとしたときバドルが口を開いた。
「いや、ドワーフには親が作ったものを子に託す習慣があるときく。恐らく武器や防具を作れないザースとセリーはその素材を自分達で狩りたいと思ったんだね?」
「そうよ。ザースはお酒を渡せるけど私は何も渡せないわ。だからせめて、自分達で狩った素材でジオの装備を作って上げたいの。そのためにはグルーモアじゃないとダメなのよ。」
セリーがそう返すと。皆は少し驚き、頷きあった。
「そういう事なら依頼料なんていらないよ。」
「そうよ。それならグルーモアの冒険じゃない。仲間から金はとれないわ。」
「そうだな。しかし、あのクールなセリーちゃんがこんなになるとは…。」
「ええ、悔しいわ。」
皆がそう言ってくれる。しかし、彼らもこれでメシを食っておる。いくら金には困っておらぬとは言えそれはいかんじゃろう。
そう言うワシらに皆は
「じゃあ、僕らはザース達の必要ない素材を貰っておくよ。」
「そうね。それで依頼料としておきましょう。」
「あぁ、それでいいぜ。元々俺はこのチームで戦えるなら文句はないしな。」
「じゃが、それでは。」
まだ、渋るワシにバドルが締めた。
「いいんだよ。ザースとセリーの息子なら僕達だって他人じゃない。これは僕たちからの送りものさ。」
「…ザース。ここは好意に甘えましょう。」
バドルとセリーに諭されワシは反論のしようも無い。
「済まぬ、ではよろしく頼むのじゃ。」
「うん。じゃあ、早速行こうか。ワイバーンの生息地まで遠いしね。シバイル頼まれてたやつは用意してくれた?」
「あぁ、調伏させるのに苦労したが村の入り口に止めてある。食料や水も積んであるし直ぐにでも出れるぜ。」
そういってワシ達は村の入り口まで進む。そこには見事に調伏された攻撃力こそ強く無いものの、その高い機動力でBランク中位に位置するシルバーウルフが二匹馬車に繋がれて座っておる。
「中々のものね。足の早いシルバーウルフなら、ワイバーンの生息地の近くまで4日もあれば行けるでしょ。」
「ああ、特にこいつらは足の速い個体だ。雑魚なんか走りながら殺しちまうから道中も心配ない。」
「じゃあ、行こう。御者はシバイルしかできないから他の事を僕達が分担しよう。」
こうしてワシらはワイバーンの生息地に向かった。
途中オーガが出たものの、セリーが飛び出し自慢のメイスでその頭を粉砕した。
「セリー凄い勢いだったわね。どうしたの?」
「私は早く帰らなくちゃならないの。あんなオーガに時間を取られる暇は無いわ。それにオーガの革はブーツや帽子にちょうどいいと思うし。…あぁ、ジオ大丈夫かしら。ちゃんとご飯食べてるかしら。」
「「あのセリーがこんなになるなんて。」」
独身時代クールな性格だったセリーのジオに対する態度にバドルとシバイルは声を揃えて驚く。
ワシもこんなにセリーが変わるとはおもわんかったのじゃ。
4日後。
驚くべき早さで、ワイバーンの生息地であるエルハーラ高原に着いたワシらは馬車を降り現役の頃のように、バドルが斥候兼戦闘時の指示役、リーリアが索敵兼遠距離攻撃役、シバイルが遊撃。ワシがタンカー。セリーが回復役と役割を確認して歩を進める。
2日間、
ワシらはひたすらにワイバーンの住処である高原の中心を目指す。
途中何度が敵と遭遇したものの、リーリアがしっかりと感知し、隠密系のギフト持ちよバドルが正確な情報を収集して、危なげなく倒すことができたのじゃ。
「おいおい、ザース。お前ちょっと鈍ってないか?そんなんで大丈夫かよ。」
シバイルがグレイブウルフを斬り倒しながらワシに話しかける。
「うぬ。戦線を離れて長いからのう。多少は鈍っていても仕方あるまい。じゃが、もう随分慣れた。ワイバーンの所に着く頃には万全になっとるじゃろう。」
「ホントお願いよ。タンカーがしっかりして無いと、おちおち詠唱も出来ないわ。」
「ザースはまだいいよ。余り身体の劣化しないドワーフなんだから。僕なんて戦線離れて大分たつし、ソロソロ身体も衰えてきてるしね。」
「あら。種族の問題じゃ無いでしょ。大した運動もせずに机に齧り付いてるからいけないのよ。」
セリーに嫌味を言われ、やっぱり変わってないやと一つ頭を掻くバドル。
うむ。ワシもいくら老化の早い猿の獣人とはいえお主は少し酷いと思うぞい。
いや、技術とかでは無く単純にその腹、少し出てきたんではないかのう。
「その分セリーの回復魔法は全然衰えてないね。」
「当たり前よ。私は毎日ジオに回復魔法をかけているんだから。」
嬉しそうに胸を張るセリーをリーリアが微笑ましそうに、しかし、何処か悔しそうに見ておる。
「待って。皆動かないで、大型の魔物が感知魔法に引っかかったわ。相手は2体。恐らくワイバーンよ。恐らく向こうも私の感知に気づいたわ。注意して!」
「うん。ちょっと僕が見てくるよ。」
そう言ってバドルがスッとその存在をくらます。
「ひさしぶりに見たけど、バドルのやつギフトの練度だけ、また上がってるわね。」
「ギルドを運営してる立場だ。綺麗事ばっかでも無いんだろうよ。あのギフトは裏で動くのにうってつけだからな。」
リーリアとシバイルが雑談をしておる。しかし、別に警戒を怠っとる訳でも無さそうじゃ。
ワシとセリーも回りを警戒するなか、バドルが姿を現した。
「ワイバーンが2体だ。子育てをしているらしく凶暴化している。少し距離を置きたいところなんだけど、先のリーリアの感知魔法に反応したようだ。此方に向かって襲いかかって来ている。」
「どうすんだ?逃げんのか?」
「馬鹿じゃないの。そのワイバーンを狩りに来たのよ。まとめて消炭よ。」
「リーリア、消炭は駄目よ。素材が取れなくなっちゃう。」
「ホントだね。消炭は却下だよ。だけど、リーリアの言うことも一理ある。どうせ逃げても飛んでるワイバーンには敵わないし、ここで戦ってしまおう。リーリアは土属性の魔法でワイバーンの羽を破壊して。あとは皆わかってるね?よろしく。」
バドルが細かい指示もせず再びギフトを使い気配を消しおった。
その時、前方から空を劈くような声が聞こえた。
「クゲァぁぁぁあ!」
「豊穣なる大地に願いたて祀る。我、リーリア・フィルフィートのマナを持ちてその力の一端を…」
すかさずリーリアが詠唱に入る。
サリーは後方で回復支援の準備を整え、ワシはリーリアの前に立つ。シバイルは今か今かとワイバーンが落ちてくるのを待っておる。
バドルは恐らくワイバーンが足を地面に着けた途端羽根を切り落とす為に潜んでおるのだろう。
「グラウンドグローブ!」
リーリアの魔法が開戦の狼煙をあげたのじゃ。
「いやー、中々面白かったぜ。」
帰りの馬車の上シバイルが後ろを振り向き興奮したように喋っておる。
「おい、犬っころ!ちゃんと前見て御者しなさいよ!」
「大丈夫だよ。こいつ等はそんなに馬鹿じゃねぇ。それより大量だったな。」
「うん。卵も手に入ったしね。これはホントに依頼料なんか無くても大儲けだね。」
「火魔法が使えたらもっと楽だったんだけどね。」
「あら?リーリアは良くやってくれたわ。ありがとう。」
「セリー!」
抱きつこうと飛びつくリーリアをセリーがヒラリと躱す。
「しかし、流石にワイバーンの突進を正面から受けたザースは死んだかと思ったぜ。」
うむ。ワシも流石にあれは死を覚悟した。リーリアを守る為とはいえ、爪を立てたワイバーンの突進を正面から受けることになろうとは。おかげて鎧もズタズタじゃ。
「あら、どんな怪我でも死なせはしないわ。ウチでジオになんていえばいいのよ。」
「そこはせめて旦那の心配にしようぜ…。」
まぁ、セリーは置いといて、結果としてワシらは3匹のワイバーンを狩り、卵を一つ手に入れた。どうやら生まれかけの様じゃ。そのうち1つをワシらが貰う。あとはバドルらの取り分じゃ。
「あぁ、これだけあればアレもコレも作って上げられるわ。身につけたジオはとっても素敵でしょうね。…待っててねジオ。」
うむ。オーガの革もあるしのう。とりあえずひと段落じゃわい。
帰ったら家につく前にグリアやら、村の皆に依頼を出さねばいかんの。
息子の旅立ちの装備の材料をこうしてグルーモアで狩れる。それは、この上無い幸せなのじゃろうな。
「じゃあな、楽しかったぜ。また何かあれば呼んでくれ。」
「うん。良いものも手に入ったし、楽しかったよ。ジオ君にもよろしくね。」
「セリー、その筋肉ダルマが嫌になったら何時でもいらっしゃいね。大歓迎だから。」
「うん。ありがと。リーリアもいつかウチに来てね。」
再び、ヤロイー村に戻ってきたワシらは各々言葉を交わして解散したのじゃ。
「さて、ワシらも帰ろうかの。」
皆を見送ったあとセリーを振り向くと。
「ザース何してるの?早くしないとおいて行くわよ。」
セリーは既に帰る準備が万全であった。
やれやれ、何時からこんなに子煩悩になったのかのう。
セリー視点も書こうと思ったのですが、ジオジオとなって鬱陶しいのでやめました(笑)




