第57話 プライベートで会ってるわけではない?
「えっ!? 僕の特集が組まれてた!?」
『ああ。気をつけたほうがいい。業界は完全にかざりんに注目してる……。いい意味で』
「いい意味で……!?」
『それはそうと、今日あたりどうだろう。この間のまとめをやらないか? 今後、ともにこういう件に関わっていくことになると思うんだ。どうだろう? いや、無理ならいいんだ。かざりんは忙しいから』
「いいですよー。僕も詳しいお話を聞きたかったので。じゃあどこにしますか?」
『い、いいのか!? じゃ、じゃあ……』
こうして……。
本日、僕はアクアさんとお茶をすることになった。
場所は、ちょっと騒がしいハンバーガーショップ。
「意外。もっと人気のないところでやるんだと思ってました」
「ああ、それはな。静かだと、むしろ声が聞こえてしまうだろ。ここなら学生も多く集まるし、いつも賑やかだ。ちょっとした会話なんか紛れて消えてしまう。それと」
眼の前には、すらりと長身でメガネの男の子。
学校帰りらしくて、制服を着ている。
僕も制服なんだけどね。
「かざりんは一人だと目立つだろ……。学生が多い環境の方が自然だと思って」
「そうなんだ! 気を遣ってくれてありがとうー」
アクアさんはいい人だなあ。
ぶっきらぼうだけど、本当に親切な人ってこうなんだなあとしみじみ思う。
下心?
彼にそんなものはないでしょ。だって僕は男ですからね……。
「あれ? アクアさん、もしかしてその制服……僕が通ってた学校の」
「ああ、そうだ。奇しくも同じ学校だったらしい。いや、今は違うが! ちなみに姉はかざりんの学校に通いたがっていたが、素行がな……」
「あー! 花咲里さんとコラボしてたあの赤い女の子! 素行……?」
「中学の時にダンジョン相手に大暴れしてな。名を轟かせている。流石にこれはご遠慮くださいと学園の方から」
「ああ~。……あれ? でも、僕は男なのにそんな特別な女学園に通ってていいの……?」
「かざりんほどあの学園にふさわしい精神をした女子はいない!」
うわーっ、熱弁してくるー!
「それと……俺がアクアというのは変身した後の名前なんだ。できれば、その、湊と呼んで欲しい」
「分かりました! 湊くん」
「ああ~」
あっ、湊くんが溶けた!
本題は~!?
仕方ないので、放心状態の彼が復活するまで、僕はハンバーガーを食べることにした。
ケチャップとチーズとピクルスがいい感じ。
お肉は中まで火が通っていて、塩味のみなのが素材の味を引き立てている。
美味しい。
ポテトも美味しい。
細くて、塩味が強い。
これをコーラと合わせると本当に美味しい。
一通り食べ終わったところで、湊くんがこっちの世界に戻ってきた。
「ごちそうさまでした。湊くん、大丈夫? 疲れてるんじゃない?」
「い、いや。推しに名前で呼ばれるとこれほどの破壊力があるとは思わなかった……。よし、じゃあここから説明していく。園宮さんと俺は長い付き合いなんだが……君のことを園宮さんに教えて、二人で君の配信にハマってな……」
「話が逸れてるよ! っていうかこの間は二人とも僕の配信のリスナーだったってこと!?」
世界が狭すぎる~!
「わ、悪い! かざりんといると、俺もいつも以上に饒舌になってしまうんだ。それで、園宮さんがすぐにあの後、俺達が出てきた場所について分析してくれた。電波妨害がされていたようだが、まず間違いなく武蔵五日市の山奥であることが判明した」
「武蔵五日市というと……東京だったの!?」
敵は、東京に潜んでいたんだー!
これは衝撃。
「迷宮省と契約しているスタッフが即座に向かったが、もうもぬけの殻だったそうだ。撤退が早い。敵はやりなれてる」
「そっか……。霊合教だって言われてるけど、正体も不明だし……。個人的には退魔師が利用されてたっていうのがショックだなあ……。まあ、今の僕は法術も何にも使えないんだけど」
うーんと考え込んでいたら、湊くんが無言でじーっと僕を見ているのだ。
「なあに?」
「い、いや、なんでもない。なんでもないぞ。それじゃあ、また状況が分かったら連絡する! じゃあな!」
「うん、またね。別に用が無くてもこうやって一緒にご飯食べるくらいはいいよ」
「本当か!? ま、マジかーっ。よしっ……よしっ……!!」
『良かったですねえマスター。んもー、青春しちゃってー』
「マリンナ、茶化さないでくれ! こ、こっちは人生の一大事なんだ」
『うふふ、マスターの成長が分かって、マリンナは嬉しいですよー』
湊くんがカバンと会話してる。
あの中に、この間の青い本が入っているのかな?
「よしっ。かざりん、家まで送る。何かあったら大変だからな。送るからなっ」
「う、うん。よろしくね?」
なんだか湊くんが燃えている!!
なんだなんだ!
家に帰るまでの間、色々話しかけられた。
「好きな食べ物はなんなんだ?」
「前は無かったけど、今は……お肉!!」
「分かった! 肉が美味しい店調べておく!」
「ほんと!? 嬉しいー!」
「休みは何をしてるんだ?」
「お休み……? 配信の勉強と、あとは鍛錬かなあ。癖になってて、体を鍛えてないと不安になるんだよね」
「そうか! あ、あの、俺の家に存分に訓練できる別世界に行ける部屋があるんだけど」
「?!?!?!?」
「い、いや、男の家に誘うのはダメだよな。いきなりだもんな……」
『青春ですねえー』
やり取りを聞いているのか、カバンの中にある本、マリンナさんがとても嬉しそうなのだった。
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