3.過去の記憶
こちらの投稿をできれば週一回にしようとおもいます。
悲しいのか?
そうじゃない
じゃ、なんで泣いてる?
わからない
ここが嫌いか?
嫌いじゃない
…
「そういえば最初はそうだった…」
悔しいの
悔しい?
誰も私を人だとおもってない
そんなことない
そんなことあるわよ!
…
「少なくとも俺はそんなこと思っていない」
なぁ
なに?
俺のことは信用できない?
わからない
俺さ初めて気づいたんだ…
「一目惚れってのはほんとにあるんだな」
「どうしたんですかスバルさん、急に?」
横からカーチェスが覗き込む。辺りは、まるで迷いの森にでも入ったかのように延々と緑が広がっている、単調な飛行が続くと、どうも色んなことを考えこんでしまう。
「あっ、いや…なんだぁ〜その、思い出し喋りだ」
「何ですかそれ、まっいいですけど」
ははは、と笑うカーチェスは電子ナビを取りだし、俺につきだす。
「それで、これからどこへ行って、何をするんです?」
好奇心剥き出しのキラキラ輝く目が眩しい。機体はある町へ向けて飛ぶ、1人乗り用の機体、座席の後ろで荷物にまみれながらカーチェスは聞いてくる、聞かれてすぐに答えられなかった。出力をlowに落とす。
最終的な目標は愛の奪還と曖昧な復讐、これは決定事項だ。そのための第一段階としてまずは…。
「武器だな」
「ぶきっていうとWeapon?」
そう、と一言、目的達成のため、今一度必要な物を整理しておこうか。
「強力な武器、天才科学者、即戦力、確かな証拠、今必要なのはざっとこんなもんだな」
「なんだかよくわかりませんが、いいですね! 旅してるって感じがします!」
「だろ」
と言ったが、そうか? まあいいか、話を続ける。
「でだ、強力な武器の手に入る場所に、1つ心当たりがあるから、まずはそこに行く」
前を指差す、方向はたぶんあってる、前にはやはり緑が広がるのみだが、とりあえず今は近くの港へ向かい飛び続ける。緑が途切れると町はすぐにその姿を現した。
乗船チケット2枚と、機体運送券を買った。折り曲げないようにしなければいけないが、かまうことはない、すぐに時間がくるのだからとポケットに突っ込んだ。そのまま手持ち無沙汰で町中をぶらぶらする。
「機体搬入は12時で出港が12時半」
腕時計を見ると、時刻は10時から半時ほど過ぎた頃だった。
入った飯屋には数名の客がいる、ざっと空いてる席を見て、横一列に10人は座れるカウンター席の丸いすに腰を下ろす。とりあえず、まずは。
「アイスミルクティー」
「アイスはないよ」
なぬ! アイスがないだと、嘗めている、嘗めているぞ。無愛想な喋り方が頭にくる、しかしここは温厚に行くべきだ、こんなところで警察やらなんやらの世話になっては先に進めない。浮きかけた腰を戻す。
「じゃあホットで」
「お客さんメニュー、見てくださいよ」
握った拳を、机の下で押さえ込む。初めからそう言え、まぁメニューを見ない俺も悪いのだが。
「じゃあ、カフェオレで」
「悪いね、カフェオレ今切らしてんだわ!」
ぶちッ!
「表でろコラーッ!」
*
スバルさんにお使いを頼まれてから一時間は経った、港町だけあって、商店が豊富だ、魚市場を抜けて少し歩くと出店、露店がずらりとある、ここまでくると魚の生臭さは感じない、そんな中を1人右往左往している。大体のものは揃うのはいいことだ、しかし、人の多いのは苦手だ。
「えっーと、後はアイスミルクティー」
スバルさんは相変わらずアイスミルクティー好きだなぁ〜、僕はアイスミルクティーを探し始める。しかし、しかし、探せど探せどアイスミルクティーなんてない!
「買わずに戻ったら、スバルさん怒るだろうなぁ…」
妥協案としてはアイスカフェオレを買うか、紅茶とミルクを買うか…
ん〜、困った。
最後の期待を込めて入った店に掛かった時計は10を指している。自分の腕時計も見る、5分遅れている。
*
あれ…
「なんだ、それは」
「ん?」
軍の訓練場をでてすぐには、男子更衣室と女子更衣室を左右に挟んだ休憩所がある、シャワーも完備されている。
疲れた体に一杯! シーナはそれを覗き込みながら聞いてきた。
「その飲み物はなんだと聞いている」
「なぬ、お主、アイスミルクティーを知らぬとな」
「なんだその喋り方、飲んだことないな」
「人生の半分は損してるぞ!」
「ま、飲んでいたとしても覚えてないのだが」
シーナは笑う。そうだ彼女は軍に来る以前の記憶がないのだ。俺はよしと一言立ち上がると腰に手をあて胸を張る。
「シーナにも買ってしんぜよう」
「いいよこれで!」
俺から紙コップに入ったアイスミルクティーを奪い取る。かっ間接キスだ!
「どっどうだ?」
「甘いな」
「甘さは調節できる」
ベンダーを指差す、正確には砂糖と書かれた横の無、少、多のボタンを指差す。
「スバルは味覚が幼いな、18だから仕方ないか」
「うっうるせ〜、文句言うなら飲むな!」
カップを引ったくる、シーナはまた笑う。
「あっ間接キス」
ぶっ、思わず吹き出す、くそ〜こんなに子供扱いされるのは初めてだ、その大爆笑の口を封じてやりたい…。
「顔赤いぞスバル〜」
うるせ〜、ニマニマ笑うなぁ〜、くそー最悪だ最悪だ最悪だ!
「ん? どこいく?」
「訓練に戻る」
「…」
なんだその悲しそうな顔は、はは〜ん。
「俺がいないと寂しいんだな」
「そうだ、悪いか…」
時計を見る、もう少しいいか。再びシーナの横に座る。
「行かないのか?」
「もうちょっとな」
「もう一口」
カップを渡す、なんか幸せ…、それを奪い去るおっさんの声。
「スバル!」
「なんだよ、ハザック!」
「お前が早く戻らないから紫音がふてくされてるぞ」
「あいつ、そんなに訓練好きなんかよ」
ガラス越しに訓練場が見える、紫の機体にもたれ地面をいじくる少女が1人。
「そうじゃないだろ!」
「なにがだ?」
「おめぇ〜は女心がわかってねぇなぁ〜」
「ならハザックは分かるのかよ!」
「あたりめぇよー、紳士のたしなみだ」
「あっそ」
えらそうに。立ち上がりシーナを見る。
「じゃ戻る」
「うん」
スバルさん…
「スバルさん!」
「ん? あれ?」
「どうしたんですか?」
辺りを見回す、〈SDX〉機内、大量の荷物を持ったカーチェスが前面モニターに張り付いている。
「夢?」
飯屋のおっさんと一悶着あったあと、〈SDX〉で踏ん反り返っていた俺はどうやら、眠っていたようだ。機体ハッチを開けるとカーチェスは後ろへ回り、入ってくる。
「なんか幸せそうな顔してますね」
「ああ、なんか懐かしい夢を見た気がする」
軍にいた時の夢、となると一年以上前だ、なぜそんな夢をみたのだろうか。カーチェスを見ると入り口から動かない、いや動けない。
「それよりカーチェス」
「なんです」
「そんなに荷物は乗らないなぁ」
「僕もそう思います」
腹の虫が鳴く、そういえば昼は食い損ねたのだった。船の時間ももうすぐだ、荷物から適当に食べ物を口に放り込む。アイスミルクティーもある。さすがカーチェスだ、それをカップホルダーに差し、キーを回す。
カーチェスは船に乗るのは初めてのようだった、そして初めての強敵と戦っている。
「うくっ、気持ち悪い」
「BAは大丈夫なのに船はダメなんだな」
甲板に突っ伏すカーチェス、それを引っ張り端へ連れていく。
「すごい飛沫だぁ〜」
カーチェス~目が逝ってるぞ、戻ってこ〜い。
「そこにならいくらでもどうぞ」
「なんか…、僕が苦しんでるの…楽しんで…ませんか? …ウプッ!」
「そんなことないぞ、愉快だと思ってるだけだ」
「そういうのを世間一般的に楽しんでるっていうんですよ、ウッ!」
「よしちょっと待ってろ、水持ってきてやる」
初めての船で初めての船酔い、これもまぁ経験だ。 水は新しいのを買えば早いのだが、資金にも限界はあるし、今はまだ貯金にあまり手を出したくはない、〈SDX〉にはカーチェスに買わせた水があったはずだ。
「護衛BAが積んでないとはどいうことだ!」
向かう途中にそんな怒鳴り声が耳に入ってくる。この角を曲がった奥にいるようだ。そっと覗き込む。本来なら護衛用BAが積まれているはずの格納庫の前には二人のクルー。
「すいません、傭兵隊との手違いでして」
「手違いで済むか! 今すぐこちらに向かうように連絡をいれろ!」
「しかし資金が…」
「そんなもん、自分でなんとかせんか! どうするんじゃー、賊にでも襲われたりしたら、それこそ貴様の給料数年分で済む話じゃないぞ!」
手厳しいね、あの髭面のおっさんは船長っぽいな、しかしミスを全部、部下の責任にするなんて、みっともないにも程がある。
「船長!」
もう1人船員が増える、慌てたようすだ。こりゃ何かあったな。
「なんだ、今は」
「それが…」
耳元で声をおとす。なんだ、ここからじゃ聞こえない…!
「ほっほんとか」
「まだ、確認はとれてませんが…」
「くっ…、とにかくお前は傭兵隊に連絡をとれ!」
問題発生だな、唯一聞き取れた南という言葉、ニヤリと笑う、これはいい!