─【五】─It will be rainning, but … <part1>
どもブラックす(´∀`)
今回からBHUのお仕事(?)が始まります(´・ω・)
一話が長いんで小分けにして投稿します
ではどうぞヽ(^∀^)/
何回転んだっていいさ 擦りむいた傷を ちゃんと見るんだ
真紅の血が輝いて「君は生きてる」と教えてる
固いアスファルトの上に 雫になって落ちて 今まで どこをどうやって 歩いてきたかを教えてる
何回迷ったっていいさ 血の跡を辿り 戻ればいいさ
目標なんて 無くていいさ 気付けば 後から付いてくる
可能性という名の道が 幾つも伸びてるせいで
散々 迷いながら どこへでも行けるんだ
大事なモンは 幾つもあった
なんか 随分 減っちゃったけど
ひとつだけ ひとつだけ その腕で ギュッと抱えて離すな
血が叫び教えてる「君が生きてる」という言葉だけは……
…………出典、BUMP OF CHICKEN「ダイヤモンド」より抜粋。
───雨が降っている…
灰色の空、群青色の海。
殺風景な港には一隻だけ古びた貨物船がある。
小さな少年は男に手を連れられ、その船に乗った。
船に挙げられた赤と青の国旗を見上げて、その男の子は問う…
「どこに行くの?おじさん。」
「海の向こうだよ。」
男はそう言って顔をうつむけた…
───雨が降っている…
暗い海から船がやって来る
廃港に入港したその貨物船は、一人の少年を降ろして再び去っていった。
「──日本、か…」呟く声が吹き抜ける海風と小雨の中へ散る。
灰色の空、群青色の海がどこまでも広がっていた………
────────
─────
──
「……おい…………おい、レイ……」
誰かの声が聞こえる…
俺を呼んでいるのか?
…俺の名前はレイじゃない。その名はとっくに捨てた。
俺の名は─────
「………─レイ、起きろってんだ!」
突然腹部に衝撃が走る。
夢の世界にたたずんでいた俺─神崎 零は無理矢理現実世界に引き戻された。
「─っ! ぐはぁっ!?」
夢の光景は歪んで一瞬で消え、見慣れた女の子の顔がおぼろげに目に浮かぶ。
が、次に目に映ったのは高速で打ち下ろされる拳だった。
─メキャッ!
「爽やかな朝にしては、ちと荒々しくないすかね、リンさんよぉ?」
打ち下ろされた鉄拳はベッドを強打した。
間一髪、レイは頭をずらし回避したが音からしてスプリングがイカれたことは間違いない。
目をこすりながら、呆れた顔を暴力少女に向ける。
「あれ…避けたのか?結構本気でやったのに♪」
案外痛かったのか、手をヒラヒラさせながら陽気な表情で言いやがる。
(…あれを被弾してたら人生最悪の目覚めだ)
レイは自分の反射神経に感謝した。あの威力は鼻血程度では済まないだろう。
「…ふゎあ…今何時だよぉ?どうせまだ7時…」
大きなあくびを噛み殺しながら俺はリンに聞いてみた。
「ふん、自分で確かめるんだな。」
にやにや笑いながらリンは近くにおいてあった目覚まし時計を放ってよこす。
ちなみに時計は壊した日の夜に買い換えた。またいつ壊すかわからないが…
「─よっと…」
器用に、飛んできた時計を掴むとのぞきこむ。
長針と短針のなす角は60°だ。
つまり…
「ちょ………10時かよ!?今日仕事か!?」
一気に覚醒したレイは壁にかかったカレンダーに急いで目を向ける。
June(6月)と書かれた月のページ、今日の日にちの欄には何も書かれていない。─今日はオフの日だ。
「なんだよ〜、オフじゃん今日…」
焦って損したようなボケ顔でレイは振り返った。
「バッカ野郎、この前の仕事の結果忘れたのかよ!」
リンは身を乗り出して怒鳴った。
──────────
───────
────
「報酬金を支払わない、ですって!?」
山中がらしくない声を上げる。
東柴輸送隊を殲滅させた、山中率いるBHUは意気揚々と依頼人の元へ向かった。
もちろんトラックに大量に積まれたメモリーカードやらCD-ROMなどの記憶媒体をかっぱらって。
レイにはあまり詳しくないが、相当な情報が詰め込まれているのは分かる。
何しろトラック一台分、CD-ROMだけでもざっと500枚。
そいつを依頼人たちの前に差し出して確認をとらせている最中にそれは起こった。
「私たちが求めるものはこれではない。よって私たちが金を払う義務はない。」
いかにもビジネスマンといった代表らしき男が、CD-ROMの一枚を指しながら言い放つ。
どうやら狙っていた情報と違うらしい。しかしその高圧的な物言いは俺たちを見下していた。
「ふざけるなよ、オッサン!言われたものを持ってきたんだ、払うもん払え!」
顔を真っ赤にしてリンが食って掛かる。見下されているのはともかく、契約違反をされるのはたまらない。
「知らないな。契約内容と違うものなのだからこれはそちらのミスだ。」
居丈高に言うそいつにリンはブチ切れそうになったが、村仲に止められた。
「…それがそっちの言い分なら…しょうがない。しかし我々が奪取したトラックと記憶媒体は返してもらうぞ?…」
タバコをくわえながら椅子に座っていた村仲が反論する。
これは正論のはずだ。しかし、次に帰ってきたのは驚愕の言葉だった。
「それについてはわが社が引き取らせていただく。あなた方がこの契約に失敗した違約金としてな?」
─グシャ
村仲は燻らせていたタバコを潰した。こめかみに青筋が浮き出ている。それでも掴みかからないのはこの人が紳士だからだ。
にやにや笑いながらそのビジネスマン野郎は脚を組んだ。
後ろに座るそいつの部下たちもくすくす笑っていた。
(──コイツ、俺たちをバカにしてるのか!?)
露骨に顔をしかめながらレイは懐に手を伸ばす。
隣のリンも爆発寸前だ。
しかし火蓋を切ったのはその三人の誰でもなかった。
──ブチィッ!
何かがキレる音がした。
三人の後ろからだ。
後ろにいるのは…
今まさに得物を引き抜かんとしていたレイとリンは硬直した。この音は何度も聞いたことがある。
リンなど真っ赤だった顔が信号機並みに青くなっていた。
俺たちは忘れていた。
BHUで最も危険な人物を。
俺たちはゆっくり、ゆっくり振り返った。
((あ……悪魔……))
俺たちのボス、山中は満面の笑みを浮かべていた。それはもうにっこりと。
しかし俺たちは知っている。
その目が全く笑ってないことを。
「…あら、そういう考えをなさるのね?」
静かに、しかし何かとげを含んだ言葉が発せられる。
「もちろん、わが社の利益が第一です。」
ビジネス野郎は何を勘違いしているのかさらに煽った。コイツには目の前で起きていることに気づいてないのか…
「…そう。残念、ふふっ…とっても残念よ?」
くすくす笑う山中。
「…………?」
やっとビジネス野郎は異変に気づいたらしい。でももう遅かった。
──ジャキッ!
「喧嘩を売るところを間違えたみたいね……[生きて帰れると思うな]
口調が変わった山中の手には愛用MINIMI軽機関銃が、いつのまにか握られていた。
「なっ、何を…」
──ダダダダダダッ!
血溜まりに薬莢が転がった…
─────────
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────
「あ〜、思い出したぁ。てか思い出したくなかったぜ。」
あのあとはかなり酷かった。依頼人たちを挽き肉にした山中の機嫌は最悪。
リンもかんしゃくを引き起こしていたので、村仲とレイの男二人で女性衆を引きずって帰ったのだ。
トラックに満載した情報の山も仕方なく持ち帰った。レイやリンにとってはごみの山に等しいが、これをどうにか金に変えないと、仕事の報酬は0だ。
つまりBHUに雇われているレイにとっては給金0を意味する。
「CDとかメモリとかなんやらは俺の能力外だからな〜。帰ってねちまったけど、あのガラクタどうなったんさ?」
ベットから起き上がり、レイは冷蔵庫を漁る。
しかし空っぽに近い冷蔵庫からは干からびたサンドイッチしか見つからなかった。
(まずい…まずいぜ…餓死する…)
財布の中には小銭が数枚、とても生活出来ない。
レイはこの性格なので貯金など全くしてなかった。
簡単に言えば、給金がなければこの一週間でレイは、サンドイッチ同様干物と化すだろう。
そんなジ・エンド真っ平ごめんだ。
「残念だけどあたしもあの小難しいのは苦手なんだ。ボスと村仲のおっさんが深夜までずっと調べてた。よく知らないけど確かに“平穏時代”関係じゃないらしいな。」
考えるだけでも頭が痛いと言わんばかりに頭を押さえながらリンは言った。
レイはてきとー過ぎて情報系に適していないと自覚しているのだが
リンはというと…
(つまるところ頭がわりぃんだよな)
これが確実な理由だろう。
─ブンッ、バキッ!
「レイ、お前今すげぇ失礼なこと思ったろ?」
リンのすらりとした脚が飛んできた。
ひょいと避けたレイだったが、リンの正確な回し蹴りは最後の食料─かぴかぴサンドイッチを窓の外へ蹴り飛ばした。
「ちょ…おまっ…最後の食料だぞ!」
いつから待機していたのか大きなカラスがトンビのごとく、空中に飛び出たサンドイッチを引っ付かんで飛び去った。
「最後のくいものぉ…」
「フンッ、いい気味だ」
呆然とするレイを尻目にリンは気が清々したこのようだった。
「はぁ……で、ボスはどうしたんだって? あとヘビースモーカーのオッサンは?」
無論村仲の事だ。1日3箱吸うのだからかなりの重症。あんな大量のタバコを買う金はどこから出るのか。
実直な性格のあの人の事だから、山ほど貯金があるに違いないと割り切った。
「オッサンはハマーの整備。ボスはあの邪魔なガラクタ共を詳しく調べに………ヤツのところへ行った。朝からね。」
リンは腕を組んでベットの端に腰掛けた。
「ヤツ…………ねぇ…」
BHUの情報系担当、声しか聞いたことのないあいつを思い浮かべる。
「よし、ヤツのとこへいこうかぁ。俺の未来がかかってるんだ。」
真面目なのかバカなのかわからない理由だが、動かないことにはしょうがない。
「じゃあ事務所で待ってる。二度寝しないでちゃんと来いよ?」
いつまでもパジャマの青年にリンは釘を刺すと、リンは部屋を出ていった。
「何で二度寝するってわかるんだよ?」
この男は絶対寝るつもりだったに違いない。
またあくびをしながら、ハンガーに掛けた愛用シャツを手に取る。
(──しかしまたあの夢を見るとはねぇ…)
無駄に眠い理由はわかっていた。
夜更かししていたからではない。
リンに殺人まがいの方法で起こされたからでもない。
…あの夢だ。
あの夢を見るときは決まって寝た気がしない。
(…とっくに忘れたつもりだったんだけどね〜)
こすっても消えないラクガキの様に、頭に染み付いて消えない夢。
頭を掻きながら、レイは忘れようと努めた。
…決して忘れられない過去なのに。