ドワーフの旅立ち 後編
次に目を覚ます夕方でベットの上だった。
慌てて自分の上半身を確認するが傷一つついていない。
回復魔法とは凄いものだ。
前世なら確実に入院コースだろう。全治ウンヶ月というやつだ。
台所に出てみるセリーが飯の準備をしていた。
「あら、ジオ起きたの?念入りにかけといたけどもう傷は大丈夫?」
「うぬ。ありがとう。もう大丈夫なようじゃ。して、父さんはどこじゃ?」
「放置していた酒蔵に行ってるわ。もうすぐご飯よ、ちょっとゆっくりしてなさい。」
セリーのお言葉に甘え、ソファーでゴロゴロしているとザースが帰ってきた。
「うぬ?おお、ジオ起きたのか。傷は良いのか?しかし、強うなった。ワシも驚いたわい。」
そう言って笑うザースの顔は所々青黒く腫れていた。
あれ?俺そんなとこ殴ったっけ?
戦闘中は必死過ぎて記憶が曖昧だ。
「うぬ。それで最後の技はなんじゃ?ワシはあんな技しらんぞ?」
「うぬ?あぁ、あれは別に技では無い。単に流斧を攻撃の時に使っただけじゃ。流斧は細かい技などない。逆にゆえば基礎が全てじゃ、上達させるとあの様なことも出来るのじゃ。」
そうなのか、しかしまぁ奥が深い。
まだまだ、俺はヒヨッコだと言うことだろう。
その後、今後の細かい話を打ち合わせ、皆でご飯を食べようとテーブルに着く。
どうやら、街に渡るため行商人に運んでもらうように手配してくれていたのだとか。
なにも考えてなかった俺としては大変嬉しい話である。
そして、セリーが運んで来てくれた料理はなんと、おろしハンバーグだ。ポン酢もしっかりついていた。
「ほら、この前ジオが作ってくれたでしょ?それを作ってみたの。この前貰った東方で作ってるという。調味料が合うと思ってついでに大根も摩り下ろしてかけてみたわ。」
マジですか。オラの数少ない前世知識を一瞬で超えてきたんですけど。
ハンバーグの作りかたなんて教えても無いのに作っちゃってるし。
「あの料理、具材は簡単だったしね。長いこと料理してるんだもの。あれ位は簡単よ。」
得意そうにセリーが俺の疑問に答えてくれる。
ダメだ。考えてみればこの世界の人は学力こそ大したこと無いだけで別に頭が悪いわけでは無い。
素人の知識など難しいものでなければ、わかった途端に簡単にそれを超えてくる。
所詮は素人。長年主婦をやるセリーには勝てるはずもない。
知識の流出は極力避けよう。
もともと、銃刀法のないこの世界に銃なんて伝えた日には凄いことになりそうだ。
デカイ魔物や身体が異常に強いこの世界の人に効くかは知らんけど、俺の想像を超えたものを作られそうだ。
まぁ、詳しい銃の作りかたなんて知らんけど。
ちなみにおろしバーグは絶品でした。
そして、2日後。
俺は旅に出るため今両親と玄関で向かい合っている。村人達への挨拶は昨日の内に済ませて置いた。
手には愛用の戦斧と新しいグリアさんに作って貰った手斧だけ、防具などはお金の都合で街で作って貰う予定だ。因みにザースに貰った革鎧は先日の試合でものの見事に破壊されていた。
「では、行ってくるのじゃ。」
俺はそう言って行商人の待つ街の広場まで行こうと家をでる間際ザースが荷物を持って駆けつけてきた。
「コラコラ、馬鹿者。そんな格好で何処に行くのじゃ。餞別じゃ、持って行けい。」
渡してくれたものは、上半身の鋼鉄製の鎧、革のブーツ、鱗で出来たようなの脛当てと籠手、茶色いマントに、魔術師がかぶる様な丸いツバのついたトンガリ帽子、小さい袋、そして普通のより2回りも大きい両刃のバトルアックス。そして、酒樽が一つ。
「ドワーフは昔より、旅立つものに親の作るものを託す。ワシは酒職人ゆえ酒じゃが、セリーも何か渡したいというての。少し素材を取りに行っておった。この武器は職業冒険者としてのワシとセリーからの餞別じゃ。」
その後をセリーが引き継いだ。
「ジオのギフトは移動には使えないのよね?だからフルプレートは動き辛いだろうと上半身だけにしたわ。ブーツと帽子はオーガの革を使っているから磨り減りにくいでしょうし防御率も高いわ。籠手と脛当てにはワイバーンの背中の鱗を使っているから簡単な攻撃なんて弾き返すでしょう。この小さな袋は怪鳥バーグルの餌袋を利用したものでね。小さく見えるけど小屋一つ分ぐらいの容量がはいるのよ。内容物は劣化しないわけではないけど、かなりし難くなっているわ。旅で手に入れたものだけどジオに上げるわ。マントもワイバーンの革よ。ズボンも作って貰ったから着替えや食料と共に魔法袋に入れて置いたわ。そして、このバトルアックス。大きく重い武器はドワーフの誇りよ。少しだけど持っていたダマスカス鋼を混ぜ込んであるわ。鎧と一緒にグリアさんに鍛え上げてもらったちょっとした銘斧よ。さぁ、つけてみて。」
「そして、これがワシの酒じゃ。今まで作った最高傑作じゃ、これを一日一杯飲むがよい。無くなる頃には一度帰ってこい。」
まったく、この人たちは。
涙が出そうになった。
恐らくあの留守はワイバーンを狩りに行っていたのだろう。
ワイバーン。余りに有名なそれは俺だって知っている。
Bランク上位に位置する亜竜の一つでザースとセリーであろうと、相応の覚悟が無ければ戦えない相手だ。帰ってきたときザースの自慢の鎧がボロボロに引き裂かれていたところをみると、相当な傷を負っていたのだろう。
「素敵よ。ジオ。立派な戦士になったわ。でも、辛くなったら何時でも帰っていらっしゃい。私達はずっと此処にいるわ。」
装備を身につけた俺を見てセリーが涙ぐんでくれている。
「うむ。立派なもんじゃ。お主はきっとワシを簡単に超える。その勇姿を見れる日を楽しみにしておる。」
ザースも楽しそうに笑い励ましてくれる。
「ゔぬ。いっでぐるのじゃ。」
泣くのを必死で堪えて両親に頭を下げる。
「戦士が旅立ちに泣くでない。きっと立派になって帰ってこい。ワシらは此処までじゃ、村の端まで見送りはせん。頑張ってこい。」
ザースがそっと背を押してくれた。
村の広場に着くと行商人の猿の獣人のローグさんが待っていてくれた。まだ、30になったばかりといった年齢で優しそうな顔つきをしている。
俺のドットベアを買ってくれた人でもある。
「おっ、ジオ君凄い装備だね。もう準備は良いのかい?」
「うむ。よろしくお願いしますのじゃ。」
「はは、お願いするのは私の方だよ。道中に護衛がタダで着くなんてありがたい。行き先は商業都市ファルフィリアだけどいいね?約1ヶ月間よろしく頼むよ。」
そういってローグさんは荷馬車に乗り込んだ。俺もローグさんの横に乗り込もうとした時後ろから声がかかる。
振り向くとそこに立っているのはターリさんだった。
「おーい、ジオ、ワシからも餞別じゃ。」
そう言って二つのグラスを渡してくれた。
そのグラスは芸術的な文様を刻み各所に綺麗な宝石のようなものをあしらっている。決してゴテゴテはしていないが、その姿はとても品がよく高級感が滲みでている。
「どうじゃ。中々のものじゃろう。高価なものは使っては無いが中々の俊作じゃ。どうせ、ザースは酒は与えてもそれを飲むグラスは与えんかったのじゃろう?グラスと酒が融合するから至高のものになるというのに。まぁ、道中その素晴らしいグラスを狙って様々な者が襲いかかってくるとは思うが大事にするのじゃぞ。」
がはは、と笑いながら。踵を返すターリさんに深々と頭を下げ馬車に乗り込んだ。
全く、この村のドワーフ達は。
本当にありがたい。こんなにも俺のことを考えてくれていたのか。
村を出て数時間、
やっと落ち着いてきた俺に対してローグさんが話かけてきた。
「それにしても、ジオ君は村の人に好かれていたんだね。」
「うぬ。ありがたいことですじゃ。しかし、何故またそう思われるのかのう。」
「私達ドワーフの製品を売るものには良く知られたことなんだけど、ドワーフって言うのはものづくりのプロでしょ?だからお金に困るってほどの人は少ないんだ。そんな訳だから彼らは俊作を余り人には売らない。自分が認めた人に使って貰おうと取ってあるんだ。ジオ君の装備を一目みて分かったよ。それは私達には売らないものだ。是非買取たいものだよ。」
そうなのか、ウチは酒職人だったからあまり知らなかった。だが、確かにザースも決して売らない酒樽があった。ということはこの魔法袋に入っている酒はあの酒樽なのだろう。
「うぬ。申し訳ないのじゃが、これらは…。」
「はは、分かってるよ。ごめんごめん。でも、商人として声はかけたかったんだ。許しておくれ。」
ふむ。ローグさんは優しい人だ。恐らく俺を和ませる為に言ってくれたんだろう。
「さて、これから1ヶ月よろしくね。途中で出る魔物は大したことは無いだろうけどジオ君に任すよ。万が一は私も多少戦える。代わりに素材の買取はするし、食費と宿代こちらで持つよ。」
「こちらこそ、よろしくですじゃ。精一杯務めさせて貰いますじゃ。」
今はもう見えないドワーフの村に向って一つ頭を下げた。
皆。俺いってきます。
これで1章は終わりです。この後、一話の間話を上げたあと約10日ほど書き留めの作業に入ります。
この作品を見てくれた皆様に本当に感謝しています。
拙い作品ですが、どうぞこれからも見てやってください。




