第9話 怪しい羽根
「とは言っても、後で編集するから撮影だけしてくれてればいいから!」
「後で……? 同接がないのに、上鳴氏は戦えるんですかな……!?」
「サンダーマスクだ! そう呼べ!」
「ひいい、恥ずかしい……」
「なんで俺以外が恥ずかしがってるんだよ!? とにかく見てて!」
モンスターの攻撃を、音ゲーのバーに見立てて……。
『ウボァーッ!』
「そいっ!」
カァン!
手にした椅子の足で、モンスターの腕を払う。
視界に浮かび上がる、Good!の文字。
まあまあ。
ここから相手の動きを読み切って、段々評価を上げていく。
あたしが睨んだ感じだと、この能力はより高い評価で相手の攻撃を捌くか、相手に攻撃を当てると少ないコンボ数で進化が発生する。
多分、明は当て勘が鍛えられていなかったのだ。
だから力を発揮していなかったんだと思う。
『ウボァッ!!』
「そいっ!」
カァン!
『ウボァッ! ウボァッ! ウボァーッ!!』
「よっ! ほっ! はっ!」
カン!カン!カァン!
『!?』
連続で攻撃を弾かれて、モンスターが戸惑った。
それに対してあたしは手応えを感じる!
Exellent! Exellent! Perfect!
視界に見える評価の表示が、ゴールドに、そして虹色に輝く。
『パーフェクト達成。条件を満たしました』
手にしていた椅子の足が、輝きを増してその形を変える。
それは光り輝く短剣だ。
レアリティはアンコモン。
『ええい、いつまでも守ってばかりでいられると思うなあ!!』
グワーッと襲いかかるモンスター。
いきなり喋りが流暢になったじゃん!!
霧のような姿なので、あたしを丸ごと覆い尽くしてしまいそうだ。
だけど、あたしにはアンコモンの短剣がある。
「おらーっ!! 放課後プレデターズのラーテル花咲里を舐めんなーッ!!」
どれだけ恐ろしい相手だろうが、理不尽と感じれば食って掛かるあたしだぞ!!
モンスターくらいがなんぼのもんじゃーっ!!
霧状のモンスターを短剣で切り払う!
そうしたら、そこに短剣が当たる複数の判定があることに気付いた。
一回切り払って、二回切り払って……。
『まだまぁだ! 我が体はぁ……無限に再生を繰り返しぃ……一欠片でも残れば羽根の力で元に戻るぅ!!』
モンスターが通路いっぱいに大きく広がった。
あたしを飲み込むつもりだ!
「うおおーっ! 上鳴氏頑張ってくだされーっ! あなたがやられたら私が死にます!!」
「そんな危険なところに連れてくるんじゃないわよ!? ってか、もう見切ったから問題なし!!」
三度目の短剣。
複数ヒットのタイミングを完璧に覚えたあたしは、リズミカルにこれを振り切る。
カンッ! カカンッ! カカカカカカカカーンッ! カッ! カッ! カカカンッ!
こりゃあ歯ごたえがあるわ!
だけど、その全てでGood以上、後半はエクセレントを達成!
『高難易度コンボを達成。条件を満たしました』
あたしの手にした短剣のグレードが上がる。
アンコモンから、レアへ。
それは光り輝く小剣になる。
なんていうか……すごくインドっぽい剣だ!
『いつまでもその場しのぎを……』
なんか言っているモンスターだけど。
「ここからはこっちの番だぜ! おらあーっ!!」
あたしは自ら、あいつの懐に飛び込んだ。
突き出した剣は、モンスターの霧に触れるや否や、ジュッ!とその部分を焼き焦がして破壊する。
『!? ウグワアアアアアアッ!? なんだ!? 何が起こっている!?』
混乱しながらも攻撃を加えてくるモンスターを、剣で弾く!
弾くと相手の部位が焼かれ、破壊される!
『ウグワーッ!? そんなバカな! さっきまでこちらに……なんの痛みも与えてこなかったのに……!!』
「そりゃそうよ。レアリティ上がったんだから! そして! 攻撃の評価でも! コンボが発生するから!」
及び腰になったモンスターを追い詰めていく。
オカ研部室前から、廊下の突き当りまで。
『ウオオオオオーッ!? やめて! やめてーっ! やめろぉぉぉぉぉ!! それは、それは効くからぁーっ!?』
『条件を満たしました』
あたしの視界に一瞬だけ、SRの表記が出てきたと思ったら……。
ぐんと伸びた光り輝く剣が、モンスターを両断していた。
『ウグワワーッ!! 再生っできっ……!!』
黒い霧に浮かぶ顔面は苦悶の表情になった後、空気に溶け込むように消えてしまった。
「か、勝ち申した!!」
後ろで恵美奈が変な勝ちどきをあげている。
なんなんだその言葉遣い!
「バッチリ撮影できてる? できてなかったらブチ切れる……!」
「バッチリですぞー。私、こういう証拠映像を残すのは得意ですからな」
「本当にー? どれどれ……」
振り返ったあたし。
その顔の横を、ひらりと一枚の羽根が通り過ぎていった。
なんだこれ?
光る鳥の羽?
外から入ってきたんだろうか。
唯一外に面している、廊下の突き当りは施錠されている。
何かが入ってくる隙間なんかない。
だったらこれはなんだ……?
あたしが疑問を感じていると、自然に手が持ち上がった。
まだSRのままの光り輝く剣が羽根に触れる。
その瞬間、『不遜ッ……神罰……ッ』と小さな声が聞こえ……羽根は焼き尽くされて消えてしまった。
そして、SRだった剣がみるみる光を失い、椅子の足に戻る。
「なんだったんだ……?」
「上鳴氏、上鳴氏~!! 見て下さい。私のこの撮影技術をーっ。あ、名前とか普通に出しちゃってますが」
「後で編集して、音楽被せておくから問題ない!」
「上鳴氏、いつの間にそのような編集技術を……!? いつも教室の隅で静かにしているだけの男子だと思っていましたが、まるで別人になったかのような……」
「今日から本気出してるんだよ!」
あたしはそう告げておいた。
能力の検証と、実践はできた。
同接が無くても戦える。
これ、とんでもないことだぞ。
普通の人間にはできないことが、明の体ならできる。
あいつ……あたしに何を隠しているんだ……?
法術とか法力とかキャラ付けだと思ってたけど、こんなのガチじゃん!
「ま、とりあえずは社長に編集を任せてっと……」
「うんうん、これでオカルト研究会は再始動。部員も一名ゲットですな」
ぎゅっとあたしの手が掴まれた。
「……おい」
「何か?」
「なんで俺の手を掴んでるの?」
「そりゃあもう、開かずのオカ研部室を解放した功労者ですから。名誉オカ研部員としてお迎えする準備は万端ですぞ」
「おいやめろ、俺はそんなの入るつもりは……」
「いやいやいや遠慮なさらず! はっはっは、職員室へ報告に行きましょうぞー」
「あっ、腕を抱きしめながら全身で引っ張って……! 当たってる当たってる! てか埋もれてる! くそっ、敵! 敵ぃーっ! だけど明の体の力が抜ける~っ!! なんだこの体ーっ!!」
あたしは職員室に引っ張られていってしまうのだった。
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