第58話 釣り配信へのお誘い
ガードマスク二世さんから、またお誘いが来た。
明が魔法少女アクアとコラボして、退魔師支部の謎に迫ってるちょうどその頃なのだ。
なんか向こうはシリアスなのに、あたしがほのぼの日常的な感じになってない?
いや、サンダーマスクの登録者数はまだまだ伸びる余地がある。
ここは様々な配信をして、伸ばしていくべき時なのだ。
だって同接は力なのだから。
「うおーい、上鳴くーん」
「あっ、どうもどうも。今回もなんかお誘いいただいちゃって……ありがとうございます! 助かります」
二世さんの車が到着したのだった。
アースクルーザーとかいう車で、ひたすら大きい。
黒くてよく磨かれていて、車内も広そうだ。
あたしは助手席に乗り込んだ。
「前回の配信、凄く評判でさ。切り抜き動画もちょいちょい作られたからね」
「あー、作られてましたねえ。コメントにサンダー女体化しろとか書かれてて、ふざけんなって思いました」
「わっはっは! リスナーなんか身勝手なもんだよ。それを楽しませるのが俺等の仕事だからさ。でも、大変だけど楽しいこともあるわけだ。それが今回みたいな配信なんだけどね」
車が走り出す。
途中、他の配信者の人も拾った。
クジョーさんという細身の男性と、うぉっちさんというベテランっぽい男性。
男に囲まれてしまっている!
あたしは元アイドルなのに!
だが、よく考えるとこの姿は明のもので、肉体的には完全に男なので何の問題もないのだった……。
「皆さん、よろしくお願いします! サンダーです!」
「よろしくー! かざりちゃんと同じ事務所なんだって? まだ新人なんだろ? 今回の配信でたくさんの配信者と絡んで、名前を覚えていってもらおうな!」
「ええ。僕もあなたに注目してますよ。ああ、僕は冒険配信者うぉっちちゃんねるの管理人なんですが、サンダーマスクさんのこともウォッチしてますから」
「あ、これはどうも……!!」
あたし、知られてるー!
ちょっと嬉しい。
こうして男たち……一人魂は女だけど……四人でやって来たのは、渓流。
ここが釣り場になっていて、管理人のおじさんに見てもらいながら四人で釣り配信というわけ。
「足を滑らせて落ちないようにね。5月とは言っても、水はまだ冷たい。冒険配信者さんが強くても、冷たい水で体を冷やしたら危ないぞ」
「はーい」
男たち四人でいいお返事をする。
うーん、溢れ出る遠足感!
釣り竿は、二世さんが貸してくれた。
「なんか何から何まですみません!」
※『配信始まったと思ったら、サンダーマスクが男たちとイチャイチャしてるぞ!』『いいぞー』『なんだかんだで、男どもでキャッキャしながら遊んでる配信も楽しいんだよな』『俺も遊びたい』
「配信始まってるじゃん! あー、Aフォンが動いてる。勝手に配信開始したか……?」
「よくあるよくある。民生Aフォンでもね、使い込んでいくと勝手に動作するようになったりはよくあるぞ」
「それって壊れたんじゃないんですか!?」
「わはは、そうかも知れないな!」
そんな二世さんとのやり取りも、リスナーには評判がいい。
男同士のやり取りは受ける……。
これは目から鱗だったわね……。
さて、釣りを始める……。
絵面的には、男たちで並んで釣り糸を垂らすだけなんだけど……。
「ここで釣れるまで、ひたすら雑談することになる」
「うわーっ、地味! あまりにも絵面が地味!! こんなんでいいんですか配信って!」
「いいんだよ。俺たちだって、いつもダンジョン配信ばかりしてたらマンネリ化しちゃうだろ? 危険に挑み続けるというのも現実的じゃない。俺等は職業配信者なんだ。ネタ切れを起こさず、体を大切にしながら、どれだけ配信を続けられるかが肝ってことだな」
「な……なるほど……。勉強になります」
「いいんだよ、君は若いからどんどん挑戦しても! それは今しかできないからな」
二世さんがいいことを言っていたら、クジョーさんが笑いながらツッコミを入れてきた。
「こんなおっさん臭いこと言ってるけど、こいつもやっと三十になったところだからな?」
「うるせー! 三十になると体の無理が効かなくなるんだって! お前はメインが屋内でゲーム配信だろうがよ!」
「わはは、たまにダンジョン行ってるからな!」
「それを言ったら、僕こそみんなのまとめ動画で食べてる身だからねえ。いつもお世話になってるよ」
「いやいや、うぉっちさんはまとめ界の重鎮でしょー?」
「あんま謙虚だと、若手がやりづらいですって」
「そう?」
うーん、愉快なおじさんたちだ。
※『いつも配信で荒ぶるサンダーが、凪の海のような落ち着いた表情をしている』『今回は後輩枠でのんびりしてられるもんなあ……』『こういう配信もいい』『つまんねーんだけど。戦わねーの?』『魚との戦いだぞ』『コメントが若々しい』
「若いリスナーには退屈かも知れない! 悪い! だが、俺は釣り初挑戦なんだ。これもまた戦い……おーっ!?」
「サンダー、引いてる引いてる!」
「こりゃでかいぞ!」
おじさんたちがわあわあと声を掛けてくる。
あたしは教えられた通り、踏ん張りながらリールを回し……。
「ふんぬらああああ!!」
すぱーんと水面から、初めて魚を釣り上げた!
釣れたーっ!!
※『うおおおおお』『おめでとおおおお』『なかなかデカい』『初釣りでフィッシュとは持ってるねー』
「ありがとう! いやあ……釣り、おもしれー!」
ガイドのおじさんが網で魚をゲット。
なんかハマってしまいそうなあたしなのだった。
いいのか、あたしがこんな日常的な配信してて……!!
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