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公園と昔

作者: 阿山利泰

短編はどこから読んでも面白いがモットーだったんですが、今回ばかりは前の作品を読んでもらえると嬉しいのですが…

もしよければ先に公園の月と公園の鏡を読んでください。

私は結婚していた。


それは彼の無くしたものの代替物だったかもしれない。


指輪も貰ったし、愛されてもいた。


しかし私を愛した人はもういない。




ある日の昼下がり、公園の大きな木下で少年と少女がいた。

私はお気に入りの階段の上でその光景を見下ろしていた、

少女は手にピンクの手鏡を持ち、少年は器用に花の茎を折り曲げ

小さな円状に組み上げていく、指輪のようだ。

その指輪を少女に手渡す、少女は受け取り指にはめて笑う。

屈託の無い笑顔、本当にうれしいのだろう。


私も指輪を貰った事がある。

それは…私がまだここに来る前の話だ。

一人の男に愛されていた。

その男は最愛の人を亡くして寂しかったのだろう、

そんな時に私は出会った。

最初の印象はタバコ臭かった事だ。

服にもタバコのニオイが付いていた。

吸っていなくても臭いがする。

彼はいつも優しかったし、楽しかった。

でも、彼は笑っていたが楽しそうではなかった。

ある日、彼は私に指輪をくれた、

それは彼が愛した人に送った物だった。

それを私にくれたのだ、私に。

複雑だった、私は彼のなんだったんだろう?

この胸が張り裂けそうなくらい悩んだ。

貰った指輪はサイズが合うわけも無く、チェーンを付け首から下げる。

そんな私を見て、微笑んでから上を見上げる。

彼は月を見ていた。

最愛の人と月を見るのが好きだった…と、

彼が言っていたのを思い出す。

私も月を見上げる。

彼は何も言わなかった。

私も何も言わなかった。

ただ、月を見ていた。

時間がたつのも忘れて。

別れは唐突にやってくるものだ。

どこからか帰ってくると、唐突に喋りかけてきた。

彼は「どうやら僕は長くないらしい」

その言葉から意味を汲むと死期が近いと言う事なのだろう。

タバコを吸っている手が震えている。

「僕は病院に入る、君の面倒はもう見て上げられそうにない」

別れの言葉である、私はそれでも近くにいたかった。

しかし、彼は彼がいなくなった後の事を心配しているのだ。

心配されるほど私は弱くない。

そう長い間ではなかったが愛してくれた者の最後、

見届けたかったがそれは叶わない事だ。

私は家を出る事を決めた。

最後に私は一言だけ言った。


「ニャーッ」


っと。

最後に彼はタバコの臭いと思い出だけを残した。

私は首に下げる指輪を置いて家を出た。


気付くと少年と少女はいなくなっていた。

ガラにも無く昔の事を思い出してしまった…




私は結婚していた。


それは彼の無くしたものの代替物だったかもしれない。


指輪も貰ったし、愛されてもいた。


しかし私を愛した人はもういない。

はい


読んでいただいてありがとうございます阿山利泰です。


公園シリーズ三作目、色々な伏線を回収し短編なのに続いてしまうと言う管理人さんに怒られてしまいそうですが、公園シリーズは次で締めくくりたいと思います。


今後もごひいきにお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] はじめまして!○○オチとは気付きませんでした(^^;;主人公の淋しさと強がりが、短い中によく表現されていると感じました。よくまとまった読みやすい文章だと思います☆これからも執筆頑張ってクダサ…
2006/07/18 08:14 矢口まゆか
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