親友の学校に行きます
ヨトゥンを倒した帰りに、アリスと2人で湘南モノレールに乗った。
私は西鎌倉駅で降りる、アリスは富士見町駅。
「そういえば、最近AR増えたねぇ」
車内を見回せば、みんなメガネみたいなのを掛けてる。
ゴーグルみたいなのとか、サングラスみたいなのとか、モノクルみたいなのとか、デザインは様々。
ほぼ透明で付けてるのがわからないとかもあるし、骨伝導イヤホンに見えるのも――あれは・・・眼帯?
「あー、そうですね。今日のコンサートは特に、AR演出があったのでみんな付けてましたね。スポンサーにARを作ってる会社もいましたし」
「にゃる」
イッツァ、SUNY。
「最近ARゲームも流行ってますよね」
「そなの?」
「――えっ、知らないんですか? オラクル・プラムノードとか、現実世界をファンタジーゲームに変えて、その中でイースターエッグを探そうみたいな。――面白いですよ? ほら、あの人今戦ってます」
「手元でなんか操作してるね」
座って手元でなんか操作してる。なにもない場所をなぞってるのに操作できてるみたい。
どうなってんだろう?
なにも無い空中で操作とか、スマホの画面じゃあるまいに。スマホの画面はガラス――というかシリコンにスイッチのオンオフを並べて半導体みたいに――いや、それはともかく・・・・ああ、腕輪つけてるなぁ――じゃあ、ジャイロとか加速度センサー?
「ARの戦いで大立ち回りされると、流石に周りに迷惑なんで、普段はあんな感じなんですけど、エリアイベントとかになると全身を使って戦えます」
「私は、座ったままでいいかな――アリスは運動得意だからいいだろうけど」
「ほんと、体動かすのが嫌いですね、涼姫ちゃんは。――というか普段はサブカルに詳しいのに流行りのARゲームは知らないとか」
「そのゲームあれでしょ? 外を移動する人ほど強くなれるんでしょ?」
「ま、まぁ」
「私、最弱決定じゃん」
「・・・ほろり」
◆◇◆◇◆
なんかダンジョンが出現した明くる日、私は遊ぶ約束をした友達の学校の前で待っていた。初めてくるなぁ、ここ。
ちなみに女子校。大きな門の前で待ってる。
なんか奇異の目で見られてる気がヒシヒシ。「なにアイツ、誰?」って感じ。
というかここ、中学生も通ってるんだ? 百合の花園だなぁ。
遠くから「お姉様~」なんて声も聞こえてくる。
おー。百合が咲いとる、咲いとる。
でも、不審者を見るような、私に刺さる視線に変化はない。
私は、急いで変装セット――メガネ、マスク、キャップで容疑者の顔を隠匿。見た目は余計に不審者と化す。
気配を消す(消せるとは言ってない)作戦を実施していると、「立花おねぇさまー!」なんて聞こえてきた。
待ち人来る。
待ち人は、立花 みずき。ゲームIDはリッカ。
見れば静々と歩く、背の低い女の子。
「やっぱり立花お姉様は清楚でいらっしゃるわ」
「本当にあのクールなお姿を見ると、胸がトキメキます」
私は遠い目になる。
「学校ではクールな立花お姉様、って言われてるって聞いたけど、本当だったんだなぁ」
でも草なんよ。私の前ではアイツ、ただの子供なんだぜ(草)
私が、百合の花園に草を生やしていると、急に肩を叩かれた。
「えっ!?」
「君ちょっといいかな」
振り返れば、門衛っぽい人!
メガネ、マスク、キャップは怪しすぎました!?
「そこの生徒が、不審者がいるって言ってたんだけど。君、ちょっとこっちに来て――」
「涼姫!」
私が人生で8番目位のピンチに陥っていると・・・みずきが私を呼んだ。
スマン、ピンチが多すぎてな、不審者扱い程度は8位になるんだ。・・・・他人は私を無敵と呼ぶけれど、弱点が人間でな。人間って地球に80億もいてな、すぐピンチに陥るんだよ。
「ん? どうした、なんか絡まれてるのか?」
「うん、ピンチ」
私がピンチというと、みずきの目が鋭くなった。
あ、マズったかも。
門衛さんがちょっと怖い声で、
「ああ、ちょっと不審者――」
言いかけた時だった。
みずきの姿が霞みたいになった。
あの子、『立花放神捨刀流』という剣術を伝える武家の娘で、姿を消す技とか身につけてる。
ただ、みんなが見ると、みずきの姿が消えて見えるらしいけど、私にはなぜかモヤみたいに見える。
そうしてみずきは、いつの間にか門衛さんの腕を捻り上げていた。
「あだだだだだ!!」
門衛さんが叫んだ。
ちょちょちょちょ!!
「何が不審者だ。お前が不審者だろう、なんで男がいる」
門衛さんでしょ!? その人!!
君の学校の門衛さんでしょ!? なんで知らないの!?
あっ、この子、実はポンコツさんなんだった!!
「みずき、その人、門衛さん! 門衛さんだから!!」
「門衛? ウチは門衛も女性だぞ」
「え!?」
すると、門衛(?)さんが曰う。
「わ、私はこの百合ヶ浜を守る、近所に住む、正義のボランティ――」
「不審者だーーー!」
私は思わず叫んでいた。普通に、不審者の界隈の人だった!
不審者界隈の人が涙目になる。
「し、しかし、今年のインターハイ優勝者にして、人間止めてる強さのみずきちゃんは不味い!」
みすきのこと知ってるし!
不審者界隈の人が私を見る。
「――君、みずきちゃんのお友達だったのか!? 疑って悪かった! 助けて――あっ、それは止めて!?」
私はスマホを取り出して「ヘイ、ポリスメン」。
不審者界隈の方は逃げようとするけど、片手で屈強なプロの傭兵すら押さえる古武道の技を持つ、人外立花 みずきから逃げられるわけもなく。
不審者界隈の方は連行されて行った。
すると、満開の百合達が私へちょうど最近見た、羨望とかいう名前の視線を向ける。
「あ、あの方、お姉様のお友達ですの?」
「ま、まさか、スウ様では?」
「昨日、横浜をお救いになられた!?」
なんか正体を看破してるお百合がいるので、メガネとマスクとキャップを外す。
「あっ、スウ様ですわ!」
「なんて凛々しいお姿――・・・そうでもありませんわね」
「なんだか予想より、なんというか、地味・・・・?」
「・・・弱そう?」
失礼な子達だね!?
「スウ、昨日のヨトゥンとの戦いの話を聞かせてくれ! 主に街をぶっ壊した辺りを!」
「・・・貴様、何を期待している」
「あと、今日も遊ぼう!」
「うん、遊ぶって何するの?」
「片瀬海岸いこう!」
「ま・・・まさか泳ぐの? 私、水着には絶対ならないぞ?」
まだ海開きしてるけど。
「食べ物買って、狙って飛んでくるトンビを躱して、おちょくる」
「止めなさい」




