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雷神トールになります

   ◆◇◆◇◆


 防衛大臣、蜂田のスマートフォンへ電話が掛かって来た。


「なに? 横浜スタジアムで謎の構造体が出現? そこから凶暴な生き物――人の形をしている・・・? ――対話はできるのか?」

『死ぬと、ガラスのように砕けるとのことです!』

「それはフェイテルリンクのMoBと言うヤツでは? ――現地の警察・消防だけでは対応不可能か?」

『情報がまだなく!』

「・・・なら自衛隊の出動準備を。総理官邸にも連絡しろ」

『――アメリカも支援準備を開始しています』

「分かったそれも含めて協議する!」


 素早い決断を終えて、スマホでの通話を終了する蜂田。


「横浜基地の玄関先でこの騒ぎか――国民の命は決して奪わせんぞ」


   ◆◇◆◇◆


「とりあえずドヴェルグは、片付いたね」

「はい」


 荒い息を吐きながら、私とアリスが周囲を見回した。

 警察も駆けつけて来ている。


 だけど、事件はこれで終わらなかった。


「なに・・・・あれ」

「――うそ」


 横浜スタジアムの内部にもドット絵のような物が描かれ出したんだけど――そのサイズが・・・・。


「巨人・・・?」


 現れようとしているのは、青い巨人だった。


「20メートルはありますよ!?」


 巨人の頭上に、名前が出現する◤ヨトゥン◢。


「霜の巨人!!」


 私はその名前に、すぐさま反応した。

 北欧神話の凶悪かつ残忍で、しかも神々と互角に戦うという巨人の名前だ!

 横浜スタジアムの野球グラウンドに出現したヨトゥンが、地面に着地する。

 それだけで土砂が巻き上がり、スタジアムの電光掲示板や壁が崩れ始めた。

 ナイター用のライトも砕けた。


 コンクリートや、ガラスの欠片が上から降ってきて、叫び声が上がる。

 辺りで悲鳴が渦巻く、逃げ惑う人々。

 周囲が霜に覆われていく。


『マイマスター、アイステイル到着しました』


 見上げれば、青い蝶みたいな見た目の戦闘機。

 前進翼で、複葉機。私の愛機アイステイルだ!


「ありがとう!」


 私は急いで〖飛行〗で搭乗。

 アリスのARから通信が入ってくる。


『スウさん、地球ではバーサスフレームの武器は使えないんですよ!? どうするんですか!!』

「武器が使えなくても、手足があるよ!!」


 パンチやキックで戦える!


『で、でもスウさんは人型形態での戦いが、あまり得意ではないじゃないですか・・・』


 確かにそうだけど、超科学のロボット兵器なら、巨人くらい・・・!

 私の乗る、コックピットのダッシュボードの上に、青い服の小さな執事が現れる。


『マスター、脳波接続開始します――バイタル正常、脈拍少し高いですが、正常範囲』


 私がアイステイルと接続していると、アリスが、落下してきたコンクリートから女の子を庇うのが見えた。


「アリ・・・・!」


 アリスがコンクリートの破片をこめかみに受けて、血を流している。

 傷を治療しないと!

 私は、〖再生〗という、傷や病気を治せるスキルを持っている。でも、あれは対象の傷などに触れないといけない。

 私がアイステイルから飛び出そうとすると、ヨトゥンが迫ってきた。


『スウさん! わたしなら大丈夫です! 戦って下さい!!』

「わ、わかった。後で治すから!」

『お願いします!』


 アリスによくも・・・・。アリスにはこれ以上、傷一つ付けさせない!

 私は静かに目を閉じて、歯を合わせ「―――シッ」っと、鋭く息を吐く。


「入れ――」


 私には、VRシミュレーターの中で訓練を24000時間という膨大な時間続けたことで、1つの能力を手に入れた。

 スポーツ選手などが、極限まで集中力を高めた時に到達する領域。

 それをさらに戦いの中で研ぎ澄まし、沢山の人々と、友達の導きで、明鏡止水に至った。


「――ゾーン!」


 世界が、私に流れ込んでくる。

 世界が〝わかる〟。

 

 私はアイステイルを人型にして、跳躍。

 スタジアムから出てきたヨトゥンに殴りかかった。


 右ストレートがヨトゥンの顔に炸裂。

 だけど、13メートルの鋼の塊の質量をうけてもヨトゥンはよろけない。


 バーサスフレームの人型モードは脳波で自分の体のように動かすんだけど、自分の身体を動かす――つまり私は得意じゃない。

 ボクシングとかわからないし。


「・・・こいつ、思った以上に強い」


 にしてもヨトゥンが、でかい。

 アイステイルは、最小のバーサスフレームだから、13メートルしかない。

 20メートルだと、向こうのほうがでかい。


 思っていると、ヨトゥンの近くに斧が生まれた。

 ヨトゥンは青い刃のそれを空中でキャッチすると、こっちに斬りかかってきた!


 私は頭を庇うようにして腕をクロス。

 振り下ろされた斧はアイステイルの腕に炸裂――!


「うそ!?」


 腕が1本叩き折られた!

 こっちは、超科学で作られた銀河を渡る汎用ロボだよ!?

 あと、バーサスフレームにはシールドっていう、機体全体を覆う攻撃を防ぐ装置があるはずなんだけど、それが発動しなかった。シールドにもロック掛かるのか。

 まあ、・・・あれって発動すると、人間を弾き飛ばすくらいの威力はあるし。


『やっぱり、涼姫ちゃんには格闘技は・・・・早く来て、サンライト・ショーグン・ゼロ・カスタム!』

「ヨトゥンといえば、トールとの戦い――トールと言えば、雷神」


 私はヨトゥンにタックル。

 よし、タックルは素人でも成功率の高い攻撃らしい(友達談)――流石にタックルは躱されなかった。総合格闘技みたいな躱し方されたらどうしようかと思った。


 私はアイステイルの片腕でヨトゥンを掴んで、そのまま押し込む。

 ヨトゥンが叫んで、アイステイルを引き剥がそうとする。

 逃がすものか!


「喰らえ――!!」


 私はそのまま、電線に突っ込んだ!


『グラァァァ!!』


 電撃を受けて、ヨトゥンが絶叫を上げた。

 だけどヨトゥンは死んだりしない。


「電流が弱いか!」


 地面では、警察がヨトゥンに向かって発砲したりしてるけど、流石にまるで効いてない。

 それより避難誘導を優先してるみたい。戦いは私に任せるらしい。

 でも、あまり近寄らないでね、結構むちゃくちゃするつもりだから。

 

 横浜スタジアム周辺を見回す――ほとんど電線がない。

 確かこういう場所は、地下に電線が移ってるんだっけ。


「どこだ、地震大国なのに、なんで地下に!」


 毒づきながら、大きな道路を引き剥がす。

 波打ちながら引き剥がされるアスファルト、発砲していた警察官さんが慌てて逃げた――そうだ!


 私は昔買った、シャベルにもなる盾を取り出して地面を掘り起こす。


「あった! ――喰らえ!! たしか知り合いがこうしてた! ――せーの!!」


 警察官さんが十分離れたのを見て、ヨトゥンを抱え、バックドロップ。

 高圧配電設備に衝突した、ヨトゥン。

 短絡を起こした高圧配電設備からアーク放電がほとばしり、凄まじい電流が襲う。


 痙攣するように震えるヨトゥン。


「どうだこれなら、雷神トールの雷クラスだろう!」


 ちなみに銀河を渡ることを想定されているバーサスフレームは、こういう攻撃には強い。

 特に黒体塗料という物が塗られているせいで、熱はほぼ全部吸収する。4000度にも達するであろうアーク放電だってへっちゃらだ。とんでも超科学の黒体だから、私はバーサスフレームで、赤色超巨星に突っ込んだこともある。


 ていうか、なんか変だ。思った以上に電流が強いみたいだし、なんか白い蒸気が猛烈に漏れ出してる。


 ・・・・冷却剤?


「・・・なにこれ? まあいいか、とにかく今は!」


 さらに追い打ちと、私は横浜スタジアムの照明塔を引っこ抜いて、


「照明塔ハンマァァァ!! ――横浜の皆さん、道路に照明塔に破壊してすみません! 多分、税金が投入されます! 私も弁償しますんでぇ!!」


 私には銀河の彼方で見つけた油田があるんだ。

 謝罪と共に照明塔を振り下ろし、照明塔ハンマー改め石油王ハンマーとして、ヨトゥンに食らわせた。

 そうして辺りに誰もいないことを確認して、足からロケット噴射でも攻撃。


「化学の火はどうだ、霜の巨人!!」


挿絵(By みてみん) 

使いまわしですみません。

挿絵です、八街 アリスです。

お読み頂きありがとうございます!

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